フィンチャーの世界観にどっぷり浸れる傑作「ドラゴン・タトゥーの女」

一番好きな監督の名を聞かれたら「デヴィッド・フィンチャー」と答えることにしている。
中でも一番好きなのが「ゲーム」だと言ったら悪趣味だと言われるだろうか。
そのせいか、「デヴィッド・フィンチャー」監督で「ドラゴン・タトゥーの女」と聞いて
「またマイケル・ダグラスが悪い女に翻弄される映画か?」と思ったのは否めない。

実際には全然違った内容で、むしろ「ドラゴン・タトゥーの少女」だよねって感じ。
んでも超ド級に面白く、目が離せなかった。
なかなかに刺激の強い映像が続いて、意外な犯人に驚き、そして何より、ラストにビックリ。

こんな終わり方って、アリ?

上記のように、まったく予備知識なしに見たので、見終わった後に調べたら、もともとこの作品は、
スウェーデンの作家スティーグ・ラーソンによる推理小説『ミレニアム』の三部作の一作目なのだね。

ラーソンはジャーナリストとして反人種差別・反極右を掲げており
この「ドラゴン・タトゥーの女」の原題 "Män som hatar kvinnor" は直訳すると「女を憎む男達」で
シリーズ全篇を通して、女性に対する蔑視および暴力(ミソジニー)がテーマとなっている、とのこと。

(ここから先ネタバレあり)

そのためか、本作のヒロインで「ドラゴン・タトゥーの女」であるリスベット(ルーニー・マーラ)は、
後見人である弁護士ビュルマン(ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン)からとんでもなく醜悪な性的暴行を受ける。
それに対してリスベットが報復する場面が痛快。全編を通じてリスベットがホント賢くてカッコイイ。

そして、主人公のミカエル(ダニエル・クレイグ)が依頼を受けて行方を探す富豪の令嬢・ハリエット
(ジョエリー・リチャードソン)も、父や兄から性的暴行を受けていたことが最後に判明する。

序盤は、主人公とヒロインがどう繋がるのか想像もつかず、ワクワクしてみていた。
大富豪が調査を依頼するために、ミカエルの身辺調査をしたのが、天才ハッカーであるリスベットだったというだけで
他にどこに接点があるのだろうと思っていたら、ミカエルの調査が佳境に入り、助手としてリスベットが雇われることに。

リスベットにミカエルが問う。「なんで23歳なのに後見人なんかついてるんだ?」
それに対してリスベットは父を焼き殺そうとしたから、精神障害の疑いをかけられている、と答える。
恐らく、リスベット自身も父親から日常的に暴力を受けていたのだろう。

ものすごく賢いリスベットが時に覗かせる、不安げな表情。
そして、リスベットは、女性の友人とも寝るし、ミカエルにも誘いをかけて寝てしまう。このことは、リスベットが、
父親からコミュニケーションの手段として、寝ることしか教えられなかったことを示唆しているのだろうか。

まるで少年のようなリスベットと一緒にいると、ミカエルはお父さんにしか見えない。
それでも、リスベットは、最初の後見人(脳卒中で倒れたため、後見人がビュルマンに変更になってしまう)に
抱いたのと同じような信頼をミカエルに対して抱くようになり、その結果がセックスなのかぁ。。。。
うーん、病んでいるよねぇ。。。仕方がないのだろうけれども。

(ダニエル・クレイグ→すごいおじさんかと思ったら、設定上もご本人(当時)もまだ42歳だって。
くたびれた中年感はたまらなくかっこいいけど、老け過ぎじゃ。。。)

そんなわけで、ハリエットの件は、二人の協力で無事解決するも、報酬の一部であったミカエルを陥れた実業家への
報復は、依頼主の財力や切り札として持っていた資料をもってしても難しいことが判明する。

ところで、このシリーズ名の「ミレニアム」は、雑誌の名前で、ミカエルとエリカ(ロビン・ライト)の共同経営。
二人は互いに既婚者だが関係を持ち、ミカエルは離婚。エリカの夫も公認で関係を続けているというのが背景にあり。
ミカエルが「ミレニアム」に載せた記事が裁判沙汰になり、敗訴して全財産を失ったところから物語は始まる。

ハリエットの事件が解決しても、自分の状況が好転しないことに肩を落とすミカエル。
そこで、暗躍するのがリスベット。彼女に6クローネを貸してくれと言われたミカエルが、ないと答えても、
ハッキングの天才・リスベットには残高はお見通し。「知っててごめんね」というリスベットがかわいい。

その資金を元に、変装して(美人さんなので、金髪ロングヘアの美女に変身する様子も楽しい♡)、
偽造パスポートを取り、各国で投資をしては資産を移動させる(ようなやり取りをしている)
いったいこの子はこんな技術をどこで身に付けたのか?

