がんばっても報われない社会が待っている
(2024/11/13)
調べものをして過去の日記を読み返していたら、2019年に話題になった上野千鶴子さんの東大入学式の祝辞「『がんばっても報われない社会が待っている』東大の入学式で語られたこと【全文】」が出てきた。
特に響いた部分として、以下の部分を引用していた。
「『がんばったら報われる』とあなたがたが思えることそのものが、
あなたがたの努力の成果ではなく
環境のおかげだったこと、忘れないようにしてください。
中略
世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと
がんばりすぎて心と体をこわしたひと...たちがいます。
がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲を
くじかれるひとたちもいます」
これを読んで、そうだこれだ、と思った。
わたしは死に至る病で闘病後復帰してメダルを取ったある競技選手(あえて名前は書かない)がコメントした「努力は必ず報われる」という言葉にずっと違和感を持ち続けてきた。
確かに、病を克服してさらに過酷なトレーニングを積んでメダルを取ったのはすごいことで、わたしなど到底彼女の足元にも及ばない。何も言う資格はない。
けれど、トレーニングを頑張ったのは彼女の努力だけれど、それは彼女が「頑張れる環境」にいたからだ。
彼女のメダルの陰には、彼女と同じくらい能力があって努力もしてきたけれど、家庭その他の事情で競技自体をあきらめざるを得なかった大勢の選手たちがいる。
また、努力し続けてもどうしても結果が出せなかった人もいるだろう。
闘病についても、経済的理由で先端医療を受けられず、亡くなっていった人もたくさんいるだろう。そうしてなくした子を持つ親御さんは、彼女の言葉をどう聞いただろう。
彼女は自分の努力が、どれほど恵まれた境遇の上に成り立つものだったかを、いつか気づく日が来るのだろうか。とはいえ、まだ若い彼女が発した言葉一つを責めるつもりはない。ただそれを異様に持ち上げて美談にすることには違和感しかない。
わたし自身、たくさんのことをあきらめ続けてきた人生だった。わたしが今、こうして自分のやりたい仕事ができているのは、30代で自分の人生を変えたいと強く願ったことに端を発する。
でもそれを、自分の努力の成果だというつもりはない。支えてくれる夫の存在なくしては、今のようにはできていなかっただろう。絵を続けて来られたこと、その環境を許してくれた前夫にもその点は感謝したいと思う。さらには、『虎に翼』のように女性のために戦ってくれた人たちや、わたしに仕事をくださった方々、応援してくれている人たちなど、周りの人たちあってのこと。
自分がどれほど恵まれているか、誰もが日々それを意識すれば世の中はきっと、よりよく変わるような気がしている。(1153文字)
調べものをして過去の日記を読み返していたら、2019年に話題になった上野千鶴子さんの東大入学式の祝辞「『がんばっても報われない社会が待っている』東大の入学式で語られたこと【全文】」が出てきた。
特に響いた部分として、以下の部分を引用していた。
「『がんばったら報われる』とあなたがたが思えることそのものが、
あなたがたの努力の成果ではなく
環境のおかげだったこと、忘れないようにしてください。
中略
世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと
がんばりすぎて心と体をこわしたひと...たちがいます。
がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲を
くじかれるひとたちもいます」
これを読んで、そうだこれだ、と思った。
わたしは死に至る病で闘病後復帰してメダルを取ったある競技選手(あえて名前は書かない)がコメントした「努力は必ず報われる」という言葉にずっと違和感を持ち続けてきた。
確かに、病を克服してさらに過酷なトレーニングを積んでメダルを取ったのはすごいことで、わたしなど到底彼女の足元にも及ばない。何も言う資格はない。
けれど、トレーニングを頑張ったのは彼女の努力だけれど、それは彼女が「頑張れる環境」にいたからだ。
彼女のメダルの陰には、彼女と同じくらい能力があって努力もしてきたけれど、家庭その他の事情で競技自体をあきらめざるを得なかった大勢の選手たちがいる。
また、努力し続けてもどうしても結果が出せなかった人もいるだろう。
闘病についても、経済的理由で先端医療を受けられず、亡くなっていった人もたくさんいるだろう。そうしてなくした子を持つ親御さんは、彼女の言葉をどう聞いただろう。
彼女は自分の努力が、どれほど恵まれた境遇の上に成り立つものだったかを、いつか気づく日が来るのだろうか。とはいえ、まだ若い彼女が発した言葉一つを責めるつもりはない。ただそれを異様に持ち上げて美談にすることには違和感しかない。
わたし自身、たくさんのことをあきらめ続けてきた人生だった。わたしが今、こうして自分のやりたい仕事ができているのは、30代で自分の人生を変えたいと強く願ったことに端を発する。
でもそれを、自分の努力の成果だというつもりはない。支えてくれる夫の存在なくしては、今のようにはできていなかっただろう。絵を続けて来られたこと、その環境を許してくれた前夫にもその点は感謝したいと思う。さらには、『虎に翼』のように女性のために戦ってくれた人たちや、わたしに仕事をくださった方々、応援してくれている人たちなど、周りの人たちあってのこと。
自分がどれほど恵まれているか、誰もが日々それを意識すれば世の中はきっと、よりよく変わるような気がしている。(1153文字)