わたしの本棚2015。〜なぜ本は売れなくなったのか

150711_books_9253.jpg150711_books_9255.jpg150711_books_9260.jpg150711_books_9265b.jpg150711_books_9269.jpgこの週末は暑かったですね。土曜も日曜も仕事していましたが、暑くて、でも東京で体調を崩して以来、ずっと胃の調子が悪かったのですが、水曜日くらいから毎日温かい紅茶を飲んでいたら、だいぶよくなったので、暑くても冷たい飲み物は我慢、でひたすら、温かいもの飲んで汗出して、健康的な週末でした。


     


ところで、私はよくすごくポジティブな人だと言われますが、これは元からではなくて、後天的に鍛えて自分でそうなったもの。元々は結構なネガな人間なので、ネガな人に会ったりネガな文章を読むと、引きずられるんですね。。。んで、先日からネガ入っちゃってます。

私の仕事は主に出版関係なので、やはり本が売れないというのは死活問題です。それがどうしてなのか、イチ消費者としての自分としては、どうして本を買わなくなったのか、とずっと考えていました。

昔(20年くらい前)は1500円くらいする本を何冊も買って、本屋さんで5000円くらい払うのなんて、何とも思わなかった。でも今はやっぱり、1000円超える本を見ると、ちょっと高いなと感じてしまう。それはどうしてなのか?

20年前も、文芸書を単行本で2000円くらい出して買うのは高いな、って思いました。なので、文庫になるまで待ったりしたなぁ、と言うことを思いだして。やはり、モノを買うには、今その値段で買う事が果たして妥当なのか、ということに納得できるかどうかが大事だということに気づいたんです。

当時は、家でひとりでできる娯楽、暇つぶしと言えば、テレビを見るか本を読むか、もしくはゲームするしか選択肢が無かったですから、ゲームはしないし、テレビもあまり見ない私は必然的に本を読むようになりました。本を読むには、普通に本屋さんで買うしかなかったので、いくら高くても買いますよね。その頃は、古本屋さんもそんなにたくさんなかったので、欲しい本を確実に手に入れるには、新刊で買うしかなかったのです。

それが、チェーンの大手古書店ができて、文芸書に関しては、ベストセラーになるほど、一か月もすれば、100円で投げ売りされるのが分かってきて、新刊では買わなくなりました。どうしても今すぐに読みたいと言う訳でないなら、しばらく待てばよかったんです。

ただ、当時はそれでも、余程のベストセラーでない限りは、大手古書店と言っても確実に欲しい本があるとは限らないし、その本を探す手間がありました。その手間を一気に失くしてしまったのが、某通販会社で、ネットで古書を買えるようになってから、だと思うのです。

送料が400〜500円くらいかかりますが、それでも、新刊なら1200円する本が、送料込みでも600〜700円くらい、つまり半額で買えるなら、そちらで買いますよね。世の中にはすごく潔癖症の人がいて、他人が一度所有した本を買うのはイヤだ、と言う人も一定数はいるでしょうが、私のように古着も平気な人も世の中には大勢いるわけなので、中古の本を購入するのは、中古の服を購入するよりははるかにハードルが低いでしょう。そちらに流れるのは当然のことと思われます。

つまり、「本が売れなくなった」のは、本屋で新刊を買うことに対して、果たしてこれは妥当な金額なのか?ということに、皆が疑問を持つようになったからではないかと思うのです。

本が売れなくなった理由に、インターネットに時間を奪われた、というのが筆頭に挙げられますが、むしろ、ネットに時間を奪われたのはテレビを見ていた層で、本を読む人はまだまだたくさんいるけれど、本の流通の問題で、新刊で買わない人が増えた、と言うことなのではないでしょうか。

今も昔も、文芸書に2000円払うのはちょっと高いなぁと感じる気持ちは変わらないけれど、それでも買うしかなかった頃と、安く買ったり、他に無料の選択肢がたくさんできた、そして当時に比べてみんなお金がない、などいろんな要素はある訳ですが。

ここで、2015年現在のわたしの本棚を見てみます。実は我が家は割と本がたくさんあって、これ以外に、文庫本だけの本棚、雑誌だけの本棚、コミックだけの本棚、仕事で使うソフトのハウツー本などもあります。自分が仕事でした見本だけの本棚もありますし(これは買ってないけど(笑))。


            


それはさておき、この大型本の本棚を見ると、あることに気づきます。それは、ここにある本の大部分は、本屋で買える本ではないということ。特に、1,3,5枚目の画像の本棚の中のほとんどは、美術館の図録なんです。仕事柄、まぁよく美術館には行きますが(今まで行った展覧会リスト)、本屋さんで新刊で1200円で文芸書を買うのは高いと感じてしまう私でも、美術館で買う図録3000円は高いとは感じないのです。