リスベットは相手の実業家の仲間として映像に残り、それで何かしらはめられた実業家は失脚。
でも永遠に誰なのかは明かされることもなく、もちろんミカエルもそれがリスベットだとは知らぬまま。
お金を返すリスベットに「早かったね」と言うだけで終わる。

事件が終われば二人に接点はない。
「クリスマスはどうするの?」と尋ねるリスベットに、ミカエルは「娘と会うんだ」とすげもなく答える。

ミカエルにとっては、そもそもリスベットは恋愛の対象ではない。
誘いをかけられた時も、こんなおじさんとしちゃダメだと断る自制心も良識もあるので、
若い彼女に自分はふさわしくないとも思うのだろう。

それでもリスベットは、脳梗塞で倒れた最初の後見人に「友だちができた」とうれしそうに語る。
友だち?友だち、なのかぁ。。。。何度もセックスしてたけど、なぁ。。。

クリスマス、リスベットがミカエルへのプレゼントを準備して部屋の前(?会社の前?)に行くと、
中から腕を組んでミカエルとエリカが出てくる。最初にリスベットが調査したように、二人はずっとそういう関係なのだ。

目を潤ませてしばらく足ちすくむリスベット。ミカエルへのプレゼントをゴミ箱に放り投げると、バイクでその場を去る。

エンディング。。。ええええ〜〜〜〜〜〜〜!!!

もうこれ、続編があると想定された終わり方だよね。
ということで、2018年に続編「蜘蛛の巣を払う女」が制作されている。
しかし、これもまた複雑な話がある。

このシリーズは、スティーグ・ラーソンの遺作で、
「ドラゴン・タトゥーの女」「火と戯れる女」「眠れる女と狂卓の騎士」
の三部作から成る。

ラーソンは5部まで構想しており、4分の3/4まで書き進めていたが、
長年のパートナー・ガブリエルソンとは入籍しておらず
その草稿を出版する権利を持つ者がいないために宙ぶらりんになっていた。
出版社がンノンフィクション作家のダヴィド・ラーゲルクランツに依頼して書かれたのが「蜘蛛の巣を払う女」で
さらに6作目まで出版が決まっているそうだ。

そんなわけで、シリーズ2つ分を飛ばして4つめが次に映像化されたというわけで。
シリーズ全編を通じてミカエルもリスベットも登場するので、続きは見られるらしい。
絶対見なくちゃ!!(主人公の二人は別のキャストになっちゃうけど)

そういえば、この日(家にいる日曜は映画の日と決めている)は「オブリビオン」に続いてこの映画を観たのだけど
ミカエル役のダニエル・クレイグといえば、6代目ジェームズ・ボンドとして知られているが、
彼の2作目「007 慰めの報酬」(ボンドシリーズ22作目)のボンドガールが
「オブリビオン」のヒロインを演じたオルガ・キュリレンコなのね。
奇しくもボンドガールとボンドの映画を立て続けに見たのであった。

