引越しで家中にあふれてた積読本をキレイに本棚に並べたら急に焦り出し、読みやすそうな短編集から手を付ける。女流作家の恋愛もの2冊を1週間で読破。知らなかった作家さんでお気に入りを見つけて収穫。逆にどんなに話題の作家さんでも合わない人っている。書評じゃなく自分の目で確かめるって大事。
出版社 : 角川春樹事務所 (2006/5/1)私のお気に入りは「帰れない猫」(井上荒野)。嵐の日の夫婦を描きながら、少しずつ二人の間の謎が暴かれて行く。
発売日 : 2006/5/1
内容(「BOOK」データベースより)
愛をおしえてください。恋の予感、別れの兆し、はじめての朝、最後の夜…。恋愛にセオリーはなく、お手本もない。だから恋に落ちるたびにとまどい悩み、ときに大きな痛手を負うけれど、またいつか私たちは新しい恋に向かっていく―。この魅力的で不思議な魔法を、いまをときめく七人の作家がドラマティックに贅沢に描いた大好評恋愛小説アンソロジー、待望の文庫化。
目次
ドラジェ・・・江國香織
そしてふたたび、私たちのこと・・・角田光代
帰れない猫・・・井上荒野
これっきり・・・谷村志穂
ビルの中・・・藤野千夜
くらげ・・・ミーヨン
手のひらの雪のように・・・唯川恵
迷い込んで帰れなくなった猫のように、入り込んだ迷宮から出られなくなってしまった夫婦の間の想い。
不安定な生活に疲れ、やさしい手をつい取ってしまったけれど、それでも、想いはまだそこにある。
戻りたいと思う妻と、一度決めたら決して後戻りはしない夫。
そんなに単純な構図ではないのかもしれない。戻ったらまた同じことを繰り返すのかもしれない。
人は、すべてを選ぶことなんてできない。
あと好きなのは、角田さんの友情モノ(不倫ばかりしている友人の気持ちを理解するために不倫するって。。。おい、と思うけど)と藤野千夜さんの同じビル内の変人に恋する話(これで恋に落ちる?と思うけど、テンポが良くて読ませてしまう)。
井上さんと藤野さんは他も読んでみたいと思ったけど、Amazonの感想によると「ここに 載せられている作品=その作家の色ではありません。作家さんの雰囲気は、あくまで 参考程度に。(好きだと思って その人個人の本を買って 失望しました。)」とある。誰のことかしらん。
なんて思って、井上荒野さんについて調べたら、椅子から転げ落ちそうになった。
この方の父親も作家で、瀬戸内寂聴さんの不倫相手だったそうで。でも仲が良くて、両親と寂聴さんとの三角関係を小説「あちらにいる鬼」にしたそうで。すごい話!
Amazonの感想に江國さん好きで買ったけど、この作品は不倫だから嫌とある。
そもそも江國さんって不倫モノ、多くない?私は3冊しか読んでないけど「東京タワー」も「枇杷の木〜」も。
「冷静と情熱の間」は不倫じゃないけど、愛人というかパトロンというか、そういう感じの男性を裏切る話だし。
江國さんは、美しくて男性に愛されることが当然の女性が残酷に無邪気に裏切る構図が好きなんだと思う。
唯一の韓国人作家ミーヨンさんのが読みにくくて、そこでしばらくストップしてしまった。小説なんだけど、ヨーロッパの映画を見たような読後感。
出版社 : 新潮社 (2008/11/27)こちらは私は松尾由美さんの「わたしは鏡」が一番好き。「最後の恋」の意味が他とは少し違うから。
発売日 : 2008/11/27
内容
経験してきたすべての恋を肯定したくなる、珠玉の恋愛アンソロジー。
この主人公の誰かに、いつかのあなたがいます。共感度800%!
