【映画】『エターナル・サンシャイン』
ケイト・ウィンスレットは好きな女優さんだ。
『タイタニック』のときは、可もなく不可もなく、だったけれど、その後『ネバーランド』を見て、好きになった。『ネバーランド』と同じ年に撮影・公開されたこの映画を見て、さらに彼女が好きになった。
いい作品に出てる、いい女優さんだと思う。
ジム・キャリーについては、ヘンな顔をするヘンな俳優さん、というイメージ。これはまぁ過去においては、一般的な感想かな、と思う。なんといっても『トゥルーマン・ショウ』の人だから。
でも二人とも、本当によかった。
まずはケイト。
『タイタニック』にしろ『ネバーランド』にしろ、ドレスを着て、時代物の映画に出ることの多いケイトが、赤や青や緑の髪をして、エキセントリックに感情的に、がなりたてる役を演じたんだけど、これがよかった。
彼女はすごくきれいな人だと思うんだけど、たとえば、『コールド・マウンテン』でニコール・キッドマンに感じたようなお人形みたいな感じはしない。すごく人間らしい。ニコールは美人過ぎるのか?それとも、演技力の違い?
『タイタニック』のローズは、演じる人によっては、つまらないお人形になってしまったと思うし、本作『エターナル・サンシャイン』のクレメンタインは、女優の選択を間違えば、下品になってしまったと思う。
一見はすっぱな言動をしながらも、中身は真面目なのよ、というクレメンタイン。ジム演ずるジョエルにも、可愛げない態度ばっかり取ってしまうんだけど、それがなんだか可愛くていじらしい。
このクレメンタインを魅力的にしたのは、やっぱりケイトの力なんだと思う。
そしてジム・キャリー。
とてもコメディを得意としていると思えない繊細な演技。劇中彼自身が何度も言うように「つまらない人生」を送ってきている平凡な男、なんだけど、そんな彼に、なぜクレメンタインが引かれたのかといえば、やっぱり、ジム演ずるジョエルは魅力的だから。
この映画の内容は、ご存知の方も多いと思うけど、ケンカして傷ついたクレメンタインが、自分の脳から、ジョエルに関する記憶を消してしまう。
傷ついたジョエルも彼女に関する記憶を消そうとする。そのうちに、消したくないと抵抗するんだけど・・・
脇を固める記憶を除去する会社のスタッフも、なかなかいい味を出していて、彼らのエピソードも、いいアクセントになっている。
ケイトに恋をしてしまう、危ない人にイライジャ・ウッド。『ロード・オブ・ザ・リング』の彼です。てか、あまりに危ない役で、フロドが吹っ飛びました。最初、彼は唐突に表れるんだけど、そのわけがわかると、ああ!!って思う。
この映画はネタばれはしないつもりでいたけど・・・
もし、映画の意味がわからなくてたどり着いた人のために、下のほうにネタばれを書いておきます。まだ見てない人は最後は読まないでくださいね。
会社の受付嬢にキルスティン・ダンスト。
『マリー・アントワネット』の彼女ですね。全然わかんなかったけど。この映画も見たいと、ずうーーーっと狙ってるんですが、あまりにも女子的なので、いつも遠慮してました。次は見るぞ!!
余談ですが、クレメンタインが髪をオレンジに染めて、ジョエルが「タンジェリン」と呼んだりするシーンがありますが、成熟した果実の果皮の色が黄色〜橙色のものをマンダリン、橙色〜赤色のものをタンジェリンと呼ぶそうです。
そいでもって、マンダリンが、中東を経て地中海沿岸に伝わったものから「クレメンタイン」という栽培品種ができているのだそうで。
クレメンタインこそ、オレンジの名前だったんですね!!
