1本目は「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」昨年亡くなった三浦春馬さんが出演したことでも話題になった作品。
そして2本目はアメリカ映画「ライフ」。今や世界の「ケンワタナベ」となった渡辺謙さんとともに「ラストサムライ」で世界に打って出た真田広之さんが登場。一見何もつながりのないこの二つの映画、今この時代に見ることで我々に何を伝えてくれるのだろうか。
2020.12.04 Friday
切ない。どこを切り取っても切ないのだ。
本作は障がいという重いテーマを扱っているにもかかわらずコメディ要素の強い映画である。でも泣けてしまう。
ラストは主人公の死後、皆で主人公を囲んでの回想シーン。
でも本当にもういないのは主人公ではなく「田中くん」
田中くんの存在は、鹿野へのアンチテーゼとして描かれる。
難病を持つ障がい者で、来年生きられるかどうかもわからないけれど、自己肯定感が強く、前向きに夢をもって生きる鹿野と
北大医学部に通う高学歴で高身長のイケメンなだけでなく、大病院の御曹司というパーフェクトな肩書。
それでいながら、自分はダメな奴で何もできないだと悩み「患者と向き合える自信がない」と医者をあきらめ、医学部の退学まで考える田中くん。
そんな彼に鹿野が言う「人間できることよりもできないことの方が多い」という言葉が印象的だ。
よく言われることだけれど、幸せか不幸か、ってことは目に見える条件だけでは決まらない。
その人の心持で決まるものなのだ。
春馬くん、すごいな。いつもちょっとダサい服装で、(白衣着てるときは無茶かっこいいけど)かなり気弱でやさしい田中くんを見事に演じていた。
でも実はこの映画の田中くんは、春馬くん自身の素に一番近いのではないかとも感じた。こんな風に「自分は何もできないやつ」だって悩んでいたのではないか。そしてだれにも頼ったり甘えたりできなかったのではないか。
大泉さんはこの映画を撮影してから心境に大きな変化があったそうだ。
「出来ない事は人を頼ってもいいんだ」と、思うようになりました。本当にその通りだ、と思う。同じようなメッセージを春馬くんは感じられなかったのだろうか。それがとても残念。
人に迷惑をかける事を恐れる必要はないんだと思うようになりました。
この映画は鹿野さん(をはじめとする障がい者)が、自由を勝ち取るための戦いを描いた映画であるともいえる。
このところよく言われる自己責任論。何かあれば「自助」を良しとする世界は、ますます障がい者にとって住みづらい世界となるだろう。けれどどんな人だって誰かに助けを求める場面は必ずある。助けを求めることになった原因をすべて本人のせいにして自己責任を問いただせば、それは誰にとっても生きづらい社会となるはずなのだ。
障がい者だって幸せになっていい。生活を楽しんだっていい。
病院のベッドに縛られて長生きするくらいなら死んだほうがいい。
家族でないと医療行為が許されないというけれど、ボラはみんな自分の家族だ。彼らの手で死ぬようなことがあっても自分は文句など言わないと。
鹿野は母親に強い愛情を抱きながらも拒絶する。そこにも「何かあれば血族内で解決するのが当たり前」という自己責任論に対抗しているのだ。最後に母に残す手紙が泣ける「僕は母ちゃんに自分の人生を生きて欲しかった」それは鹿野の母への愛情の示し方なのだ。
母が当然と言われながら鹿野の世話をすれば、ひとりで負担を背負うこととなる。けれど鹿野の生活は500人ものボランティアによって支えられた。それなら不可能ではない。誰もが少しずつボランティアを普通に行えば、鹿野とボラたちのような関係性が築けるのではないだろうか。
この鹿野さんに学ぶことは本当に多い。だからといって教育的な要素はどこにもないのに。
見るだけで自分を許せるようになる。楽になれる。そんな映画が、かつてあっただろうか。
素晴らしい映画、素晴らしい原作。ホント、見て良かった。
この映画でますます高畑充希ってかわいいって思った。美人じゃないんだけどね。声がいいし、目がいい。口元もいい。
こりゃ鹿野じゃなくても惚れるよね。
『こんな夜更けにバナナかよ』で大泉洋が見せる天性の「人たらし」感
橋本達典 編集:矢澤拓(CINRA.NET編集部)
筋ジストロフィーを患い、20歳まで生きられるかどうかと言われながらも40年以上の人生を歩んだ主人公の鹿野を、大泉がまさに「ハマり役」といった芝居で見せる。
人の助けがないと生きていけないにもかかわらず、病院を飛び出し、風変わりな自立生活を始める鹿野靖明、34歳。自ら大勢のボランティアを集め、わがままし放題。しかもずうずうしくて、おしゃべりで、ほれっぽい。
