永井荷風のシングル・シンプルライフ

080323nagai.jpg3月のある日曜日、世田谷文学館に『永井荷風のシングル・シンプルライフ』を見に行ってまいりました。

実は永井荷風さんの作品は読んだことはないのですが、いろんな方のこの展示のレビューを読んで心引かれて。

「<ひとり>の悦楽、
戦略としてのエロス、
老いへの周到な準備。
_荷風スタイルには今を生きるヒントがある。」

シングルライフを、シンプルでありながら、充実した素敵なものにする工夫について、知りたいと思ったのです。


    
   
            


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端から見ると相当恥ずかしい格好で写真撮ってますね、わたし。

永井荷風は大きなお屋敷にぼんぼんとして生まれ、家督を継がずとも、父からの厚い加護を受け、そのお陰で金銭的な苦労を味わうことなく作家生活を続けることができました。

ですから、食い扶持を稼ぐのに必死なごくごく一般人とは、ちょっと違う部分もあろうかと思いますが、彼の唱える『楽しい一人暮らし』ちょっと真似てみる価値はありそうです。

〜荷風スタイルに学ぶ シングルを楽しく生き抜くための10箇条〜(世田谷文学館編)
1.毎日、ブログ(日記)を更新
2.スイーツはひとりじめ
3.ウォーキング(散歩)で体を鍛える
4.ガーデニングで自然に触れる
5.シンプルクッキングで栄養のバランスをとる
6.趣味はカメラ
7.気に入ったレストランは徹底活用
8.金銭管理はしっかりと
9.若い異性とつきあう
10.読書は長い友だち
番外.マイブームをつくる

どうでしょう?いくつ当てはまるものがありましたか?わたしはけっこう当てはまっていました〜
ブログもスイーツも(笑)カメラも散歩も大好き!そしてマイブームは・・・なんだろ?ミシンかな?8年ぶりに引っ張り出したのに、油を差さなくても、ちゃんと使えたのに感激。

ただ最近とっても庭が恋しくて。今は土のない生活だけれど、小さなプランターひとつからでも、もう一度ガーデニングをはじめてみたいと思いました。
あとはもう少し読書時間を増やしたいなぁ。やりたいことだらけで、寝不足気味なのが悩みの種なんです。

Lesson1 シングル・シンプルライフのレッスン
38歳から79歳の亡くなる日まで日記を書き続けた荷風。それは日記文学の傑作『断腸亭日乗』として遺されています。ホントマメに日記を書いているのですね。こんなに日記をつけていたら、日記を書くだけで一日が終わってしまいそうです。

Lesson2 知的戦略処世術を学べ
作品から浮かび上がる荷風の作家スタイルの変移。
Step1 異国アメリカで不眠症に 『あめりか物語』
Step2 ダイアモンドの指輪をはめて 『ふらんす物語』
Step3 フランスのエスプリと江戸の粋に学ぶ”お笑い”』
Step4 戦略としてのエロス 『妾宅』『つゆのあとさき』など
Step5 お笑いで、闘う 自虐お笑い芸人の元祖!?中期の辛口エッセイ

晩年にはシンプル・シングルライフを満喫した荷風ですが、それまでにはごくごく普通に悩んだりした時期もあった普通の人で、特に夏目漱石が英国で神経衰弱になったのに比べると、ごく楽に欧米に溶け込んだと思われているが、実は不眠症に悩まされていたというのは、けっこう新鮮でした。

わたしも多分、あまりに環境が急激に変わってしまうと、すぐに眠れなくなるし、お通じにも苦しんだりするほうなので、どこに行ってもすぐに眠れてピンピンしてるような人には、もしかしたらあまり共感できないかもしれません。

そしてエロスもお笑いも愛した。とっても人間らしい荷風。
彼は実は何度も結婚しているのですが、どれも長続きせず、(一番長続きした女性との付き合いが5年だったとか。)自ら結婚には向かないと悟ったようです。とはいえ、身の回りの世話をしてくれる女性の面倒を見たり、常に異性はそばにいた模様。

一番大切なのは、戸籍上、そして実際の住まいにおいても「シングル」を貫いても、心の中は常にシングルではなく、(若い)異性がそばにいるということも、シンプルライフには、とっても大切なのかもしれません。
恋をしていると、なんてことない日常がキラキラしますもんね。

