「ばかもの」絲山秋子

2016.02.10 Wednesday
絲山秋子さんの「ばかもの」を読んだ。面白かった。
アルコール中毒ってこんな風になって行って、こんな風に人生は破たんしていくのだというのが、ものすごくリアルに描かれていた。

ちょっとしたきっかけで、人生って簡単にもろく崩れ去る。
もしかしたら、自分自身も気づかずして、崩れようとする砂の上に立っているのかもしれない。
いや、どう見ても危うい綱渡りな人生だよね、自分の場合は(*_*;

物語序盤では、驚くほど強気な女として描かれている額子も、順調な人生を送る中、運の悪い不慮の事故で全てを失ってしまう。

人生なんて、一寸先の事は本当にわからない。堕ちて行くのは簡単。

小説にはいろんな読み方があって、多くの人は、堕ちるところとは程遠い場所にいて、他人事として物語を味わう。
自分はその多くの人とはちょっと違う立ち位置からこれを読んだ。

多分アル中にはならないと思うけれど、それでも「堕ちて行く」恐怖をまざまざと感じた、現実にこうならないように、と
自分に強い自戒をしなくてはと感じる本だった。

のん気で平和だった場所では真に結ばれることのなかった二人が、そんな風に堕ちたところで再会する。
最後は救われる内容でよかった。

堕ちるなんてこととは無縁だからと言って、幸せとは限らない。
ギリギリの場所で、自分は最後まで笑っていたいと思う。




                  


著者の絲山秋子さんとは、アトピー本の書店回りで伺った書店で書店員さんに紹介された。
ぺーぺーな新人漫画家である私とは違って、芥川賞作家であり、作品の映像化もされている大物作家さんだというのに
とても気さくにお話して下さり、次に、とある集まりで再会した時も、まるで旧知の仲のようにハグして下さった。

実は年齢はそんなに変わらない(絲山さんの方が3歳年上)。
絲山さんのデビューは37歳で、私がイラストレーターとして本を出したのも同じ37歳。
作家の場合は、イラストレーターと違って、37歳と言うのはそんなに遅い年齢ではないのかもしれないけど
それでも、やっぱり自分はスロースターターでその後の歩みもカメだなぁと思う。
ここから少しは巻き返して行かねば〜〜〜〜。がんばろ。


                  


2015年10月発売の実話エッセイ。アトピーって痒いだけの病気じゃないんです。


#「アトピーの夫と暮らしています」の感想
は続きに!


                  


Amazonに11個目のレビューが付きました。2016.02.26 Friday
★★★★☆「毎日泣きながら書いていた」
投稿者ロビーナ【ベスト50レビュアー】2016年2月26日
本書を読んで、アトピーには「小児型」と、主に15歳以上で発症する「成人型」があり、
成人型は、寝込むほどの重症になりやすいこと。

とりわけ「脱ステロイド」を目ざす時期に体じゅうをかきむしりすぎて血と膿だらけになり、
背中などがゾウの皮膚のように厚くゴワゴワ、シワシワに。
まぶたは普段の倍以上に腫れ、顔は真っ赤。ストレスと不眠による強い疲労感、倦怠感…。

あまりの苛酷さに、言葉を失う。

本書には、脱ステロイド治療に取り組む夫のさまざまな症状や、治療の苦しみ、悩みに夫婦で立ち向かった日々が、
仕事や人間関係のエピソードも交えて、リアルに描かれている。

成人型アトピーQ&Aも加えられ、患者や家族でなくても興味を引きつけられる。

著者は「きっと世の中には、私と同じように闘う多くの妻や母や家族がいるのでしょう。
そんな人たちに、ひとりじゃないことを伝えたい」と語る。

「毎日泣きながら描いていた」という貴重な闘病記だ。
この方、すごいなぁと感じるのは、私が取材を受けたいろんな記事に目を通してくださっていること。
最後の3行はそうじゃないと書けないもんね。
そしてこの方の他のレビューを見ると、★4つは、かなり褒めて下さってる模様。ありがたいです。


                  


2016.02.28 Sunday
久しぶりにTwitterでのレビュー。アトピーでSEの旦那さまとは、私も親近感。
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黒いモヤモヤはいろいろ試行錯誤しつつ描いて
これでいいのかなぁと迷いつつ仕上げたものだったので
共感してもらえてすごくホッとした。



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