オーデュボンの祈り/伊坂幸太郎
一気に伊坂ワールドにはまりこんでしまった一冊。
江戸時代に日本が開国した頃から100年以上、他との接触を一切断っている島に、ひょんな事から流れ着いた主人公。そこで不思議な人物ばかりと出逢う。
ウソしか言わない画家。殺人を許された男。しゃべるカカシ。
わたしのお気に入りは、ウサギさん。
店番をしながら食べ続けていたら、太りすぎて、店から出られなくなってしまったって、どんな設定やねん、と思うけれど、街で店番をする太った女性を見るたびに
「あ、ウサギさん」
とつい思うようになってしまった。
現実世界(現代の仙台)では悪意と狂気の塊のような警察官が主人公を待ち受け、島ではカカシが殺され、殺人を許された男の手で、何人かが殺されてゆく。
カカシが死ぬ前に主人公に残した言葉。その言葉を主人公がきちんと遂行しようとすることによって、物語は意外な方向へと展開してゆく。
何度も繰り返される
「この島には何かが欠けている。それを外から来た人間が置いて行く」
という島に伝わる言い伝え。
すべてが最後にパズルのピースがそろうように、ああ!と納得されられる。小気味いいほど計算され尽くされた物語。特に、ラスト数ページの急展開はすごいものがある。残りの少ないページでどう収拾を付けるんだろう?と読者をハラハラさせ、きっちりオチを付ける力量は素晴らしい。
また作者の持つ哲学や思想が、宝石のようにあちこちに散りばめられていて、これがデビュー作とは信じられないほどの完成度だと思うのだ。ミステリ好きも、そうでない人でも謎解きのおもしろさを堪能できる一冊。