トリモノ帖

鳥に関するあらゆるコト。あらゆるモノ。

世界中の鳥好きさんに捧ぐ。
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雷鳥の巣立ち

080405raichou_sweets.jpg鳥の形状をした和菓子と言えば
まず一番に浮かぶのが「ひよ子」

このひよ子、可愛らしい外見と
素朴な味わいとは裏腹に
結構ダークな背景を持つようで。

まずは「ひよ子・東京土産説」と
「ひよ子・福岡土産説」
これは結局福岡だということで
決着がついたようで。


『ひよ子』のもうひとつの
ダークなイメージとは、訴訟事件。

なぜこの『雷鳥の巣立ち』の記事で
『ひよ子』のことを話題にしているか、
といえば、似ているからである。

このお店など、わざわざ説明書きに
「ひよこに似たお菓子」
と書いているほど。

立体商標が10年ほど前に導入され
『ひよ子』が
「『二鶴の親子』というお菓子が
自分そっくりだぴー!」
と訴えたのだ。

結果は、当然と言えば当然だが
『ひよ子』の敗訴に終わったわけだが、
今回このお菓子を見て
「『二鶴の親子』が訴えられるんなら
このお菓子だって『ひよ子』に
似てるんじゃ??」
と思ったのであった。

調べてみると、訴えられてはいないものの
判決の際の例に挙げられた一つではあったようだ。
ちなみに、お味の方はやはり『ひよ子』に似ていて、安心して食べられるおいしさ。

それにしても、鳥の形のお菓子ってこんなにあるんだ!
制覇しなくちゃ!
    
特許界・今日のひとこと
http://www.sanzeebaa.co.jp/tsukihitokoto/hitokoto_200705.html
「ひよ子」の立体商標を巡る争いが決着した。

事の発端は、(株)ひよ子が(有)二鶴堂に対して、
商標権侵害差止請求等の訴訟を提起したこと。

(有)二鶴堂は、対抗手段として先ず、「ひよ子」の立体商標登録無効の
審判を特許庁に請求。
その後、特許庁から請求不成立の審決が下されると、次に、
この特許庁審決の取り消しを求めて知財高裁に提訴した。
そして、知財高裁からは 目論見通り、上記特許庁審決を取り消すとの
判決を引き出した。

これには、(株)ひよ子は黙っていられない。
今度は、(株)ひよ子が上記知財高裁判決を不服として最高裁に上告した。

しかし、先月、最高裁は、(株)ひよ子の上告を棄却。
これにより、当該立体商標を認めないとする、特許庁審決取消の
知財高裁判決が確定した。


この最高裁での判決文を筆者は未だ入手していないので、その内容の詳細は
不明であるが、知財高裁での判決文から推測するに、おそらく
次のようなものだろう。ごく簡潔にまとめてみた。


(有)二鶴堂の「二鶴の親子」はもちろんのこと、「名古屋コーチン」や
「徳太楼のひよ子」など鳥の形状の菓子は、本件商標登録審決の時点より
だいぶ以前から既にありふれていた。
従って、(株)ひよ子の商品である菓子「ひよ子」の形状は
特別独創的なものとはいえない。

また、消費者は、菓子の形状よりもむしろ、包装等に付された菓子の
名称等により商品を識別していた。
つまり、「ひよ子」の「形状」自体は「自他商品識別力」を
有していなかった。

仮に、「ひよ子」の「形状」自体が「自他商品識別力」を有していた
時期があったとしても、(株)ひよ子は類似商品に対して何ら
クレームをつけず、商標管理を怠った。
その結果、その形状が一般化して全国にあまねく普及し、
本件商標登録審決の時点では、「自他商品識別力」を喪失していた。

従って、本件立体商標の商標登録を認めることは、このような「鳥」の
立体形状が独占されることになり、和菓子文化の継承と発展の伝統が
根本から否定されることになる。


要するに、一言で言えば、

本件の「自他商品識別力」は「ひよ子」の「立体商標」によるものではなく
「文字商標や包装」などによるもの、

ということか。

(株)ひよ子は、多額の費用を投じて大々的に宣伝した結果、
「自他商品識別力」を有するに至った、と主張しているが、
その主張は裁判所により一蹴された。


10年前に導入された「立体商標」。
依然、その審査・運用に関しては、試行錯誤の部分もあるのかもしれない。

また、(株)ひよ子が立体商標登録出願した時点では、既に、
複数の類似商品が出回っていたという事実からすると、もともと
当該立体商標の登録には無理があったのかもしれない。

