ファースト・プライオリティー/山本文緒

070121engel2.jpgちょうど一年前、今の家に住みはじめた頃に、山本文緒の本を読みあさった。
もともと好きで、かなりの作品を読破していたが、この時一気に読んで、多分ジュニア小説時代のものを除いて、全制覇したのではないかと思う。

この頃読んだこの本とエッセイ『そしてわたしはひとりになった』は、なんともココロにすとーんと入り込んできた大切な二冊となった。よい小説の条件とは「身につまされる」ということだと聞いた事があるが、まさにこの人の小説には、微妙な立場や感覚の違いを超えて、身につまされて、ギュッと胸が締め付けられるような気がする。


            


山本文緒の小説は大抵面白いが、特にこの人は本当に短編の名手だと思う。
この短編集は、様々な職業や立場の31歳の主人公の様々な「一番大切なもの」をテーマにした31編の短編が収められている。




            


最後の一編はフィクションとは思えない内容だが、それだけに胸に迫るものがある。 そうした人生を歩む著者が描き出す全く違う30の人生は、それぞれにリアリティにあふれ、ほろりとさせられたりする。

この人の書くものは、ものすごくコミカルなものと、ものすごく後味の悪いものに、はっきり分かれるが、
単純に面白かったのは、「処女」「息子」「禁欲」 「チャンネル権」「安心」「三十一歳」
身につまされたり、共感したのは「庭」「空」「ボランティア」「カラオケ」「小説」

   


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