映画「鍵泥棒のメソッド」

157854_02.jpgkagidorobou64_large.jpg120814000002-1.jpg172827_01.jpgo1080154814699416623.jpgo0480057712312898078.jpg2021.01.30 Saturday
映画「鍵泥棒のメソッド」(2012年)を見た。ひさびさの邦画。主題歌を大好きな吉井さんが歌っているので映画自体は知っていたのだけど、まさかこんな傑作とは。めっちゃ面白かった。これは見ないと損。主演がなんと堺雅人と香川照之というあの半沢コンビ。1本目の「半沢直樹」の前年公開作品なのだ。

なんといっても冒頭の人物描写が秀逸。そこから「面白そう」「どうなんるんだろう」とワクワクさせ、展開も全く裏切らない。ヒロイン・広末涼子やその家族のキャラがいい味出している。個人的には広末の美しさだけで+30点くらいいける。

コメディ要素あり、謎解きありだけでなく映画全体に、仕事観・恋愛観・人生観がじわじわ染み出している。成功する人は「成功のメソッド」を知らず知らずのうちに実践している。そしてやっぱちゃんとしてるわ、と思う。。。これ見て思わず「掃除しよう」と思った人は多いのではなかろうか。

その「成功」に本当に必要なものは何?

映画は見ている人にそんな問いをぶつけてくる。その問いには映画の中で明快な答えも出ているのだけど。

(ここからネタバレあり)

主人公・桜井(堺雅人)は35歳の売れない役者で、エキストラのバイトをしながらボロアパートに住み、失恋して自殺しようとして失敗する。桜井はある日、伝説の殺し屋・コンドウ(香川照之)が銭湯で転倒して気を失った際に、コンドウの荷物からカギを盗む。そこから、記憶を失ったコンドウと入れ替わってお互いの人生を生きることとなる。

そこに絡むのが、雑誌「VIP」編集長であるヒロインの香苗(広末涼子)。とにかく生真面目で、しっかり計画を立てないと何もできない不器用ぶりが冒頭から描かれる。余命短い父のために年内に結婚するという目標を立てて、相手探しを始める彼女と桜井となったコンドウがひょんなことで出会う。

桜井となったコンドウは、「桜井としての自分」を取り戻そうと、従来の几帳面さで努力を重ねていく。その中で、なぜか役者として若干頭角を現し、ヒロインに愛されるようになる。

反面、コンドウとして生きることになった桜井は、コンドウが仕事のために用意している身分証明書を利用して、様々な人物になり切る。役者を離れた桜井が別人として生きるために必要な要素が「演技」だという皮肉。

そんな中で、香苗の父(小野武彦)が死去する。家族に「私は金銭的に成功したが、そんなものはどうでもいい。何より大切なのは愛する妻と娘たちだ」というメッセージを残して。(ここちょっと泣ける)

葬式後に香苗が父の好きだった音楽をコンドウに聴かせた途端、彼は今までの記憶を取り戻してしまう。

ちょうどその頃、桜井は殺害依頼された女・綾子(森口瑤子)を、依頼人のヤクザ(荒川良々)を裏切って逃がそうとしたのがばれてピンチに。そこへ戻ったコンドウが、自分は殺し屋ではなく、殺したふりをして逃がすのが仕事だと言う。

その人生の中で紆余曲折あったコンドウが、桜井に告げる「助けてやる代わりに、おまえの人生はもらった」に告げる言葉が重い。「最初の結婚は金がなくて失敗した」とのちに語るコンドウ。その結果金銭面ではコンドウは成功した。そんな成功者・コンドウの人生よりも、ボロアパートに住んで香苗に愛される桜井としての人生に「真の幸せ」を見出したからこその言葉だろう。

依頼人の裏を掻くために、二人で桜井を殺すふりを練習する際の会話が面白い。35までずっと演劇の世界に身を置いていた桜井より、最近勉強を始めたコンドウのほうが演技論を理解しているのだ。コンドウに「おまえはどの本も8ページ目までしか読んでない」と指摘される桜井のダメっぷり。

