こまどりプレート完成 〜金焼成の苦労〜
最後に駆け足で焼成を行っているチャイナの作品ですが、これもまた、ずっと完成させたくて、ウズウズしていたもの。
2004年秋の展示会に出すクリスマス作品として作り始めて、大きすぎる事と、完成させる事が出来なかった事で、結局は、出すのを断念したのですが、描き始めたのは2003年、「バードイヤー」と決めて、鳥ばかりを描いていた年。クリスマスの鳥って何だろう?と調べた結果、「コマドリ」(クックロビン)が欧米では、よくモチーフに使われている事を知ったのでした。2003年12月の記事に、これはほぼ完成に近い形で登場しているのですが、その後、グリーンに染めた部分にエナメルでレリーフを施して、さらに金彩を乗せるという、とっても手の込んだ事をして、ようやく完成。(周りのヒイラギです。わかるかな?)
さて、少し専門的なお話になりますが・・・
チャイナの上絵付けは、焼成温度がなかなか難しく、絵の具の色によっても、高温に耐えるもの(紫、ピンク系)や低温でないと無理なもの(赤系)があり、金の焼成は、絵付けより一段低い温度で焼く事がベストとされています。一段低いと言っても、紫系は800度超えで、良質の磁器であれば850度以上にも、耐えうるそうですが、金の場合、確実なのは730度以下とされています。これだけ高温だと、100度くらいの違いはどうってことない様に思えますが、100度どころか、たった10度の違いで、今までの苦労が水の泡になってしまうこともありうるのです。
ただ、最近の金は、800度でも飛んでしまうような事は少ないので、釉薬の上に直接金だけを載せるような場合は、絵付けしたものと一緒に、800度で焼いてしまっても、ほとんどの場合は大丈夫なのだそうです。(ボーンチャイナはもう少し低い方がいいそうですが)800度近い温度での焼成をしたとき、磁器は一度釉薬が浮き上がって、もう一度安定すると言ったことが起きているそうで、何度も焼く事は、それだけで磁器への負担になります。違う素材(エナメルや金)を重ねて焼く事は、さらにリスクが大きいので、その回避のために、焼成を重ねるごとに温度を下げて行きます。
例えば、エナメルで盛りをした上に、金彩を施す場合は、エナメル780〜800度 → 金彩730〜780度 が安全の様です。ですが、この写真の作品は、パディング(磁器に絵の具を一面に載せること)の上にエナメルを載せているので、パディング800度 → エナメル760〜780度 → 金彩730〜750度 となります。今回はちょっと低めで730度で焼いてみました。
低過ぎると、艶が出にくかったり、金がはがれやすいなどの問題はありますが、高過ぎた場合に、レリーフがひび割れてしまったりする事を思えば、どちらのリスクを取るかは、考えるまでもないでしょうね。ただ、一つの作品で、絵付けの段階で焼成するのが、2〜4回とすると、金彩やエナメルでの焼成は各一回ずつです。通常の金彩は、絵付けと一緒に焼いてしまうので、ほとんどは800度前後での焼成となります。なので、金やエナメルのための焼成で780度以下で焼くのは、ある程度、同じ温度で焼くものがたまってからでないと、無駄になってしまいます。
200度にあげるオーブンだけでも、かなりの電気を使用する事を考えると、800度近くまで4時間以上焼く焼成に、相当の電気代がかかる事は、想像できると思います。1回につき500円以上かかると言われています。そんなわけで、この作品もこんなに遅くなってしまったのでした。
もう少し金焼成を行った作品が続きます。