もはや、少年少女が出会うような、初々しい恋じゃない。
変わらない恋心なんてない、そんなのとっくに知っている。だけど……。
大人になっても「こんなの初めて」ってあったんだ。
すれ違いや別れをくり返してきた彼らだけが知る、「最初で最後」のかけがえのない瞬間たち。
8人の作家が描き出す、経験してきたすべての恋を肯定したくなる珠玉のアンソロジー。
最後の恋、それはつまり、自分史上最高の恋。
目次
春太の毎日・・・三浦しをん
ヒトリシズカ・・・谷村志穂
海辺食堂の姉妹・・・阿川佐和子
スケジュール・・・沢村凜
LAST LOVE・・・柴田よしき
わたしは鏡・・・松尾由美
キープ・・・乃南アサ
おかえりなさい・・・角田光代
松尾さんはSF作家で、恋愛ものはほとんど手掛けていないようだ。
この物語も純粋な恋愛ものというよりは、サスペンスタッチ。
舞台は大学の文芸部。秋の会報の編集長をつとめる主人公の前に現れた謎の原稿。
タイトルも著者名もないその原稿の作者はいったい?という謎解き。
主人公は片思いしている持病持ちでイケメンの高野先輩の作品だと思い込む。
その小説(作中作・主人公が「わたしは鏡」と名付ける)もすごく切なくて良かった。
美容院の鏡、それも壁掛けではなく客が背中を確認するための合わせ鏡がこの小説(作中作)の主人公。鏡は美容院に定期的に来る客に恋をする、という話。
実は、この小説を書いたのは、最初から主人公にやたらと絡む後輩女子。彼女は性同一性障害で、20歳になったら男性として生き直すことになっている。
彼女は(女性である)主人公が好きで、これが女性としての自分の最後の恋だと伝え、その場を去る。主人公は彼女の「彼」としての最初の恋が幸せであるように祈る。
これ、だいぶ前に買って最初の3篇だけは読んだ記憶があった。冒頭の「春太」はすぐにネタがわかったので、意外性はなかったけど楽しめた。阿川さんの姉妹の作品も可愛い。
軽快な感じの中に2本目だけがドーンと重い。谷村さんは「ナナイロ」のほうでは、ビッチでクラブ好きな女の子同志の恋模様や友情を描いているけど、作風が全然違う。
沢村凛さんの「スケジュール」は視点が面白くて、しかも最後そう来るか、という感じで面白かった。
「わたしは鏡」と並んで好きだったのは「LAST LOVE」。登場する男、わかるぅ、という感じ。女性を女神みたいに勝手に理想化して勝手に冷める男っているよね、という感じ。何よりラストがいい。
猫のために一生懸命になる見合い相手に胸がときめいて。最後にようやく主人公の名前が登場する。これ、ドキッとする。うまいなぁ。
名作との声が多い(Amazonで、だけど)角田さんのは、ホントうまい。最後の恋とは慣れ親しんでルーティン化した日々の生活のようなもの。離婚する夫婦も切ないけど、でも切なさなら「ナナイロ」の井上さんの「帰れない猫」に軍配が上がる。私の主観だけど。
こんなのもあるのね。読みたい作家さんがたくさん!
出版社 : 新潮社 (2011/11/28)
発売日 : 2011/11/28
内容
私の恋、更新中。
新たな出会いを受け入れたくなる極上の恋愛アンソロジー。
待望の第2弾!
これで、最後。そう切に願っても、恋の行く末は選べない。大人になるほど、いちばん悲しいことがどんどん誰にも話せなくなる。だけど……。
今なら前より知っている、ままならない心を甘受する方法を。泣きたい記憶を、自分だけのものとして慈しむやり方を。7人の作家が「最高の恋」の終わりとその先を描き出し、またいつか新たな出会いを受け入れたくなる、極上の恋愛アンソロジー。
目次
甘い記憶・・・大島真寿美
ブーツ・・・井上荒野
ヨハネスブルグのマフィア・・・森絵都
森で待つ・・・阿川佐和子
ときめき・・・島本理生
TSUNAMI・・・村山由佳
それは秘密の・・・乃南アサ
出版社 : 新潮社 (2012/5/28)
発売日 : 2012/5/28
内容
男性作家だけの最強メンバーでベストセラースペシャルver.登場。
満足度☆☆☆☆☆☆☆(7ツ星)!究極の恋愛アンソロジー。
男は、とっておきの恋ほど誰にも見せない。本当の恋のクライマックスは、自分の心だけが知っている。忘れられない、忘れたくない気持ちはきっと、ひとりで大切にするものと解っているから──
男たちがどこか奥のほうにしまいこんだ「本気の恋」。7人の作家が描き出すのは、女には解らない、ゆえに愛すべき男心。恋人たちの距離を少しずつ、でも確かに近づける究極の恋愛アンソロジー。
目次
僕の舟 伊坂幸太郎
3コデ5ドル 越谷オサム
水曜日の南階段はきれい 朝井リョウ
イルカの恋 石田衣良
桜に小禽 橋本紡
エンドロールは最後まで 荻原浩
七月の真っ青な空に 白石一文
2020年9月発売の新刊です。
どうぞよろしくお願い致します♡
◇見に行きたい展覧会メモ◇ →展覧会記録■
◆東京◆
◆名古屋◆
生誕150年記念 モンドリアン展
2021年7月10日(土)〜9月20日(月)豊田市美術館
◆大阪◆
原田治 展「かわいい」の発見
2021年7月3日(土)〜8月29日(日)10:00〜18:00 神戸ファッション美術館
https://fashionmuseum.or.jp