ところでこの映画、登場人物多すぎだし、しかも同じ苗字多すぎて、誰これ?状態だった。
原作のWikiみてようやくだいぶわかった。んでもまだ全部じゃない。。。
ミカエル・ブルムクヴィスト(ダニエル・クレイグ)・・・主人公
リスベット・サランデル(ルーニー・マーラ・・・ヒロイン「ドラゴン・タトゥーの女」
ヘンリック・ヴァンゲル(クリストファー・プラマー)・・・依頼主。ヴァンゲル・グループ前会長。
若年のヘンリック・ヴァンゲル(ジュリアン・サンズ)・・・5人兄弟の末っ子。
マルティン・ヴァンゲル(ステラン・スカルスガルド)・・・ヴァンゲル・グループ現会長。リカルドの孫。ゴットフリードの息子。ハリエットの兄。
ディルク・フルーデ(スティーヴン・バーコフ)・・・ヘンリックの弁護士。68歳。
エリカ・ベルジェ(ロビン・ライト)・・・『ミレニアム』編集長兼共同経営者。ミカエルの愛人。
ニルス・ビュルマン(ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン)・・・弁護士。リスベットの後任の後見人。
アニタ・ヴァンゲル(ジョエリー・リチャードソン)・・・ハラルドの次女。セシリアの妹。イギリス在住。
セシリア・ヴァンゲル(ジェラルディン・ジェームズ)・・・ハラルドの娘。
ドラガン・アルマンスキー(ゴラン・ヴィシュニック)・・・警備会社ミルトン・セキュリティーの社長。
グスタフ・モレル警部補(ドナルド・サムター)・・・元警部補。ハリエット失踪事件を捜査した。
ハンス=エリック・ヴェンネルストレム(ウルフ・フリバーグ)・・・ミカエルを陥れた大物実業家
ホルゲル・パルムグレン(ベント・C・W・カールソン)・・・弁護士。リスベットの後見人。脳卒中で倒れた。
プレイグ(トニー・ウェイ)・・・リスベットより3歳年上の親友。身長189cm、体重152kg。
ハラルド・ヴァンゲル(ペル・マイヤーバーグ)・・・ヘンリックの2番目の兄。ナチズムに傾倒。
ペニラ・ブルムクヴィスト(ジョセフィン・スプランド)・・・ミカエルとモニカの娘。16歳。
アンナ・ニーグレン(エヴァ・フリトヨフソン)・・・ヘンリックの身の回りの世話をする家政婦。
ハリエット・ヴァンゲル(モア・ガーペンダル)・・・リカルドの孫娘。40年前に行方不明に。
ビルエル・ヴァンゲル(マーティン・ジャーヴィス)・・・ハラルドの息子。市会議員。
イザベラ・ヴァンゲル(インガ・ランドグレー)・・・ゴットフリードの妻。マルティンとハリエットの母。
グンナン・ニルソン(マッツ・アンデルソン)・・・ヘンリックの雑用係。56歳。ハリエットと仲が良かった。
リヴ(アーリー・ジョバー)・・・マルティンの恋人?
グレーゲル(アラステア・ダンカン)・・・
イサクソン刑事(アラン・デイル)・・・
ミルドレッド(レナ・ストロンダール)・・・
リンドグレーン(アン=リー・ノルバーグ)・・・
トリニティ(レオ・ビル)・・・プレイグらハッカー共和国の仲間。相棒ボブ・ザ・ドッグと仕事をこなす。
ミリアム・ウー(エロディ・ユン)・・・リスベットの親友。名の知れたレズビアン。時々肉体関係を持つ。
アニカ・ジャンニーニ(エンベス・デイヴィッツ)・・・ミカエルの3歳年下の妹。弁護士。
ドラゴン・タトゥーの女
The Girl with the Dragon Tattoo

監督    デヴィッド・フィンチャー
脚本    スティーヴン・ザイリアン
原作    スティーグ・ラーソン
製作    ソロン・スターモス
      オーレ・センドベリ
      スコット・ルーディン
      セアン・チャフィン
製作総指揮 アンニ・ファウルビエ・フェルナンデス
      ミカエル・ヴァレン
      スティーヴン・ザイリアン
出演者   ダニエル・クレイグ
      ルーニー・マーラ
      クリストファー・プラマー
      ステラン・スカルスガルド
      スティーヴン・バーコフ
      ロビン・ライト
      ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン
      ジョエリー・リチャードソン
音楽    トレント・レズナー
      アッティカス・ロス
撮影    ジェフ・クローネンウェス
編集    カーク・バクスター
      アンガス・ウォール
製作会社  MGM
      オプティマム・リリーシング
      BBCフィルムズ
      ベータ・シネマ
      レラティビティ・メディア
      スコット・ルーディン・プロダクションズ
      イエロー・バード
配給    アメリカ合衆国 コロンビア映画
      スウェーデン ソニー・ピクチャーズ・リリーシング
      日本 ソニー・ピクチャーズ
公開    アメリカ合衆国 2011年12月20日
      スウェーデン 2011年12月21日
      日本 2012年2月10日
上映時間  158分
製作国   アメリカ合衆国、スウェーデン、イギリス、ドイツ
言語    英語
製作費   $90,000,000[1]
興行収入  $232,617,430[2]
      12.5億円(日本)
次作    蜘蛛の巣を払う女

