今日は梯子だっ!とバタバタと上野の森から都美へ移動。
途中通りかかった西洋美術館の『ムンク展』にも心ひかれつつ。
ポカポカと温かく、上野公園はお散歩日和でもありました。
とっても濃いシャガール展のあとは、ヨーロッパとアメリカの近代美術を
ザッと流れを追いながら観賞。
巨匠の作品がいっぱい。贅沢すぎる展示です。
しかし、みんなは知らなかった。
巨匠が屋台でたこ焼きを焼いていたことを。
ピカソです。
『自画像』(1906年)です。
もうわたしたちには、彼がテキ屋のあんちゃんにしか見えません。
たこ焼きでなければ金魚すくいでもいいです。
罰当たりでスミマセン。
(この頃のピカソはアフリカンアートに影響を受けていて、
自分を黒人風に描いたのだそうですが)
お口直しに、ピカソのキュビズム時代の絵を。
『三人の音楽師』(1921年)
どんどんスタイルを変え、現状に満足することなく、生涯自分の芸術世界に
挑戦し続けていたピカソですが、その中でも、キュビズムはピカソらしさを
いちばん表していると言えそうです。
わたしは初期の具象画も好きなんですが(バラ色の時代など)キュビズムは
おしゃれですよね。
赤が効いてるなぁ。今回は本当に『色』の気になる展覧会でした。
『睡蓮、日本の橋』モネ(1918-26年)
モネと言えば睡蓮。モネと言えば印象派。
しかしこの絵はどう目をこらしても、睡蓮がどこにあるのかよくわからず。
印象派を代表するモネとルノワール。ルノワールは晩年、印象派らしさから
脱却したことを、以前ブリヂストン美術館で知りましたが、モネもやはり
晩年はこのように抽象絵画を思わせる画風へと移行して行ったのだそう。
しかしモネの色は本当にキレイ。
世の中の美しさをきっと彼は画布にとどめずにはおられなかったのでしょうね。
『オーギュスティーヌ・ルーラン夫人と乳児マルセルの肖像』(ゴッホ)
(1888または1889年)
そして色が美しいと言えば、ゴッホ。黄色と赤とグリーンと・・・・
鮮やかな色ばかりで構成されてもうるさくないのはなぜ?
暗い中にアクセント的に色を使う絵の多い中で、いさぎよいほどに鮮やか。
そして、まだ展示が半分残っているにもかかわらず、残り時間があと20分。
あせって、アメリカのアートはとばしとばし見てしまいましたが
オキーフとワイエスだけは、じっくりまったりと観賞。
最後の↓教授の解説にもあるけれど、この展示は最後のワイエス以外は全部油彩。しかしそんな中ワイエスのテンペラってのは相当イカしてます。
中世の画法でありながらアメリカの現代美術のワイエスの得意とする画法。油彩ほど重くなく、水彩ほど軽くなく・・・・
ワイエスの作品でこんなに人がたくさん描かれているのを見たのは初めてでした。(画像がないのが残念)
フィラデルフィア美術館展
http://www.phila2007.jp/
◆はじめに
ペンシルベニア州南東部に位置するフィラデルフィアは、アメリカが、ヨーロッパの植民地から独立する際に、もっとも重要な役割を果たした都市です。1776年7月4日、フィラデルフィアの州議事堂において、独立宣言が採択されました。1787年には、この地で憲法が制定され、現在に至るアメリカ合衆国が誕生します。
1876年、独立100周年を記念して、アメリカ初となる万国博覧会が開催されました。
美術展会場として使われたメモリアル・ホールは、博覧会終了後も、美術館として公開されることとなり、フィラデルフィア美術館の130年を超える歴史が始まります。
アメリカの未曾有の繁栄を享受し、先見の明をもって近現代美術の収集に情熱を注いだ多くの個人コレクターの寄贈により、豊かな美術コレクションの礎が築かれました。現在では、中世、ルネサンスから、現代に至る25万点の充実したコレクションを誇るアメリカ屈指の美術館として知られています。なかでも、ヨーロッパとアメリカの近現代絵画は、第一級のコレクションとして世界中の美術ファンを魅了してやみません。
