『アトランティスのこころ』


素敵な映画です。
『スタンドバイミー』『グリーンマイル』と同じ匂いのする映画だともっぱら言われていますが、一人の少年の成長物語です。

でも私は、ちょっと違った視点から見てみました。というか、私の心に残ったのはここでした。

 
              


私は主人公ボビーのガールフレンド・キャロルが、なんて素敵な女の子なんだろう、と彼女の言動のひとつひとつにしびれまくっていました。
まだ11歳の女の子なのに、ボビーをいたわり気遣う姿は、成熟した大人の女性でもかなわぬほどです。きっと未成熟なボビーの母親と対比させる意味で描かれているのでしょうが、それにしても素敵過ぎます。

初めてボビーにキスされたとき、最初は彼女はちょっと怒ったような様子なのですが
「キスしたいのかと思って・・・」
というボビーのちょっと子どもっぽい言い訳を聞いて
「もう一度キスして」
と自分からキスをねだります。バツの悪い思いだったボビーの心はどんなに救われたでしょう。

そして、好きだと告白しようとするボビーの言葉をさえぎり
「私もあなたが好きよ」
と言うキャロル。彼女はボビーが自分を好きなことなど、当然わかってるのです。そんなことをわざわざ男の人に言わせない。

少女が、そして大人の女性の多くが、いかに相手の気持ちを言葉で引き出そうとするか、そしてつまらない駆け引きのために自らの気持ちを伝えられずにいることか。

多くの恋愛本が
「男性に自分から好きだと言ってはいけない」
と書いている言葉に振り回されている女性からすれば、彼女のこの態度は実に潔くかっこいい。それは純粋な少年少女の恋だからできること。そうなのかもしれません。

でもきっと彼女は大人になってもなお、男性の気持ちを汲んで、気遣う会話のできる素敵な女性に成長していたに違いないと思うのです。
彼女のことは、映画の本筋からは、ちょっとずれてしまうので、このあたりで。

物語の本筋は、身勝手な母親と暮らす11歳の少年と、不思議な力を持つ老人との心の交流。
不思議な力を持ちながら、決して不気味ではなく、運命に翻弄されながらも、人生をあきらめず、人に対して温かい気持ちを持ち続けることを忘れない、そんな老人を、アンソニー・ホプキンスが実に素晴らしく演じています。

レクター博士とこの老人を、顔の表情だけで別人のように演じることができるのってすごいです。

DVDに収録されている彼のインタビューによれば、演技をすることとは、リラックスすることなのだとか。演じよう、と力が入ってしまっては、自然に演技をすることなどできない。

そう聞くと、それは数々の経験を経て円熟した末に到達できる段階なのかなぁという気がしますが、ホプキンスによれば、今回競演したアントン・イェルチン(ボビー)も、ミカ・ブーレム(キャロル)も、すでにそれができているそうです。
自分が彼らの年頃には何もできない子どもだったのに、と率直な言葉でインタビューは締めくくられています。

ひと夏の経験で、少年から大人へなっていく、そんな物語は数多いですが、中でもこの作品は珠玉の名作であると言い切っても過言ではありません。

この作品は原作者のスティーブン・キングの少年時代をモチーフにしたものだとか。原作「アトランティスのこころ」は5つの中篇から成る作品で、その中の一部が映画化されたのが本編なのだそうです。いつか読破してみたいなぁ。  


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