その後すったもんだあり、コンドウは渾身の演技で依頼人をだますが、綾子の家で打った桜井の三文芝居のせいで依頼人を怒らせてしまう。しかし、ここで居合わせた香苗の意外な活躍で、事件は一気に解決する。最初不釣り合いとも思えた香苗の職業が、ここで生きて来るのだ。(さらに少し前に伏線がある)

そこから一気に大団円へ。コンドウは綾子を愛人の元へ連れて行こうとするが、綾子にとって愛人は単なる金ずるで、行く気はさらさらない。香苗は自宅(豪邸)の前の車内で、コンドウのノートを読み「胸をキュンッ」とさせ、コンドウへの愛情を自覚する。そこへ戻って来たコンドウ。抱き合う二人と、コンドウの車内でタバコをふかす、いかにもやさぐれた綾子との対比が面白い。

一方、どうしようもないダメ人間だったけれど、一連の出来事で最後まで逃げずに頑張った桜井にも、恋の予感が訪れる。

何者にもなれない、冴えない桜井が、少しだけ輝きを増した結果、といえるのではないだろうか。そこを演じ分けている堺雅人の演技もやっぱりあっぱれ、なのである。劇中の三文芝居をする「下手な演技」もさすが。

この映画、見た目は冴えない中年である(しかも無理やり35歳の若作りをさせられる)コンドウが魅力的に描かれ、主役の桜井を食ってしまっている。さすが香川照之のなせる業、ではあるが、それと同時に「成功した人の持つ輝き」を記憶を失ってもなお、コンドウが持ち続けていた、ということだろう。

《画像一番下》
内田監督に吉井さんが「次は俳優として使ってください」と言ったことがきっかけで実現した超短編作品。「鍵泥棒のメソッド」の主題歌「点描のしくみ」というタイトルの映画の予告編としてつくられ、その主題歌は名曲「Hearts」。これよかったよ。相武紗季の「あんた、おんな殴れるんだ!」ってセリフが忘れられない。

はじめて日本人監督で「この監督の作品全部見たい」と思った。この監督の作品をコンプリートすると同時に、良品だという韓国版「LUCK-KEY/ラッキー」中国版「ENDGAME」も観なければ。


                
鍵泥棒のメソッド
何事も計画を立ててからでないと行動出来ない水嶋香苗が新たに立てた計画は、目標の期日までに相手を見つけ結婚するというものだった。また、法外な報酬で仕事を請け負う凄腕の殺し屋『コンドウ』こと山崎信一郎は、仕事を遂行した際に僅かな返り血を受け、手近な浴場へと車(クライスラー・300)を走らせる。そして、計画性皆無の三文役者桜井武史は人生に行き詰まって自殺を図るが失敗し、おもむろに開けた財布に銭湯のタダ券を発見する。

桜井は出掛けた銭湯で、分厚い財布を持つ羽振りのいい山崎をチラ見する。その後、風呂場で山崎が足を滑らせ失神すると、桜井はそれに乗じてロッカーの鍵をすり替える。山崎は意識不明で病院に搬送されるが、頭を打ったショックで記憶を無くしており、所持品から自分を『桜井武史』だと思い込んでいた。桜井は山崎の車を乗り回し、思い付く事に財布の金を使い、山崎の家にまで上がり込む。家を物色すると、偽造免許や拳銃など山崎の仕事道具が続々と出てくる。

退院の日、記憶喪失に困惑する山崎は香苗と出会う。良心的な香苗はその日以降、山崎の世話を焼くようになる。成り行きで『コンドウ』を演じる桜井は、報酬受け取りのため依頼人と会い、更なる依頼を受け負わされるのだった。自分を売れない俳優だと思い込んでいる山崎は、真剣に芝居に取り組みだす。