そんなわけで、スタッフなどの紹介の後に
こっそりネタばれです。
エターナル・サンシャイン
Eternal Sunshine of the Spotless Mind
監督 ミシェル・ゴンドリー
製作総指揮 チャーリー・カウフマン他
製作 スティーヴ・ゴリン
アンソニー・ブレグマン
脚本 チャーリー・カウフマン
ミシェル・ゴンドリー
ピエール・ビスマス
出演者
ジョエル・バリッシュ:ジム・キャリー
クレメンタイン・クルシェンスキー:ケイト・ウィンスレット
パトリック:イライジャ・ウッド
メアリー:キルスティン・ダンスト
スタン:マーク・ラファロ
ハワード・ミュージワック博士:トム・ウィルキンソン
ロブ:デヴィッド・クロス
音楽 ジョン・ブライオン
撮影 エレン・クラス
配給 ギャガ=ヒューマックス 日本
公開 2004年3月19日 アメリカ合衆国
2005年3月19日 日本
上映時間 107分
製作国 アメリカ合衆国
言語 英語
主な受賞
アカデミー賞:脚本賞
サターン賞:SF映画作品賞
英国アカデミー賞:編集賞、脚本賞
セントラル・オハイオ映画批評家協会賞:脚本賞
英国エンパイア賞:英国主演女優賞
カンザスシティ映画批評家協会賞:脚本賞
ラスベガス映画批評家協会賞:脚本賞、主演女優賞
ロンドン映画批評家協会賞:英国主演女優賞、脚本賞
ナショナル・ボード・オブ・レビュー:脚本賞
放送映画批評家協会賞:作品賞、主演女優賞、監督賞、脚本賞、編集賞
ここからネタばれなので、注意!!
この映画、一回目は私もよくわかりませんでした。
まさか、こういう映画だとは思ってもみなかったし。もっと普通にストーリーが進んで、素直に泣けるラブストーリーだと思ってたんです。
んでも、この物語の大半は、ジョエルの頭の中。彼の記憶を消す作業の間、彼とクレメンタインの過去のやり取りを中心に描かれて行きます。
最初は、どこまでが記憶除去なのかわからなくて、最後の意味がちんぷんかんぷんだったんです。最初の車のシーンも、過去に戻ってるんだと思っていたので、そこにテープが送られてきて?????
違うんですね。
彼らが本当に始めて出会ったときはパーティーで、誰もいない海で出会ったのは、記憶を消されてから。冒頭の出会いは、すでに記憶を消された彼らが出会いなおしたものだったんですね。
彼らが最初に出会ったとき、クレメンタインの髪は緑色で、最初に氷の上を歩いた時、彼女は赤いスカートをはいてました。冒頭で二度目に氷を歩いた時(転んだ時)は、クレメンタインはもっと地味な服装をしています。
途中で髪をオレンジ(タンジェリン)にして、そこから別れるまで、彼女はオレンジの髪のまま。本屋でイライジャといちゃいちゃしてる時の彼女は青い髪。
冒頭と最後に出会いなおしたときはその青なんですね。
髪の色は、緑(出会い) → オレンジ → 青(別れてから)
冒頭で、彼が列車のドアに挟まりながら海に行き出会い、数日後、彼女の家の前に車を止めて、イライジャに話しかけられる、ここが、最後につながるんですね。
そこから、いきなりジョエルが泣いているのは、過去。彼が記憶除去を決めたあとです。このあと彼は、家に帰り、睡眠薬を飲んで眠りにつきます。そこへやってくる男二人。記憶除去の始まりです。
彼がクレメンタインに知らん顔されて、友人に相談に行ったところから、彼の記憶除去は始まるんですね。そこから、ふたりの歴史がどんどんさかさまに描かれて行き、出会いのパーティーのシーン。
ふたりは、初めてであった海での再会を約束して、彼は目覚めます。
そして、起きて会社をさぼり、電車に挟まれながら海へ。そこには、記憶をなくしてもやはり約束を守ったケイトの姿が。
次に氷を見に行って朝を迎えた二人のシーン。ジョエルがイライジャに話しかけられたところ。イライジャにとってみれば、別れたはずの二人、記憶も消したのに、なんでお前がここにいるの??って思いますよね。
ケイトの家には、イライジャからの留守電。
そこで、自分の記憶も消されたメアリーからテープが送られて、彼らは、お互いに対しての率直な感想を聞きあう羽目に。(これらは、ほとんどは虚勢で、本音ではないのですが)
お互いにショックを受け、一時は険悪になるふたり。
「私のことを、あなたはそのうち嫌になるし、私は閉塞感で苦しくなる」というクレメンタインに、そんなの平気だ、というジョエル。
笑い合う二人。
そこで、映画は終わるのです。
July 28, 2010