本展では、19世紀のコロー、クールベにはじまり、印象派を代表するモネ、ルノワール、ゴッホ、セザンヌを経て、20世紀のピカソ、カンディンスキー、マティス、デュシャン、シャガール、ミロ、マグリットにいたるヨーロッパ絵画の巨匠たち、さらにホーマー、オキーフ、ワイエスなどのアメリカ人画家を加えた47作家の選りすぐりの名作77点を一堂に展示、最も多彩でダイナミックな展開をみせた19世紀後半から、20世紀の西洋美術史の流れをたどります。
アメリカ独立の息吹を伝える古都、フィラデルフィア。
この珠玉のコレクションは、アメリカの富と繁栄の象徴であると同時に、そこで育まれた美の遺産の豊かさと奥深さを雄弁に物語っています。
今回、京都と東京におきまして、「フィラデルフィア美術館展」を開催できますことは主催者として望外の喜びです。膨大な作品群から精選された西洋絵画の巨匠たちの名作の数々は、日本の美術ファンの心を捉え、魅了することと確信しています。
◆見どころ
「フィラデルフィア美術館展」は、まるで美術史の教科書さながらに、近代西洋絵画をまとめてわかりやすく理解できる格好の展覧会である。
サロン絵画から印象派への変化、そしてアメリカで大衆文化を反映して、独自の発展を遂げたモダンアートまでの近代西洋美術の流れを、美術史上重要な47作家の作品で網羅している。美術を教える人、学ぶ人にとってまさに必見の内容といえる。フィラデルフィア美術館には、よくぞここまで重要作品を気前よく出品してくれたと感謝したい。
本展は、油彩72点(うちヨーロッパ絵画57点、アメリカ絵画15点)に加え、彫刻が5点の計77点で構成される。コロー、クールベ、ブーダンに始まり、マネ、ドガ、ピサロ、モネ、ゴーガン、ルノワール、ゴッホ、セザンヌといった、日本人がこよなく愛する印象派の傑作がずらりと並ぶのに加え、ピカソ、マティス、レジェ、シャガール、ミロ、デュシャンなど、きら星のごとき20世紀の巨匠の名作が惜しげもなく出品されている。
もちろん、誰もが知っている傑作が数多く展示されるが、とくに監修者として、お勧めの作品はルノワールの《大きな浴女》(1905)だ。豊かで美しい女性を数多く描き「女性の画家」とも呼ばれるルノワールの女性像のなかでも、ベストテンに入る傑作であり、アメリカ国外になかなか出ないことで知られている。
それが日本で初公開されるので、この機会にぜひご覧いただきたい。
また本展ではルノワールが計4点も出品される。一つの美術館から、ルノワールの名作がこのようにまとめて出品されることは非常にまれである。
マティスの《青いドレスの女》(1937)は、数年前に国立西洋美術館で開催された「マティス展」にも出品がかなわなかったものだ。画家が得意とした静物と女性像という二大テーマの傑作3点が展示される。
いずれも色遣いが開花した1920年以降の作品で、マティス独特の色彩を堪能できる。
ピカソは彫刻を含め5点出品されるが、なかでも、彼がバリエーションとして取り組んだ平面的キュビスムの最高傑作《三人の音楽師》(1921)と、《自画像》(1906)をぜひ見てもらいたい。
この自画像はピカソ前期の代表作《アヴィニヨンの娘たち》の直前に描かれたもので、当時アフリカ民俗芸術に触発されたピカソが、自身を黒人になぞらえて表現しており、影響を受けた対象と自己を同一視するといったピカソのアイデンティティが見て取れる。
アメリカ絵画のなかでは、とくに女性のシュルレアリストであるドロテア・タニングに注目したい。1910年にアメリカに生まれ、ヨーロッパで成功を収めたタニングは、ジェンダー研究においても重要な人物で、代表作《誕生日》(1942)は日本初公開となる。
最後に、今回出品される平面作品72点すべてが油彩(1点のみテンペラ)であることに言及しておきたい。
近年の企画展でこれだけまとまった数の油彩、しかも傑作ばかりが揃う展覧会はまずないだろう。油絵を堪能したい向きには久々に満足できる展覧会となること請け合いである。
本展覧会に、ぜひご期待いただきたい。
井出洋一郎(本展監修者、東京純心女子大学教授)