先日、日帰り駆け足で、京都と大阪に行ってきた。
京都市美術館で「マグリット展」を
あべのハルカス美術館で「トーベ・ヤンソン展」を
それぞれに見てきた。
(前置きが長いので、レビューだけ読みたい方は
サクッと続きを読んで下さいませ。
(途中ライン画像で区切ってある下))
まったく関連性なく、たまたま会期が重なっていたので
今なら両方見られる、えいっ!と行ってきたのだけど
二人の作家の特性を考えた時に、意外と比較できて
同じ日に見られたのは、面白かった。
「マグリット展」は東京の国立新美術館で
長いことやっていたのだけど、結局見に行けず。
たまたま知人の編集長が「マグリットの装幀も展示されていて面白かった」
とFBに書き込んでいて、それなら是非見たいとなった。
しかし、この夏は本当に忙しくなかなか時間が取れず。
ようやく9月に入って落ち着いて、行けることに。
さすがにマグリット展だけでは寂しいので、他にめぼしい展示が
やってないか探すと、なんと大阪のあべのハルカス美術館で
「トーベ・ヤンソン展」がやってるではないか。
横浜で去年始まった「トーベ・ヤンソン展」大阪が最後だという。
これは見なくては!
それもこっちの方が会期が短い!これは連休前に行かなくてはだわ。
さて、日帰りであることと
京都と大阪は同じ関西圏と言えども県が違うから
移動にはそこそこ時間がかかるので
そこから逆算して、駆け足で移動して
それぞれ2時間ずつ時間が取れそう、ということに。
何とか見終わりますように。
京都駅に着いて、岡崎公園・平安神宮行きのバス停を通りかかったら
すごい人!で、え、まさかこれみんなマグリット展?とドキドキしつつ
地下鉄で東山へ。
徒歩10分だけど、ほとんど参道で、小雨の中歩いても全然気にならず。
混雑のわけがわかった。平日にもかかわらずとんでもなく混雑していたのは
マグリット展でも向かいの近代美術館のせいでもなく、マグリット展と同時開催で
会期が短いルーブル美術館展のせいだったのだ。
立派な美術館の入り口向かって右側がマグリット展、左側がルーブル美術館展。
左側は、雨の中外まで続く行列が続いていたが、マグリットはあっさり入れた。
マグリットは、今までに脚を運んだ展示で何度か目にしていたので
見たことある作品が結構な数あったせいか、何と1時間で見終わってしまった。
チェスの駒のようなのとか、切り絵細工のようなのとか、葉っぱのような木など
彼のお気に入りのモチーフが繰り返し現れるあたりは、すごく面白かった。
何かが何かに変わっていくその境界線が曖昧というのも興味深かった。
マグリットと言えば、やはり空と海、だよねってこと。
普通に依頼された肖像画でも、唐突に城壁のような石壁と、海と空がバックに
ドドーンと描かれていて、シュールすぎて笑ってしまった。
シュールといえば、顔が女性のヌードになってる絵は
最初に見た時は衝撃だったな、と思う。
今回初めて知ったのは、彼が戦時中の一時期、印象派的な絵や
フォービズムっぽい大胆な色彩や構図の絵(ヴァーシュ(牡牛)スタイル)も
遺していること。
周りから酷評されてすぐに取りやめたそうだが、確かにイマイチである。
そして元のテイストに戻してからは
水を得た魚のように作品を、これでもかと作り続ける。
やはりその作品は素晴らしい。
マグリットは幼少時に母を自殺で失くしていて、それがきっと作品にも
少なくない影響を与えているのだろうなー、なんてことも思いつつ。
意外だったのは、マグリットは例えばゴッホなどと比べれば
生前に認められ、画家としてはそこそこ成功したといえそうなのに
生活のために何度か、ファインアートから商業デザインの世界に、創作の場を移していることである。
正直、装幀作品は「え?これだけ?」と言う少なさだったが
マグリットのセンスを伝えるには充分だったと思う。
それでも、マグリットは例えばピカソのように、画風を変えても変えてもどの画風も評価され
名声を高めて行った画家とは違って、そんなに器用な画家ではなかったのだということ。
他の人にはない類まれなセンスを持つと言う点で、他の追随を許さないとも言えるマグリットにも
意外な弱点があったのだなぁと、なぜか巨匠に親近感を感じた。(おこがましいわっ!)
