にっぽんの客船。

2011.05.07 Saturday 18:49
陽菜ひよ子の名刺や販促グッズ



けれどそこに問題が。私は酔いやすいのだ。中でも最悪は船。20代のころまでは、乗り物に乗るときには酔い止めが欠かせなかった。んでもあれは飲むと、コトンと眠りに落ちてしまい、飲んだら最後、車窓からの景色を楽しむと言うことは、私にはない選択肢だったのだった。

私は、昔の私の考えていた「二大不幸」―――「雨女」と「乗り物酔い」を背負って生まれてきたんである。しかも、船の上で雷雨に当たったりしたら最悪だ。大揺れに揺れる船で、デッキの風に当たることもできず、船室に閉じ込められ、ひたすら襲い来る吐き気と戦うしかない・・・想像するだけで恐怖である。それでも、どんな嵐に遭っても、どんなハプニングがあっても「水曜どうでしょう」で、ヘリに酔って吐いてしまった大泉洋のように、あとで思い返せば、それは笑い話になるはずなのだ。


28の冬、記録的な大雪が降った成人式の日に、関空からオーストラリアに飛び立った。一番楽しみにしていたブルーマウンテンは、全く見られなかった。他の日は全部晴れだったのに、10日間の日程で唯一曇りの日に、わざわざ旅のハイライトを配置したのだった。シドニーに着いてから日にちを選んだのは私だったけれど、それをあとで、責めるようなことを言う同行者の思いやりのなさにもげんなりした。

この先、ずっとこんな風なんだろうか、と思った。一人眠れずに、そんな風に考え続けていた夜を、15年近く経った今も忘れられない。天気の問題ではない。そんなことは小さな問題なのだ。ブルーマウンテンなんか見られなくても、この旅は楽しかった、と思えるような、そんな小さな思いやりの言葉が、欲しかっただけなのだった。今思えば、ものすごく贅沢な生活をしていた。けれど、どんなにお金をかけて旅をしても、どんなに豪華な食事をしても、楽しい気持ちを共有できなければ、それは忌々しい想い出にしかならないのだ。

今日は、京橋で足止めを食らって、船の展示を見て、それから明治屋を冷やかして、カフェでお茶をして、日本橋まで歩いた。ただそれだけだったけれど、数十万かけて行ったオーストラリアよりずっと楽しい休日だった。

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