但し、一般論を言うと、今回のケースから1つ、教訓が浮かび上がる。
それは、「商標管理」の問題。

商品を販売する側としては、お金をかけて盛んに宣伝する。
そして、商品は有名になり、よく売れるようになる。
すると、必ずと言っていいほど、類似品が出回る。

ここがポイント。

この時点で、類似品の販売業者に対してクレームをつけるなり、
きちんと商標等を管理しないと、結局、「ひよ子」の二の舞を
演ずることになる。


ところで、今回のケースは、「ひよ子」にとっても大きな
宣伝にはなった。だから、「ひよ子」としても内心は、
それほど残念に思っていないかもしれない。

そして、「ひよ子」はもちろんだが、もしかすると、

「二鶴の親子」「名古屋コーチン」「徳太楼のひよ子」「かもめの水兵さん」
「なかよし小鳥」「アルプス雷鳥」「浅草ぽっぽ」「都鳥の詩」「白千鳥」
「平和のハト」「夫婦かもめ」「ミニ夫婦かもめ」「ひよ太郎」
「土佐のジロッ子」「琵琶湖ぽっぽ」「かいつぶりの浮巣」「宍道湖嫁が島」
「神戸風見鶏の街」「ひなの巣立ち」「らい鳥っ子」「雷鳥の巣立ち」
「朱鷺の巣ごもり」「小鳩豆楽」「都鳥」「ことりの里」「湖の鳥」「うぐいす」

これらの売り上げもみ〜んなアップする?


1957年 4月28日  吉野堂製菓(株)(現・(株)ひよ子)の「ひよ子」の
         製造販売記事が九州菓業新聞に掲載。
1957年11月 4日 「ひよ子」の写真が西日本新聞に掲載。
1960年?月?日 (有)二鶴堂、「二鶴の親子」の製造開始。
1997年 4月 1日  商標法一部改正にて、「立体商標」導入。
  (同日)   (株)ひよ子、指定商品「菓子及びパン」で「ひよ子」の
         立体商標登録出願。
1999年 8月13日 拒絶査定。
1999年 9月16日 (株)ひよ子、拒絶査定不服の審判を請求。
2003年 7月 7日  (株)ひよ子、指定商品を「まんじゅう」に補正。
2003年 8月29日  設定登録。
2004年 3月?日  (株)ひよ子、(有)二鶴堂に対し商標権侵害差止請求等の
         訴訟提起。
2004年 9月10日 (有)二鶴堂、「ひよ子」の立体商標登録無効の審判を
         特許庁に請求。
2005年 7月28日  特許庁、商標登録無効審判の請求は不成立の審決。
2005年?月?日  (有)二鶴堂、上記特許庁審決取消訴訟を知財高裁に提起。
2006年11月29日  知財高裁、上記特許庁審決を取り消すとの判決。
 ? 年?月?日  (株)ひよ子、上記知財高裁判決を不服として最高裁に上告。
2007年 4月12日  最高裁、(株)ひよ子の上告棄却。特許庁審決取消の
知財高裁判決が確定。


平成17(行ケ)10673 審決取消請求事件 平成18年11月29日 知的財産高等裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20061129162739.pdf

判決文中で取り上げられている全国の鳥形のお菓子

焼き菓子
「二鶴の親子」(福岡市・二鶴堂)
「名古屋コーチン」(名古屋市・長登屋)
「かもめの水兵さん」(荒川区・大藤)
「なかよし小鳥」(江戸川区・江戸製菓)
「アルプス雷鳥」(豊橋市・丸三食品)
「浅草ぽっぽ」(台東区・東月製菓)
「都鳥の詩」(豊橋市・丸三食品)
「白千鳥」(かほく市・神保製菓)
「平和のハト」(福井市・大壁羽山堂)
「夫婦かもめ」「ミニ夫婦かもめ」(大船渡市・さいとう製菓)
「ひよ太郎」(江東区・東京宝TSK)
「土佐のジロっ子」(高岡郡・松鶴堂)
「琵琶湖ぽっぽ」(守山市・ジャパンサービス)
「かいつぶりの浮巣」(養老郡・第一物産K12)
「宍道湖嫁ヶ島」(松江市・しまね賓楽庵株式会社TSK)
「神戸風見鶏の街」(豊岡市・鹿野)
「ひなの巣立ち」@姫路銘菓撰(豊岡市・鹿野K1)
「らい鳥っ子」(中新川郡・北海屋菓子舗)
「雷鳥の巣立ち」@越前の詩(敦賀市・つるが幸栄堂)
「朱鷺の巣ごもり」(新潟市・新潟県観光物産株式会社H)
「小鳩豆楽」(鎌倉市・豊島屋)
「都鳥」(岐阜市・合名会社奈良屋本店)
「ことりの里」(八潮市・東月菓子舗)
「湖の鳥」(大津市・大津風月堂)
和菓子
「鶉餅」(虎屋)
「ひよこ」(台東区浅草・徳太楼)
「うぐいす」(松江市・そのや、中央区・寿堂、金沢市・板屋)
「都鳥」(松江市・向月庵)


2008/04/24 Thu
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