2007年12月22日 〜 2008年03月26日
入場料 一般 1200円、大学・高校生 700円、中学生 400円。
障害者手帳をお持ちの方と介護者(1 名)無料。毎週土曜日は中学・高校生無料。
アートスペースの開館時間 10:00から18:00まで
企画展開催中の金曜日 20:00まで
休館日: 木曜日(1月3日、3月20日は開館)、12月29日、1月1日、3月21日
会期あと3日です!横浜美術館へ急げっ!
公式サイト http://www.jiu.ac.jp/yma/goth/
ゴスと言えばゴシック。
そしてわたしがゴシックという言葉に持っていたのと、もともとのゴシックという言葉の持つイメージが、真逆だった事に驚く。
ゴシックというのは、重厚で安定感のある、繊細な手仕事を連想させるもの、だと思っていた。
しかし本展の解説によればゴスとはこういったものなのだ。(Wikipediaより)
原意は「ゴート人の」を意味する言葉である。
ルネサンス期の15-16世紀に、イタリアの美術家アントニオ・フィラレーテやジョルジョ・ヴァザーリらが、中世時代の美術を粗野で野蛮なものとみなして、「ドイツ風の」あるいは「ゴート風の」と呼んだことに由来する蔑称である(ゴート人が実際に用いていた美術様式という訳ではない)。中世の教会建築、絵画などの様式を示す概念になっていった。
ルネサンス期以降、ヨーロッパでは古代ギリシア・ローマの美や文化が理想とされ、暗黒時代とされた中世の文化には低い評価が与えられてきた。
ゴシックが再評価される契機となったのは、18世紀末以降になって中世風(ゴシック風)の建物を舞台にした幻想的な時代小説(ゴシック小説)が出版されるなど、人々の間に中世趣味が広がってからであった。
19世紀になってロココ様式や新古典主義に対する反動から、中世の時代へ関心が向かい、建築を中心にゴシック様式を回顧的に用いるゴシック・リヴァイヴァルが生まれた。イギリスの国会議事堂はその代表的な建物であり、一般の邸宅もわざわざ中世風の様式を取り入れ、建てる者もあった。
ゴシック様式=中世のヨーロッパでキリスト教とともに栄えた美術の様式。
12世紀半ばから15世紀末にかけて建設された教会の建築様式。さらにはその当時の絵画や書体(ゴシック体)なども示す。
ゴシック建築(Gothic Architecture)=12世紀後半から花開いたフランスを発祥とする建築様式。最も初期の建築は、パリ近くのサン=ドニ(聖ドニ)大修道院教会堂(Basilique de Saint-Denis)の一部に現存する。
イギリス、北部および中部イタリア、ドイツのライン川流域にわたる広範囲に
伝播した。
ルネサンス以降、ゴシック建築は顧みられなくなっていたが(この時期をゴシック・サヴァイヴァルと呼ぶ)、その伝統は生き続け、18世紀になると主として構造力学的観点から、合理的な構造であるとする再評価が始まった。
18世紀から19世紀のゴシック・リヴァイヴァルの際には、ゲーテ、フランソワ=ルネ・ド・シャトーブリアン、フリードリヒ・シュレーゲルらによって、内部空間はヨーロッパの黒い森のイメージに例えられて賞賛され、ドイツ、フランス、イギリスでそれぞれが自らの民族的様式とする主張が挙がるなどした。
その後再評価される事とはなったものの、もともとはルネッサンス期に文化の中心にあったイタリア人が、中世の文化とドイツ人(ゴート人)の両方を見下して言い出した言葉だったのだ。「粗野」「野蛮」とは、予想とは正反対のイメージではないか。
今回、今の若者文化におけるゴスの原点は、この「粗野」「野蛮」でもなく、ましてや中世懐古趣味とも違う。色々賛否両論ある展示ではあったようだけど、わたしとしてはおもしろく見られた。図録の写真がもっと大きかったら欲しかったなぁ。
リッキー・スワロー(オーストラリア)木彫・ブロンズ彫刻・ドローイング
Dr.ラクラ(メキシコ)グラフィティ風の絵画・古写真や絵葉書を素材にしたドローイング・昆虫のコラージュによる肖像
束芋(日本)大型の映像インスタレーション
吉永マサユキ(日本)「ゴス」「ゴスロリ」と呼ばれる若者を追った写真
ピュ〜ぴる(日本)ポートレートと立体作品
イングリッド・ムワンギ・ロバート・ヒュッター(ケニヤ/ドイツ)映像インスタレーション
今回の展示は上記6人のグループ展だったのだが、それぞれに違った切り口でゴスを論じていて、なかなか楽しめた。
リッキー・スワローの木彫の寝袋は、どう見ても布にしか見えず驚愕。
ラクラのコラージュは美女と骸骨などの組み合わせで、いかにもゴス好きが好みそうで、おもしろかったし、なんと言っても絵画が、ステレオタイプの日本の漫画風の構成で、彼女(?)が日本人でないのが信じられないほど。
昆虫のはちょっとグロテスクだったけど、黄色いドレスのポスターの女性や、浮世絵や春画の肌に一面に描かれた入れ墨風のイラストはかっこ良かった!