桜井は依頼を受けて以降、標的となる人物に関する調査を積極的に行うようになるのだが、その行動は全く別の目的のために行われていたのだった。香苗は山崎と接するにつれ、共通点の多さや真面目な性格、向上心や努力する人柄に触れ、遂には山崎に結婚を申し込む。そんな日々の中、とうとう山崎に記憶の戻る時が訪れる。
監督      内田けんじ
脚本      内田けんじ
製作      深瀬和美、赤城聡、大西洋志
製作総指揮   藤本款、和田倉和利
出演者     堺雅人・・・桜井武史:元劇団員の35歳。銭湯でコンドウの鍵を盗み、殺し屋として生活。
        香川照之・・・コンドウ / 山崎信一郎:殺し屋。銭湯で転んで記憶を失い桜井として生活。
        広末涼子・・・水嶋香苗:雑誌編集者の女性。35歳。年内になんとか結婚しようとする。
        荒川良々・・・工藤純一:コンドウに社長と愛人の殺害を依頼したヤクザ。
        森口瑤子・・・井上綾子:工藤に殺害された社長の愛人。
        小野武彦・・・水嶋徳治:香苗の父。病で余命幾ばくも無い。
音楽      田中ユウスケ
主題歌     吉井和哉 「点描のしくみ」
撮影      佐光朗
編集      普嶋信一
製作会社    「鍵泥棒のメソッド」製作委員会
配給      クロックワークス
公開      日本 2012年9月15日
上映時間    128分
製作国     日本
言語      日本語
興行収入    6億円
第36回日本アカデミー賞
 ・最優秀脚本賞:内田けんじ
 ・優秀主演男優賞:堺雅人
 ・優秀助演男優賞:香川照之
 ・優秀助演女優賞:広末涼子
第55回ブルーリボン賞
 ・監督賞:内田けんじ
 ・助演女優賞:広末涼子
第17回日本インターネット映画大賞
 ・助演女優賞:広末涼子
第37回報知映画賞
 ・作品賞
第63回芸術選奨文部科学大臣賞及び同新人賞 映画部門
 ・大臣賞:内田けんじ
第86回キネマ旬報ベスト・テン
 ・日本映画脚本賞:内田けんじ
読者選出作品賞
 ・読者選出監督賞:内田けんじ
第25回日刊スポーツ映画大賞
 ・監督賞:内田けんじ
第15回上海国際映画祭
 ・最優秀脚本賞:内田けんじ
第34回ヨコハマ映画祭
 ・脚本賞:内田けんじ
第32回ハワイ国際映画祭
 ・作品賞
第22回日本映画批評家大賞
 ・作品賞

                


210130_1289_n.jpg2021.01.30
NHKで放送された山口百恵の引退コンサート見て号泣。当時から大好きで40年経ても歌える自分に驚き。改めて聴いても声が良い。囁くように歌う声からバーンと張るところまで表現の幅が豊か。特に「秋桜」なんて涙なしでは聴けない。年に一枚アルバムだけでいいから音楽活動続けて欲しかったなんて思う。

百恵ちゃんは演技も良くて女優としてもきっと大成した人。とにかくこの時点でまだ21歳だったわけで。こんな21歳他にいる?この貫禄と覚悟。百恵ちゃんがこんなにたくさん話すのをはじめてみた。多くの人の期待を肌で感じながら自分の生き方を貫く覚悟。21歳でここまで重い決断して40年以上貫けるって。

歌手としても女優としても一流でありながら、妻として夫を支えて大成に導き、母として二人の息子も立派に育て上げ、主婦として趣味も玄人の域まで楽しんだ。なんてすばらしい人なのだろうと改めて思う。客席には聖子ちゃんカットの女性が並んで、すでにアイドルの世代交代は始まっていたのも興味深い。


                


210130note_hina1.jpg2021.01.30 Saturday
落ち込んでる人に向けて、noteに短いコラム?エッセイ的なのを書いた。

2日くらい前、自分自身が気が狂いそうに落ち込んでいて、これ書いて落ち着いたというオチつき。

誰にでもある「まぁるい世界」|
陽菜ひよ子 / イラストレーター&文筆家&漫画家
@hina_hiyoko #note

https://note.com/hina_hiyoko/n/ne7767e68a196


                