それはもちろん、私の場合はと言うだけで、図録は高いから買わない、と言う人もたくさんいるでしょう。でも、私のことを言えば、何故高いと感じないかと言えば、それはそれくらい出して買うのが当然と思っているから。美術展の図録はめったに中古市場には出回らないし、売り切れたら、余程のことが無い限り増刷はしないのです。

15年くらい前、ボタニカルアートの展示を後半に見に行ったら、図録が売り切れていたことがありました。会場で販売されていた図録は3000円くらいでしたが、実はとある洋書を図録代わりに販売していたので、書店でも買えるけど7000円すると言われて大ショックを受けたことがあります。そんなこんなで、図録は美術好きにとってはお宝なのです。実はもっともっとたくさんあったのですが、東京から引っ越してくるときに、今のイラストの資料に役立ちそうにないものは捨ててしまったのでした。ああ、もったいない。。。

さてここに、10年前のわたしの本棚の記録が残っています。と言っても、やはり大型の趣味の本だけの本棚です。当時は一戸建てに住んでいて、2畳ほどの書庫があり、そこには文庫本や単行本などの文芸書や実用書が並んでいました。それから辞書の類も好きでたくさん持っていました。この本棚は書庫ではなく、リビングに置いてあったもの。そういえば、料理の本もたくさん持っていたなぁ。それは食器棚に入れてあったので、本当に本は昔からたくさん持ってたんですよねぇ。
わたしの本棚2004 
http://www.hiyoko.tv/sweets_roses/gallery/book.html

(9/3)追記:5年前にはすでに今とほぼ同じようなラインナップ。
わたしの本棚2010
http://hiyoko.tv/journal/log/think/eid1715.html

しつこいようですが、文芸書になかなか大枚払えない私も、ムック類に1500円くらい払うのは抵抗なかったようで、私が本屋さんで主に買っていたのは、インテリアやガーデニングの雑誌やムック、習っていた絵画の美術書関連(これが高い。安くて4000円くらいする。今思うと、よく買ったよねーって思う)などが多かったようです。

小説は持ち歩いて読みたいのもあって、今も昔もやっぱり文庫が好きです。でも表紙や装幀が美しいと、つい単行本で買ってしまったものもあるので、やっぱり装幀は大事です。私も選ばれる装画を描けるようにならねば。


              


昔は、本屋さんに行くとワクワクしました。ああ、どんな面白い世界が私を待っているんだろうって。時には合わないなぁ、失敗したなぁと思うこともありましたが、それもまた楽しかったし。当たりを引いた時の、あの何とも言えない高揚感を知ってしまったら、もう一度あの気持ちを味わいたいって思うんですよね。

けれど今は、面白いかどうかわからないものに、1500円や2000円と言う金額を払う余裕を、私だけでなく、日本中が失くしているのも確かで。それにやっぱり、昔の自分は暇だったなぁ、とも思います。これに関しては人それぞれ条件は違うわけですが、ネットや携帯がなかったころって、本当に「ひとり」になれたし、「暇」だったような気がします。今はスマホさえ取り出せば、すぐに人と繋がれて、すぐに時間を潰せて、「ひとりになること」も「暇だと感じること」も、無くなってしまったように感じます。

それでも、今のように手軽に中古の本がいつでも手に入るシステムでなければ、もう少し新刊で本を買う人は増えると思うんですが。だって、本を読むことほど刺激的なことはないですから。

なんてことを考えていたら、とっくの昔に私の書いてることとほぼ同じことを書いてらっしゃる方がいた。。。たはは。
第22回 出版不況の原因について(高島利行)2009-10-27
http://www.pot.co.jp/shuppaneigyouh/

だいぶ前に話題になった「アマゾンの出版社の格付け」話題について。
「アマゾンに怒る日本の出版社」に、本を書く側として思うこと(山田順)2014年11月11日
http://allabout.co.jp/newsdig/c/74249

ちょっと感動した。
石田衣良は、なぜ出版業界に絶望したのか 〜「小説家と過ごす日曜日」に込めた思い
    -  中略  -

作家の印税は1割ですから、500円の文庫本なら50円です。これが音楽の世界なら、CDの印税のほかにもコンサートや物販、握手会のようなイベントがあります。さまざまな収入源があって、アイドルやアーティストを支えてきたんですよね。でも出版の世界は本が売れなかったら非常に厳しい。ご存知のように、大手の出版社でも、給料が2割3割カットになったままです。しかも新人作家は最初の本が売れないと次の本が出せないというような時代になってきています。新しい収益の形を、本当に考えなければならないときになっていると思うんですね。

なので、文庫本の印税50円だけでなく、中間で熱心なファンから少し課金するような形で作家なり出版社なりを支える新しい方法を探していたんです。

    -  中略  -   


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