そして、京都市美術館の建物が本当に素晴らしかっった!終了後写真撮りまくり。
そんな流れでトーベ・ヤンソン展へ。
そこではさらに興味深い考察を、得ることになるのだった。明日更新予定。
もはやお約束だと思うんだが、他に撮ってる人が全然いなかったのはなぜ?w
展覧会名 マグリット展 | René Magritte
会期 2015年7月11日(土)〜10月12日(月・祝)
休館日 毎週月曜日 ※ただし、7月20日(月・祝)
9月21日(月・祝)、10月12日(月・祝)は開館。
開館時間 9:00〜17:00
9月19日(土)、20日(日)は20:00まで。
※入館は閉館の30分前まで。
会場 京都市美術館(岡崎公園内)
〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町124
http://www.city.kyoto.jp/bunshi/kmma/
主催 京都市美術館、ベルギー王立美術館、読売新聞社、MBS
共催 WOWOW、ぴあ
後援 ベルギー大使館
特別協賛 Canon
協賛 損保ジャパン日本興亜、大日本印刷、トヨタ自動車、岩谷産業
非破壊検査
協力 エールフランス航空、日本貨物航空、日本航空
お問合せ 050-5542-8600(ハローダイヤル)
大人1,600円(1,400) 高大生1,100円(900) 小中生600円(400)
( )内は20名以上の団体料金
※ 障害者手帳等を提示の方は無料。
※ 小中生は日・祝休日は無料。
帰宅後に思いだしたんだけど、20年近く前に、私は奈良に住んでいて
やはりこの美術館に「ルーブル美術館展」的な展示を見に脚を運んだことがあるのだった。
(残念ながら、古すぎて美術館サイトのアーカイブにも残っていなかった)
当時の私はまだまだ美術展初心者。
確かモナリザが見られるとかで、たまたまチケットをもらって
あの名作が見られるなら行かねば!と友人を誘って行ったのだった。
やっぱり会場は激混みで、かのモナリザ様は遠くから拝めただけ。。。
その友人とは、磁器絵付けとか植物画を一緒にやっていたのだが、彼女から
「私はこう言うの(ルーブル)より、水彩とかチャイナの展示が見たいねん」
と言われて(そう言いつつ付き合ってくれたのだが)
「えー、でも名画だよ?次いつ見られるか分からないんだから、もったいないじゃん」
と思ったものなんだけど、今は彼女の気持ちがよくわかるし、申し訳ないことしたなーと思う。
そして、この日のルーブル展の異常な混み具合を見て思ったのは
とりあえずビッグネームと話題には乗っとけ的に群がる人々のせいで
本当に見たい人がゆっくり絵を鑑賞できないという事態の残念さである。
後ろで列をなしていても意に介さず、絵の前をふさいだまま、あろうことか
夕飯のおかずについて延々と話し続けるようなおばさま方を何度も見た。
どうせどこかでもらったチケットなのだろう。
キチンとお金を払っていれば、少なくともあんなもったいない見方はしないと思う。
まぁこういうのも仕方がないことで、そのおかげで経済が活性化したり、いいこともあるのだろうけどね。
それに美術館にまったく脚を運ばない層もいる訳で、それに比べれば、脚を運んでくれる人たちが
こんなにたくさんいるのは喜ぶべきことだし、日本はまだまだ平和なんだな、とも思う。
ただ、ビッグネームでなくても、面白い展示はたくさんある。
先日アートラボあいちのT女史は、一般の人たちにもっと美術を身近に感じて欲しい、
アートの底上げをしたい、とおっしゃっていたのだが、私も大いに同感で、私はさらに
そう言ったマイナーな展示に皆が脚を運ぶことで、アートで食べていける人がもっと増えることを
目指せたらと思う。
人の少ない展示に脚を運ぶたびに、もっとこういうのが広まったらいいのになぁ、と思うのだった。