最初はそんな鹿野に振り回されていたものの、真っすぐに、自由に生きる彼の姿に、周りの人々は次第に影響を受けていく——。
鹿野を演じた当の大泉も「これまで“人に迷惑をかけないで生きる”ことが唯一のポリシーでしたが、それが大きく揺らいだ。果たしてそれがそんなに大事なことなのか、と。自分一人ではできないことなら人に助けてもらえばいいのではと。人に頼ることを恐れすぎてはいけないとも思うようになりました」(『LEE』2018年12月27日配信)と、自身の心境に変化があったと語る。
大泉は鹿野になりきるべく減量し、視力を落とすコンタクトを装着した上に眼鏡をかけるなどの役づくりに挑み、実際に存命のときの鹿野さんに触れた人々にも鹿野さんそのものと思われるようになったそうだが、こうした入魂の取り組みに加え、関係者いわく「口から生まれたような、天性の人たらし」という実際の鹿野靖明と似たところが大泉にもあるように思う。
「人たらし」と聞くとよくないイメージを持つ人もいると思うが、裏を返せば「愛され力」とも言えるだろう。
(途中ところどころ省略)
今日、これから、 (大泉 洋) - CUE DIARY - CREATIVE OFFICE CUE Official website
三浦春馬くんと、豊平川の河川敷を毎日のように一緒に走った事が昨日のことのように思い出されます。
自分は特に痩せなきゃいけない役でもなかったのに、僕と一緒にずっと走ってくれました。
本当に真面目で、いいやつで、素晴らしい役者でした。
12月11日には彼の最後の主演映画、『天外者』が公開になります。
今日のこんな夜更けにバナナかよと共にどうぞこの映画も皆さんの心に刻み込んで下さい。
彼は数々の作品とともに僕らの胸の中で永遠に生き続けてくれるはずです。
監督 前田哲
脚本 橋本裕志
原作 渡辺一史
「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」
製作 石塚慶生(企画・プロデュース)
飯沼伸之 寺西史
製作総指揮 吉田繁暁 伊藤響
出演者 大泉洋:鹿野靖明・・・主人公。難病・進行性筋ジストロフィーを抱え、札幌市に在住
高畑充希:安堂美咲・・・新人ボラ。久と喧嘩別れし鹿野の助言で教育大入試をめざす
三浦春馬:田中久・・・北大学医学部学生ボラで大病院の御曹司。美咲の恋人
萩原聖人:高村大助・・・鹿野と同世代で付き合いの長いベテランボラ
渡辺真起子:前木貴子・・・気さくで慕われるベテランボラ
宇野祥平:塚田心平・・・鹿野に忠実なボラ
韓英恵:泉芳恵・・・ボラに協力する看護師
竜雷太:鹿野清・・・鹿野の父。頑固で不器用なりに鹿野を愛する
綾戸智恵:鹿野光枝・・・鹿野の母。鹿野に拒絶されても愛情を絶やさない
佐藤浩市:田中猛・・・久の父。久のボラ活動には反対だが鹿野を病院に受入れる
原田美枝子:野原博子・・・鹿野の主治医。厳しいが鹿野を心から心配する
音楽 富貴晴美:由美
主題歌 ポルノグラフィティ「フラワー」
撮影 藤澤順一
編集 西潟弘記
制作会社 松竹撮影所
製作会社 「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会
松竹 日本テレビ放送網
配給 松竹
公開 2018年12月28日
上映時間 120分
製作国 日本
言語 日本語
興行収入 11.4億円
そして深夜に見たこの映画。意外に面白かった。
この先はネタバレもあり。
深夜枠の映画ということもあり、それほど期待していなかっただけに。
オットが「あ、真田さんが出てる」というので、思わず見ちゃったという感じ。真田さんが全然チョイ役じゃなくて、かなり重要な役どころで、最初に死なず、死に方もカッコイイところがうれしい。
この物語、軌道を外れた火星探査機の回収というミッションに無事成功した国際宇宙ステーション(ISS)内が舞台。探査機に収められたサンプルを分析すると、地球外生命体の存在を示すものであることが判明。これは喜ばしいニュースとして地球に伝えられ、この生命体の名前が公募され「カルビン」と命名される。
宇宙生物学者のヒューはこの生命体に異常な関心と執着を示す。この映画、ほとんどのクルーは自己犠牲と勇敢な精神を持った人たちだが、このヒューだけはひとり自分の想いに忠実だ。また、彼が地上では車いすを使用する障がい者であることも途中で明かされる。この映画の舞台となる「社会」では「障がい者であっても宇宙飛行士になれるということが当たり前」であるという前提でこの映画を見るとまた違った「世界」が見えてくる。
数時間前に見た「こんな夜更けにバナナかよ」の余韻とともに、障がい者が生きやすい社会とはこのような職業の自由な選択肢のある社会に他ならないと感じるのだ。
