紙婚式/山本文緒・著

2003.08.07 Thursday 18:49
陽菜ひよ子の名刺や販促グッズ


これは「結婚生活」に関する短編集で、見事に「幸せな夫婦」は出てこない。明らかに変な夫婦もいるが、ほとんどはごくごく普通の平凡な、傍目からは、幸せとはいえないまでも「平和」には見えるだろうという夫婦だ。平和で平凡な日常に隠された落とし穴。これは決して、他人事ではないのかもしれない。

「土下座」
美しく、何もかもに恵まれて、天より高いプライドゆえに、人に優しくできる人、いや、優しい振りのできる人というのはいるのだと思う。でもやはり、それは優しい振りであって、本当の優しさではない。下々のものに与える施しであるからして、その下々のものが、対等な位置に立つことなど、許されないのである。たとえ、それが夫であろうとも。でもこんな奥さんをもらった夫よりも、人を「下々」としか見られない本人のほうが、100倍不幸だと思います、わたしは。

「子宝」
生きるということは、美しいものでも、絵空事でもなく、生々しく、時にグロテスクですらある。そういった生々しいものすべてに恐怖を感じる主人公は、政略結婚で結ばれた夫を愛しながらも、彼の子を生む事を拒もうとする。最後には、愛する夫を失わんがために、子供を身ごもるのだが、夫には結婚前からの恋人がいて、そこにもすでに子供がいる。いっそ、夫を愛さなければ、彼女は幸せだったのだろうか。でも、愛のない人生はさびしい。それでも、一方通行の愛よりは、愛などないほうがいいのだろうか・・・わたしにはわからない。

「おしどり」
誰から見ても、仲のいい夫婦。でも、仲がよすぎる。どうも胡散臭い。おしどり夫婦の夫の妹は、二人をこっそり観察する。お互いに両親の離婚という共通の過去を持った夫婦は、喧嘩することもできず、お互いに無理を重ねて、追いつめられていく。それでも愛してるから、と一度は家を出た義姉も戻ってくる。これはとても悲しい話だと思ったけれど、でも、無理はしちゃいけないなぁ、などと自分のぐうたらさの格好の言い訳ができて、うれしいわたしでもあった。

「貞淑」
自分しか男を知らないはずの妻が、絶頂のときに思わず漏らした、別の男の名前。一体誰だ??もうとうに、興味などなく、おばさんになってしまったと思っていた妻の秘密を夫は必死に探ろうとする。答えは意外なところにあり、なあんだ、というくらいのものだったのだが、これは男性には怖い話かもしれないと思った。わたしは女性なので、とても楽しく読めました。

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