【映画】『カッコーの巣の上で』


この週末は、土日とも出かける予定があったのですが、どうしても映画が見たくて、金・土・日と夜に三本見ることに。

『ショコラ』がラブロマンス、『ユージュアル・サスペクツ』がサスペンスなので、残り一本は、ヒューマンドラマか、社会派ドラマをということで、アメリカンニューシネマを代表する名作を選んでみました。

カッコーの巣と言うのは、精神病院の蔑称なのだそうですね。
ジャック・ニコルソン、いいですねぇ。決してイケメンではないのですが、チャーミング。
彼が病院内の空気を変えていこうとする様子は痛快で、その中から、彼と心を通わすビリーやチーフとの友情もとても素晴らしい。

しかし、まさかこういう結末だとは思いませんでした。書評にも「切望的な最後だけど、なぜか希望が持てる」と書かれているものが多いですね。
この映画を見て、ますます昨日の『ショコラ』はおどぎ話だったな、と思ったのでした。新しくい入り込んだ者が、元からあった決まりを変えようとするのは、そんなに簡単なことではないのでしょうね。

見てから数日は、ちょっとしばらく気分が下がってしまいました。それでも、いい映画だと思います。


一番下にネタばれが続きます。
映画を見た方だけどうぞ。







コチラ原作




『カッコーの巣の上で』(One Flew Over the Cuckoo's Nest)
1975年のアメリカ映画。
原作は1962年に発表されたケン・キージーのベストセラー小説。

監督 ミロシュ・フォアマン
製作 ソウル・ゼインツ
    マイケル・ダグラス
脚本 ローレンス・ホーベン
    ボー・ゴールドマン

出演者
ジャック・ニコルソン - ランドル・パトリック・マクマーフィー
ルイーズ・フレッチャー - 看護婦長ラチェッド
マイケル・ベリーマン - エリス
ウィリアム・レッドフィールド - ハーディング
ブラッド・ドゥーリフ - ビリー・ビビット
クリストファー・ロイド - テイバー
ダニー・デヴィート - マティーニ
ヴィンセント・スキャヴェリ - フレドリクソン
スキャットマン・クローザース - タークル
シドニー・ラシック - チャーリー・チェズウィック
ウィル・サンプソン - チーフ・ブロムデン

音楽 ジャック・ニッチェ
撮影 ハスケル・ウェクスラー
    ビル・バトラー

配給 ユナイテッド・アーティスツ
公開 1975年11月19日(米)
     1976年4月3日(日)
上映時間  133分
製作国 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $4,400,000
興行収入 $112,000,000



さて、ここからネタばれですので注意!!


主人公は、刑務所での強制労働を避けるために、精神病のふりをして、精神病院に送り込まれます。そこでの、人間性までも統制するやり方を批判して、婦長と真っ向から対立します。

その結果は最悪な事態に。主人公の分析の結果、精神的疾患は認められないとしているにもかかわらず、最後に主人公は、ロボトミー手術をされ、廃人のようになってしまうのです。

途中、主人公を投げ出そうとする医師たちに対して、彼をかばう場面も見られるように、婦長自身が悪い人と言うわけではなく、この当時の精神病院の管理と言うのは非常に困難で、ある程度管理しなければ、やっていられない、という側面もあったのではないかなぁ、とも思います。


この主人公にも、当時の概念として精神病質(サイコパス)(現在は反社会性人格障害)の兆候が見られるという意見もあり、当時、精神分裂病(統合失調症)に効く薬は無く、精神病質は治療が不可能な病気です。
そうした患者を管理するのは、困難を極めていて、そんな病院関係者にとって、ロボトミーは福音だったとも言われているそうです。

だけど、最後のジャック・ニコルソンの様子を見て、それが正しいと言える人はいるのでしょうか?
あの生き生きとした彼をもう見ることはできない。
彼は確かに、婦長を殺そうとしたけれど、婦長はその前に、ビリーを殺したも同然のことをしたのです。

精神病患者の一人(ビリー)なら死んでもかまわなくて、婦長なら大問題、ということなのでしょうか。

当時、精神病患者の人権などというものはなかったのですね。
それにしても恐ろしい時代です。ちょっと暴力的だったりするだけで、精神病院に入れられ、頭に穴をあけられて廃人にされてしまうのですから。


また、原作は、主人公がチーフなのだそうで、同じように精神病のふりをして病院にもぐりこみながらも、活発に病院を変えようと奔走するマックを見て、それまでは、目立たないように、うまくやり過ごして、ただ生きながらえようとしていたチーフが変わって行き、解放される物語と言えるのかもしれません。

だからこそ、マックの魂も開放した=殺人といえるのでしょうね。
主人公がチーフのほうが、最後のロボトミーのショックは、小さかったかもしれないなぁ。
でもこの映画は、やっぱりマックが主人公だから、ドラマになったし、問題定義の意味もあったのでしょう。


尚、この映画が公開された1975年は、日本で「精神外科(ロボトミー)を否定する決議」が可決された記念すべき年だったそうです。



ロボトミー、精神病質に関しては、コチラを参考に。

1)ロボトミー
2)ロボトミー生存者の現状
3)ロボトミー殺人事件
4)サイコパスとロボトミー
5)精神病質(サイコパス)
6)反社会性人格障害
7)X51.ORG : 前部前頭葉切截 ― ロボトミーは"悪魔の手術"か
8)ロボトミーの生存者語る(2006/08/28)
9)精神分裂病(統合失調症)


あの映画のココがわからない・カッコーの巣の上で(1975)




コメント

1 ■名作ですよね
久々に見たくなりました(*´∀`)
ロボトミー扱った映画やドラマはどれも下手なホラーより怖いですよねぇ

全然関係ないですが精神科繋がりで「17歳のカルテ」をおすすめしときます
この映画の時のアンジーが一番好きなのです(*´д`)もし未見なら是非ー
ゆたか@4コマ描き 2010-06-10 10:09:15

2 ■Re:名作ですよね
>ゆたか@4コマ描きさん
ロボトミーは、ゆたかさんもご存知
「Morality Slave」の歌詞から気になって
もう何年も前に調べまくったんですが
本当に怖いですね。
うつ病の治療にも使われてたと言うのが恐ろしい。

『17歳のカルテ』はまだ見てないのですが
気になってた映画です。境界性人格障害にも興味があるし。
自分もいつそうなるかもしれない、精神の領域って
そういう怖さがあるのでしょうね。
ぜひ見てみたいと思います。ありがとうございます。
陽菜ひよ子 2010-06-14 08:34:32


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