Lesson3 夕暮れ時の散歩法
夕暮れ時の散歩。なんとなく足早に帰宅してしまいそうなこの時間、ゆったり散歩を楽しむ心のゆとりを持ちたいものだと思いました。

Lesson4 女性作家たちの荷風の愛し方
<女>荷風というべき荷風にあこがれた林芙美子と森茉莉。森茉莉は森鴎外の娘として知っていましたが、妹がいて、小堀杏奴というのに、これで「アンヌ」と読ませるのにおどろきっ。イマドキの若い両親の名づけのルーツは森鴎外だったのか!
そういえば、荷風も家をペンキで塗って「偏奇館(ぺんきかん)」と呼んでしまう強引さが素敵だと思いました。当て字みたいな漢字を使うのは、最近始まったことではないのですね。

そう考えていくと、時代を経ても、それほど人の本質は変わったりはしないのだなぁと思うのです。荷風が愛したシンプルなシングルライフは、きっと現代を生きるわたしたちのシンプルライフにもつながっているはずです。

それにしても、作家の生活にスポットを当てる展覧会というのもありそうでなく、とってもおもしろいですね。絵も画家の人生を照らし合わせてみると、思いがけない側面が現れて、ぐっと絵画鑑賞が楽しくなりますが、作家はなおのこと、ですよね。
 
080323nagai3.jpg館内には荷風人形や荷風の使っていた小物などがたくさん展示されていました。
こんな風に写真を撮ることのできる場所も。

二回の常設展では、からくりなどが見られ、ちょうど時間的にタイミングがよく、見ることができました。
萩原朔太郎『猫町』
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080323roka_park0000.jpg近くの蘆花恒春園にてお花見を楽しみました。

ここの桜はソメイヨシノではなく、高遠コヒガン桜といって、甘いピンクのかわいらしい花でした。
長野の高遠では、まだまだ見頃は先ですが、関東ではソメイヨシノより早く見頃を迎えるということで、東京にソメイヨシノの開花宣言が出された翌日に、この花はすでに見頃となっておりました。

文学少女っぽいいでたちで出かけてみましたが、足元だけちょっとロックテイストに。全体的に英国風が好きらしいです、わたし(聞いてないか(笑)。

プレスリリース
『ふらんす物語』『?東綺譚』や日記『断腸亭日乗』などで知られる永井荷風は長い間、愛読者たちに熱狂的に支持されてきました。
また荷風は、作家や評論家たちによってさまざまな視点から論じられてきた特異な作家でもあります。そのいっぽう、荷風は専門家や愛読者以外にとっては一般的に遠いひと、のイメージを越えることはなかなかできない存在でもありました。

そんな中、画期的な荷風論が2005年に登場しました。持田叙子の『朝寝の荷風』です。持田氏は、現代社会に生きる人々の共通点を多く持つ先駆者(しかも現代女性との共通点の多いこと!)としての荷風像を論じ、「荷風文学には、今を生きる人々にとっての多くのヒントがある」と提言しました。

いまや居住地域に関係なく、都市的独身生活を満喫する人々。
望むと望まざるとに関わらず、当たり前となった一人だけの老後を過ごす人々。荷風は、現代人が直面している「一人で生きること」への処世術をいち早く体現しました。荷風は今こそ読んで為になる作家であり、「文学なんて関係ない」と思う現代人にこそ出会ってほしい作家なのです。

本展は、永井荷風と現代社会に生きる私たちが出会うための展覧会です。
40年余りにわたって書き続けられた日記文学の傑作『断腸亭日乗』自筆稿本や、一人暮らしを支えた身の回りの品々、また、今回初公開となる小堀杏奴(森?外次女)あての書簡など多彩な資料を展示いたします。
そのライフスタイルや作品をじかに体感し、シンプルライフのレッスンをはじめましょう!

会期 2008年2月16日(土)〜4月6日(日)
開館時間 10時〜18時(入館は17時30分まで)
休館日 毎週月曜日
会場 世田谷文学館 1階企画展示室
観覧料 一般500(400)円/高大生300(240)円/小中生200(160)円
     /65歳以上250(200)円 
     ※( )内は20名以上の団体割引。障害者割引あり
特別協力 永井永光
監修 持田叙子
主催 (財)せたがや文化財団 世田谷文学館
協力 市川市、墨田区教育委員会
後援 世田谷区、世田谷区教育委員会
協賛 株式会社ウテナ 瀬田温泉山河の湯


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