風味絶佳/山田 詠美


2005 文藝春秋 山田 詠美

大好きな作家だけに期待度も大きいのだけど、その期待を裏切らないどころか、ただただ、感嘆させられてしまう作品集。さすがだ。 表題作の「風味絶佳」に出て来る粋なおばあさんが、いつも森永のキャラメルを舐めている事から、装丁がキャラメルのパッケージ風になってるのもかわいい。

私が一番好きなのは「夕餉」この作品の主人公の恋人の職業はゴミの収集作業員。
これを読んでいたら、きちんと料理を作って、きちんとゴミを出して、きちんと生活したくなった。登場する男性の職業が全て、ブルーカラーで、人からは蔑まれがちな仕事ばかりだというのが、この作品集のひとつの軸になっている。

ゴミを出したり、水を下水に流したり、死んだら骨になったり、人が人として生きていくために一番大切な部分を、ケアする職業はなぜか、汚れているかのように、後ろ指を指されるものだということに、あらためて気づいて唖然とする。作品の中に流れる何ともいえない無常観はいつも通り。けれど愛があるから、だから救われる。誰かをきちんと愛して、きちんと生きて、きちんと死んでゆきたい。そんな気もちになる一冊。


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