ウィリアム・モリスとアーツ&クラフツ展
2004.10.26 Tuesday 17:22
陽菜ひよ子の名刺や販促グッズ
しかし、機械化されたとは言っても、当時の工業製品は質が悪く、粗悪品が、世間にはびこるようになりました。それに危機感を持ったのが、多くの工芸家たちでした。彼らは、このようなものばかりが世界中にあふれてしまったら、世の中はダメになってしまう、と感じます。もっと、美しく質のいいものを、廉価で庶民にも提供することはできないだろうか。そして、庶民の生活の質を向上して、生活自体を美しく、豊かにできないものか。これが、モリスの提唱した『アーツ&クラフト運動』の根底に流れる精神で、国を超えて、大きなアートの流れとなって行きます。
フランス語で『アール・ヌーヴォー(新しい芸術)』英語で『モダン・スタイル(近代的なスタイル)』ドイツ語で『ユーゲン・シュテイル(若いスタイル)』言葉は違えども、意味するところは同じ。今までになかった、まったく新しい芸術の世界。それは、伝統工芸の復興であり、『美しい世界』の実現を目指していました。
しかし結局、志は高かったものの、この活動は、成功したとは言えません。なぜなら、手の込んだ工芸品は、どうしても高価にならざるを得なく、モリスの工房の作品は、庶民には手の届かないものとなり、彼の顧客は結局は、富裕階級に限られるようになってしまったのです。社会主義活動家としても知られ、人々が等しく美しいものを共有する理想のユートピアを目指していたモリスは、最後までこのジレンマに苦しみます。
しかし、カタログ本文中にもあるようにアーツ・アンド・クラフツ運動と言うのは賞賛に値するものではあったけれども、根深い社会悪に対する現実的な解決手段にはならず、むしろ産業主義への抵抗の試みであったに過ぎない。とはいえ、アーツ・アンド・クラフツ運動は30年以上にわたり英国をはじめ各地で、伝統的な職人の手仕事による装飾芸術に最後の隆盛をもたらしましたし、また製作者の気高い理想が込められた素晴らしい芸術品という遺産を、今日の我々に残してくれた。
A・H・マクマードゥはその著書『アーツ・アンド・クラフツ運動の歴史』の中で、アーツ・アンド・クラフツ運動の作家たちの理想主義についてこう記している。彼らは「生活の糧を得る手段としてではなく、生きがいとして、それらの芸術を深く愛したのである」引用『ウィリアム・モリスとアーツ・アンド・クラフツ』 「ウィリアム・モリスとアーツ・アンド・クラフツ運動(ピーター・コーマック)」p.14
その精神は気高く、現代にも受け継がれ続けています。
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