TOKYO illustration 2007

070712tokyo_illust1.jpg6/27(水)-7/9(月)まで国立新美術館で開催されていた東京イラストレーション展。東京イラストレーターズ・ソサエティ会員による展覧会です。
昨年までは銀座で開催されていましたが、今年から新しい美術館で開催されることに。その分規模も大きく、内容の濃い展覧会でした。

東京イラストレーターズ・ソサエティ(TIS)
http://www.tis-ex.com/


        


ますは最初に「往年の名イラストレーター」という特別企画があって、懐かしいイラストがたくさんでした。特に大橋正さんのキッコーマンのリアルイラストの原画が見られたのは、貴重だと思います。透明水彩のリアルイラストでも、こんな風にアートにすることは可能なのだ、と改めて感じました。

◇名イラストレーター7名(すべて故人)◇
ペーター佐藤さん(ミスタードーナツのイラストが超有名)
真鍋博さん(アガサ・クリスティの本の装丁が有名)
大橋正さん(キッコーマンの食材のリアルイラストが有名)
伊坂芳太郎さん(42歳で夭折した”幻の絵師”・愛称ペロ。1960〜70年代に活躍)
山城隆一さん(ネコのイラストが有名)
山名文夫さん(日本におけるアール・ヌーヴォー/アール・デコの代表的イラストレーター。1920〜70年代に活躍)
水田秀穂さん(広告・絵本などで活躍)

次にTIS会員のイラストがズラーッと。
今をときめくイラストレーターの作品が勢揃いと言っても過言ではないほど豪華な顔ぶれ。イラストレーターになるのは比較的簡単ですが(ワタシでもなれたわけだし)続けること、さらに名前が知られるようになることは、非常にムズカシイ。

さて、そんな中、パレットの先生でもあった都築潤さんの作品に度肝を抜かれました。なんと、今大人気のマンガ「デトロイト・メタル・シティ」のクラウザー様が、そのまま大きく引き延ばされて展示されているではありませんか。
名前を見るまでは、あの漫画家さんがTIS会員になられたのかと思いましたよ、マジで。

これにはこんな想いがあったそうです。
タイトル『(c)(実際には○にc)
(c)2007 Kiminoi Wakasugi
(c)2007 HAKUSENSHA
(c)2007 OHTA PUBLISHING CO. AD: Kazuki Ohashi』

著作権、版権は○シーというマークで表します。
ではこの作品を使って具体的に説明してみましょう。

この「デトロイト・メタル・シティ」という漫画のキャラクターは私が考えたものではありません。ですから原作者の若杉公徳さんと、版権を持っている白泉社さんから作品化する権利をいただいています。全体のデザインも元はCONTINUEという雑誌のカバーの仕事で描いたものなので、出版元の太田出版さんからもこの権利を譲っていただきました。

イラストレーションを取り巻くたいていの仕事は、デザイン化やメディア化を通過する中で、様々な人間が関わっていきます。そしてその人々の間で、このように創作物の使用権の管理がなされます。これは産業の分化の過程で人間があみだした知恵のひとつだと思います。
インターネットの時代、この近代社会の産物をどこまで保護するのか、あるいは共有するのか、これからもますます難しい問題となっていくことでしょう。

ところで雑誌の表紙を拡大しただけのこの絵に、作品として展示するだけの、そして交渉して権利を譲っていただいただけの価値があるのでしょうか。作者はあると考えました。
拡大することによって見えてくる「えがき方」に、イラストレーションの新しい可能性を感じたからです。(出品者コメント一覧より)


都築さんは学校の授業でも感じましたが、とても研究好き・分析好きな方です。疑問に感じたことは巨匠にもひるまず質問をぶつけたりなさいますが、多分なぜか憎まれないキャラクターの持ち主なのだと思います。とてもカッコイイ素敵な男性でもあります。(先生に対して失礼過ぎかしらワタシ(汗))

巡回予定の長野市にある北野カルチュラルセンターでは、都築潤さんによる「オリジナルメンコ」のワークショップが開催されるそう。夏休みの想い出に親子で参加したら楽しそうです。
詳細はこちら http://www.kitano-museum.or.jp/cultural/exhibitions/now/index.html


都築潤さんは会員部門委員長としての言葉も書かれています。ここに書かれていることを解くヒントを、都築さんは学校で、私たちに与えてくださったような気がします。
作品テーマ「人間がこれを作った」

「人間がこれを作った」というのが会員作品のテーマです。今回このテーマによって描かれたイラストレーションを196点を展示します。

イラストレーションは、ポスター、挿絵、映像といったさまざまなメディアを、文字や音などといっしょに形づくってきました。
そもそもグラフィックデザインの一手段として始まって、IT時代のインタラクティブデザインまで、その活躍の場はずいぶん広がってきています。
こうしたイラストレーションには、複製技術を前提とした絵づくりや、内容を伝えるためのユニークな切り口など、デザインがメディアを通して受け手と対話するために必要な技術が求められました。その結果、機能分化社会の要請と作り手側の自発性がタイミング良くかさなって、イラストレーターという専門家が生まれることになったのです。

だとしたら、イラストレーションやイラストレーターも、近代化の中でつくられた人間社会の産物ということになります。つまり「人間がこれを作った」わけです。
デザインやマスメディアがそもそもそうなのですから、当たり前の話ですよね。そう考えると私たちの身のまわりのほとんどが、そうかも知れません。そして私たちはその良いところも悪いところも認めながら、気の遠くなるくらい長い時間「人間が作ったこれ」とつき合ってきました。

ほとんどのものがそうであるのなら、何を描いてもいいわけで、だったらテーマなんかいらないじゃないかと思うかも知れません。
しかし改まって「人間がこれを作った」と言うからには、イラストレーター各々にある問題が問われているのです。
つまり無数のモノやコトから「それをなぜ選んだのか」それから「なぜそのように描いたのか」という問題です。そしてそういう見方をしたときにこそ、イラストレーター個々の持ち味が見えてくるはずです。

最後に、「何でこれがイラストレーションなのか」という見方もしてください。複製された状態でもなければ、デザインの痕跡も見当たらないのに、普通に絵を描くこととどこが違うのだろうといった疑問が頭をもたげてきませんか。イラストレーションって何でしょう。簡単なようでむずかしいですよね。
これって実は、私たちイラストレーター自身がまず考えるべきことなのかも知れません。

会員部門委員長 都築 潤
TOKYO illustration 2007 - Member of TIS  - 作品テーマより

070712tokyo_illust2.jpg数年前に登場した六本木にヒルズには森美術館、この春に登場した新名所・東京ミッドタウンには赤坂から移設したサントリー美術館、そしてここ国立新美術館。
http://www.nact.jp/
今や六本木は、上野とならぶ美術好きの注目スポットとなっています。

※クリックすると大きな地図が見られます。

国立新美術館は、建物も素晴らしい。黒川氏は建築家に専念して、もっともっとよいものをどんどん生み出していただきたいものですね。
カフェコキーユのテラスでお茶したい〜〜〜
http://www.nact.jp/restaurant/index.html
   


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