束芋さんのは、180°ぐるっとまわりを取り囲んだスクリーンに映し出される手の動きが何とも言えず気持ち悪くて、でも目が離せないのだった。
吉永マサユキさんの写真は、ゴスロリ少女たちの生態がわかって興味深かった。このファッションにしてこの部屋あり、このファッションにしてこの友達あり。
もちろん、ロリロリなかわいいのばっかじゃなくて、病的なゴスもいっぱい。舌が蛇みたいになっちゃってる人とか、いやもう、恐れ入りましたが。
ピュ〜ぴるさんのは、自身が男から女に変わって行くさまを写真に残したもの。二年間もお疲れさまでしたという感じ。写真の取り方は色々面白かった。
ムワンギ&ヒュッターさんのは二つのインスタレーションで、片方は人が転がっていて、前方で赤ちゃんが泣いていてと言うもので、よくわからず。もう片方は、老婦人が血を採って、それで絵を描くと言うもの。
血液って、粘着質なのね。何だか自分が血を採られたような気持ちになった。採血を待つうちに、よく貧血起こしたんだよね、わたし。
1/2・1/3にゴスロリファッションで現れた人たちのファッション・コンペティションがあったそうで、結果が発表されていた。この日にもなりきり娘がいっぱいいたけど、わたしはとてもそんな勇気なかった。
あえてゴスロリは着ませんでした。
しかし風のいたずらで髪が少しゴス?
TABイベント http://www.tokyoartbeat.com/event/2007/F1D7
そもそもゴスという名称は、12世紀〜16世紀にかけてヨーロッパで拡がりを見せた芸術様式の「ゴシック」に由来する。
ただし現代のゴス・カルチャーは、中世のゴシック文化から直接影響を受けたものではないどころか、ほとんど無関係といっても過言ではない。
むしろ、中世ゴシックのリバイバルとして展開した19世紀イギリスの中世懐古趣味から生まれた幻想的文学を直接のルーツに持つものである。
そこから転じて、現在では、幻想的・怪奇的なもの、死や夜、病的なもの、狂気、トランスジェンダー、装飾過剰なイメージなど、健康的で保守的な価値観とは対立するような趣味一般を指すものとして捉えられていると言えよう。
こうしたポップ・カルチャー全般におけるゴスの隆盛は、いわゆるファイン・アートの領域からは一線を画して展開しているものである。しかしながら、ともすれば悪趣味といえる過剰さ、異形の生物や変容する身体の表現、 皮膚、体液など局所的な肉体の要素を通して自己のアイデンティティーを見つめ直そうとする表現など、現代の作家たちが取り入れているいくつかのモチーフや表現の中には、「ゴス/ゴシック」に通じる要素が存在する。
これらは、単なる退廃趣味といった表現のスタイルとしてあるのではない。
むしろ、それらゴス/ゴシック的な表象の中に、世の中の保守的な趨勢から逸脱していこうとする者たちにとってのリアリティを認め、その攻撃的に見える表現とは裏腹のイノセントさ、儚さが隠されているといえよう。
翻ってみれば、ポップ・カルチャーにおけるゴス/ゴシックもまた、今や単純なスタイルを超えて、ある種の生き方を示す用語としても機能している。
タトゥー、ピアッシングなどの身体改造、死や病に向けられる視線は、単なる趣味ではなく、保守的な世界に立ち向かおうとする自己表現のありようそのものなのである。
本展では、世界的な活動を展開する6組のアーティストによる立体、絵画、映像、写真作品、約200点を通じて、現代美術におけるゴス/ゴシックを紹介する。現代美術の領域で高い評価を受けている彼らの作品は、若い世代を中心に世界的な共感を呼ぶゴス/ゴシックの本質について、あらためて考えるきっかけを与えてくれるに違いない。