                  


食べたものの記録:6/4(火)〜6/6(木)
ホットサンド&炊き込みご飯&夜中にシリアル生活、継続中。
冷やし中華はじめました。今年はキュウリもトマトもたくさんあってウレシイ。
去年はキュウリが高くて買えなかったからねぇ。酷暑だったからねぇ。
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2015年10月発売の実話エッセイ。アトピーって痒いだけの病気じゃないんです。

アトピーの夫と暮らしています



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◇見に行きたい展覧会メモ◇ →展覧会記録■

◆東京◆
ユーモアてん。/SENSE OF HUMOR
2019年3月15日 (金) - 2019年6月30日 (日) 21_21 DESIGN SIGHT
http://www.2121designsight.jp/program/humor/index.html

「うつろひ、たゆたひといとなみ」 湊 茉莉展
2019.3.28(木)〜 6.23(日) 銀座メゾンエルメス

トム・サックス ティーセレモニー
2019年4月20日[土]─ 6月23日[日] 東京オペラシティ アートギャラリー

The Nature Rules 自然国家:Dreaming of Earth Project
2019年4月13日[土]〜2019年7月28日[日] 原美術館

第373回企画展 井上嗣也展 Beginnings
2019年5月14日(火)〜2019年6月26日(水) ギンザ・グラフィック・ギャラリー

台所見聞録−人と暮らしの万華鏡−
2019年6月6日(木)〜2019年8月24日(土) 
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ジョン・ルーリー展 Walk this way
2019 年4月 5日[金]− 7月 7 日[日] ワタリウム美術館

キスリング展 エコール・ド・パリの夢
2019年4月20日(土)– 7月7日(日) 東京都庭園美術館

ショーン・タンの世界展
2019年5月11日(土)〜7月28日(日)ちひろ美術館東京
http://www.artkarte.art/shauntan/

原田治 展 「かわいい」の発見
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2019年7月13日(土)〜9月23日(月・祝) 世田谷文学館

バスキア展
2019年9月21日(土)〜11月17日(日)森アーツセンターギャラリー

ミナ ペルホネン/皆川明 つづく
2019年11月16日(土)〜2020年02月16日(日)東京都現代美術館

みんなのレオ・レオーニ展
2019年7月13日(土)〜9月29日(日)東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館

◆名古屋◆
クリムト展 ウィーンと日本1900
2019年7月23日(火)〜10月14日(月・祝)豊田市美術館
https://klimt2019.jp/

ムーミン展
2019年12月7日〜2020年1月末 松坂屋美術館

サラ・ベルナールの世界展
2018年11月23日(金・祝)〜2019年3月3日(日)堺 アルフォンス・ミュシャ館
2020年1月頃まで、全国巡回予定。
https://www.sunm.co.jp/sarah/

木梨憲武展 Timing‐瞬間の光り‐
2019年9月13日(金)〜10月20日(日)松坂屋美術館

不思議の国のアリス展
2020年4月18日(土)−6月14日(日)名古屋市内の美術館(未定)
http://www.alice2019-20.jp/

◆大阪◆
ヒグチユウコ展 CIRCUS(サーカス)
2019年6月15日(土)〜9月1日(日) 神戸ゆかりの美術館

クマのプーさん展
2019年4月27日(土)〜6月30日(日)あべのハルカス美術館
https://wp2019.jp/

ルート・ブリュック 蝶の軌跡
2019年9月7日(土)〜10月20日(日)伊丹市立美術館
https://rutbryk.jp/

ショーン・タンの世界展
2019年9月21日(土)〜10月14日(月・祝)美術館「えき」KYOTO
http://www.artkarte.art/shauntan/


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