2020年9月発売の新刊です。
どうぞよろしくお願い致します♡



                  


◇見に行きたい展覧会メモ◇ →展覧会記録■

◆東京◆
河鍋暁斎の底力
11月28日(土) - 2021年2月7日(日) 10:00 - 18:00 東京ステーションギャラリー
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202011_kawanabe.html

生きている東京展
2020年9月5日(土)→ 2021年1月31日(日) 11:00〜19:00 ワタリウム美術館
⟨アーティスト⟩島袋道浩/ジャン・ホワン(張洹)/寺山修司/齋藤陽道/JR(ジェイアール)/オラフ・ニコライ/デイヴィッド・ハモンズ/ファブリス・イベール/ナウィン・ラワンチャイクン/バリー・マッギー/マリオ・ボッタ/ナムジュン・パイク
⟨ゲストアーティスト⟩会田誠/渡辺克巳/SIDE CORE
http://www.watarium.co.jp/jp/exhibition/202009/

佐藤可士和展
2021年2月3日(水)〜5月10日(月)10:00〜18:00 国立新美術館 企画展示室1E
https://www.nact.jp/exhibition_special/2020/kashiwasato2020/
https://kashiwasato2020.com/

石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか (※会期が変更になりました。)
2020年11月14日(土)− 2021年2月14日(日)10:00−18:00 東京都現代美術館 企画展示室 1F/地下2F
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/eiko-ishioka/

トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう
2020年10月16日(金) - 2021年3月7日(日) 11:00〜17:30 21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2
http://www.2121designsight.jp/program/translations/

20世紀のポスター[図像と文字の風景]――ビジュアルコミュニケーションは可能か?
2021年1月30日(土)−4月11日(日) 10:00〜18:00 東京都庭園美術館(本館+新館)
https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/210130-0411_ConstructivePostersOfThe20th.html


◆名古屋◆
ショック・オブ・ダリ ― サルバドール・ダリと日本の前衛
2021年1月9日(土)―3月28日(日) 9:30〜17:00 三重県立美術館
https://www.bunka.pref.mie.lg.jp/art-museum/000244842.htm

GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は? GENKYO YOKOO TADANORI
2021年1月15日(金)〜4月11日(日) 10:00〜18:00 愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)
https://www-art.aac.pref.aichi.jp/exhibition/000273.html
https://genkyo-tadanoriyokoo.exhibit.jp/

バンクシー展 天才か反逆者か
2021年2月3日(水)〜5月31日(月)10:00〜20:00 旧名古屋ボストン美術館(金山南ビル)
https://banksyexhibition.jp/

「写真の都」物語 ―名古屋写真運動史:1911-1972―
2021年2月6日(土)〜3月28日(日) 9:30〜17:00 名古屋市美術館
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/photography

トライアローグ
2021年4月23日(金)〜 6月27日(日)※予定 10:00〜18:00 愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)

岩合光昭写真展 どうぶつ家族/ねこ科
2021年4月3日(土)〜5月16日(日)(予定)10:00〜17:00 岡崎市美術博物館
https://www.city.okazaki.lg.jp/museum/exhibition/openexhibition/p026571.html


◆大阪◆
時間〜TIME BOWIE×KYOTO×SUKITA 鋤田正義写真展
2021年4月3日(土)〜5月5日(水・祝)※会期中無休 10:00〜19:30 
美術館「えき」KYOTO
https://kyoto.wjr-isetan.co.jp/museum/exhibition_2104.html

ミケル・バルセロ展
2021年3月20日(土・祝)−5月30日(日)10:00〜17:00 国立国際美術館
https://www.nmao.go.jp/exhibition/2021/post_miquel.html

おちょやんの役者魂 – 浪花千栄子出演映画特集
2021年1月19日(火) - 2021年2月5日(金) 10:00−19:30 京都文化博物館 3階 フィルムシアター
https://www.bunpaku.or.jp/exhi_film_post/20210119-20210205/
ochiyoyan.jpg




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