しかしヒューが初期のカルビン(とっても愛らしい)を愛でている間、生物学の知識も映画に関する予備知識もない私ですら、不穏な感じは否めなかった。絶対こいつそのうち暴走する。果たしてその通りとなった。きっかけは、ヒューがラボの環境設定を間違えたことでカルビンが驚き、冬眠状態になったことだ。その対応が実にまずかった。電気ショックを与えたことで、カルビンはヒューを敵とみなし、攻撃を始めたのだ。同じラボ内にかわいいマウスがいたのだが、最初の犠牲者となり、彼が固定されたままエライことになるのが、クルーたちの行く末を暗示し、暗澹たる空気に包まれる。
もうそこからは恐怖の連続。エリート集団である6名のクルーたちは当然非常に優秀なのだが、恐るべきカルビンの知能はそれを上回る。カルビンの考えを予想し対策を打とうとするときにはすでに遅し。対応は後手後手に回り、助けに向かったり、逃げ遅れたりしたクルーがどんどんカルビンの魔の手に落ちる。
ところで、このクルーたちの個人的な背景はほとんど描かれていないにもかかわらず、我らが真田さんにだけ「娘が生まれた」というニュースが描かれる(彼はタブレットで娘の誕生の瞬間に立ち会う)。だからこそ、愛する愛娘にひとめ会いたいという想いから誰よりも帰還を願うというシチュエーション=死亡フラグともいえるのだが。
その後地球との交信も途絶えコントロール不可となり、宇宙ステーションは大気圏に突入する。しかしカルビンを地球に入れることだけは、何としても阻止せねばならない。それが検疫官であるミランダやクルーたちに与えられた最大の役割なのだ。宇宙ステーションからの救難信号を受けて地球から飛んできたソユーズ宇宙船がドッキング。その目的は救援ではなく、地球から遠ざけるというもの。
最終的には主人公で医者のデビッドと検疫官のミランダだけが残される。再び大気圏外に押し出された時のトラブルでステーション内の環境は悪化し、極寒の中ふたりは1人乗りの脱出用ポッドに乗って脱出することを思いつく。1基にはミランダが乗って地球に帰還、もう1基にはデビッドが乗りカルビンをおびき寄せ宇宙の果てへと道連れにすることとなる。
この後は賛否両論わかれる(私的には秀逸な)ラスト。それぞれのポットが宇宙へと飛び立ち、ひとつは地上の海に落下。中国人らしき漁師たちが近づいて行くと、中にはカルビンに食われる寸前のデビッドの断末魔の叫び「開けるな!」。
えええええぇぇぇぇぇっっっっ!!こっち??
中国人たちに言葉は通じず、彼らが好奇心の赴くままポッドのハッチを開ける。その頃トラブルの起きたミランダのポッドはぐるぐる回りながら宇宙空間へと飛んでいくのだった。ザ・バッドエンド。面白かった!
ところで、この週末、日本の探査機「はやぶさ2」のカプセルが無事地球に帰還したことが話題となった。オーストラリアに着地したカプセルをチームが回収。今後、飛行機で日本に運ばれるカプセルには小惑星の砂が入っているとみられているそうで。。。まさか、地球外生命体はいないよね?とつい思ってしまう。。。このタイミングでこの映画!
ところで、この映画はリアリティに徹底的にこだわったそうで。クルーたちの動きなどは本当に自然で素晴らしかった。もちろん演技も。期待以上の良作だった。
ライフ Life
監督 ダニエル・エスピノーサ
脚本 レット・リース ポール・ワーニック
製作 デヴィッド・エリソン ダナ・ゴールドバーグ
ボニー・カーティス ジュリー・リン
製作総指揮 ドン・グレンジャー ヴィッキー・ディー・ロック
出演者 ジェイク・ジレンホール:デビッド・ジョーダン(医者)
レベッカ・ファーガソン:ミランダ・ノース(検疫官)
ライアン・レイノルズ:ローリー・アダムス(航空エンジニア)
真田広之:ショウ・ムラカミ(システム・エンジニア)
アリヨン・バカレ:ヒュー・デリー(宇宙生物学者)
オルガ・ディホヴィチナヤ:エカテリーナ・“キャット”・ゴロフキナ(司令官)
音楽 ヨン・エクストランド
撮影 シェイマス・マクガーヴェイ
編集 フランシス・パーカー メアリー・ジョー・マーキー
製作会社 スカイダンス・プロダクションズ
配給 アメリカ合衆国:コロンビア映画
日本:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
公開 アメリカ合衆国 2017年3月18日(SXSW)
アメリカ合衆国 2017年3月24日
日本 2017年7月8日
上映時間 104分
製作国 アメリカ合衆国 イギリス
言語 英語
製作費 $58,000,000
興行収入 世界の旗 $100,541,806
アメリカ合衆国 $30,234,022
日本 1億7000万円
2020年9月発売の新刊です。
どうぞよろしくお願い致します♡