映画「ヘイトフル・エイト」と「女神の見えざる手」

210131hateful8_.jpghatefuleightposter.jpgA13M1WDDxtL.jpgt02200311_0340048013602471196.jpg2021.01.31 Sunday
映画「ヘイトフル・エイト」(2015)を見た。鬼才タランティーノ監督らしい作品。好き嫌いはともかくとして、最後まで展開が読めなくて?というか落としどころはどこ?と考えながら楽しんで見られた。

作品自体が長い(167分)とかセリフが冗長だという意見も多いけど、私は楽しめた。人種や宗教観など日本人には背景を理解しづらいために面白みがわからない映画は多いが(私的にはデル・トロの「チェ」がそう)、南北戦争に多少理解があるとわかりやすいのだろう。

黒人と白人、ラテン系との対立なども想像しながら見ると会話も楽しめる。しかし山小屋の紅一点の女性だけが下品すぎて見るに堪えず。かと思えばジェニファー・ジェイソン・リー。

半月前に見た鬼才クローネンバーグ「イグジステンズ」の美人ゲームクリエイター。その昔「初体験/リッジモント・ハイ」に出てたキュートな女優さん。そのふり幅にビックリ。そういえば、最近見た映画の出演者、「初体験」出演率高し。なんで?(笑)

荒くれ男どもの中でいい意味でも悪い意味でも際立っていたのがジェニファーさんだったのは確かで(私は見ててきつかったけど)、彼女はこの役でアカデミー助演女優賞ノミネートされている。

(この先ネタバレ)

この映画はラストシーンをどう捉えるかで印象が変わる、と思うのだ。

この映画のメインキャストには「善人」は登場しない。その上黒人だ白人だメキシカンだといがみ合う。映画中の会話劇でずーーっと長々と描いてきた主人公の黒人(北軍の元兵士)と自称保安官(南軍の窃盗団)が、最後には「あれ?いつの間にか・・・」という感じに仲良くなっている。それがちょっと私は面白かった。

映画の中で象徴的な存在が、主人公である黒人が大事に持つ「リンカーンからの手紙」で、中盤でそれを保安官が偽物であると見抜いたことで騒ぎになる。確かにその手紙は白人の警戒心を解くために必要なツールに過ぎなかった。

しかしラストシーンで保安官は「手紙を見せてくれ」と主人公に言い、もう自分が死ぬとわかっている主人公は血まみれの手紙を渡す。読んだ保安官は「いい手紙だな」と言ってこの映画は終わる。

全員死亡だから密室劇。なんだかちょっといい映画を見たかのような錯覚に陥りそうになる。

どう捉えるかは人それぞれだけれど。長い映画だけど見たことを無駄とは思わせないんだから(主観)、タランティーノは鬼才なのだろうな。

《蛇足》カウボーイ役のマイケル・マドセンの声が、TWDのダリル(ノーマン・リーダス)の声に聞こえてたまらんかった。顔も何となく似てる、骨格が似てるのかしらね、と言い合う。
→このポスターだけなんで日本語?

         
ヘイトフル・エイト The Hateful Eight
舞台は山の上のロッジ、登場人物は吹雪でロッジに足止めを食らい、一夜をともにすることとなったワケありの7人の男と1人の女。そこで起こる密室殺人。一体誰が、何の目的で?吹雪が作り出す密室で、疑心暗鬼で張り詰めた緊張をほぐすため、またお互いを探り合うため、他愛のない会話をかわす面々。やがてそれぞれの素性がすこしずつ明らかになり、偶然集まったかに見えた彼らの過去が繋がり始めた。そこで再び、予想を超えた出来事がー。
監督      クエンティン・タランティーノ
脚本      クエンティン・タランティーノ
製作      リチャード・N・グラッドスタイン、ステイシー・シェア
シャノン・マッキントッシュ
製作総指揮   ボブ・ワインスタイン、ハーヴェイ・ワインスタイン、ジョージア・カカンデス
ナレーター   クエンティン・タランティーノ
出演者     サミュエル・L・ジャクソン・・・マーキス・ウォーレン:主人公。黒人の賞金稼ぎ。
            元・北軍騎兵隊少佐。何故かリンカーン大統領からの手紙を常に持っている。
        カート・ラッセル・・・ジョン・ルース:豪快で横暴な賞金稼ぎ。主人公とは顔馴染み。
            賞金首は殺さずに捕らえ、絞首刑になるまで見届ける。
        ジェニファー・ジェイソン・リー・・・デイジー・ドメルグ:賞金1万ドルの女盗賊。
            ジョン・ルースに捕らえられ、彼と手錠でつながれている。かなり口が悪い。
        ウォルトン・ゴギンズ・・・クリス・マニックス:元・南軍兵士。
            自称・レッド・ロックの新任保安官だが真偽は不明。
            南北戦争中の「マニックス略奪団」団長の末息子。
        デミアン・ビチル・・・ボブ:ミニーの店の留守を任されているメキシコ人。
            淹れるコーヒーはかなり不味い。
        ティム・ロス・・・オズワルド・モブレー:イギリス訛りの英語を話す饒舌で紳士的な男。
            レッド・ロックを含むこの地区の巡回執行人をしているという。
        マイケル・マドセン・・・ジョー・ゲージ:カウボーイ。クリスマスのため帰省途中。
        ブルース・ダーン・・・サンディ・スミザーズ:元・南軍将軍の無口な老人。
            レッド・ロックに息子のチェスターの墓を弔いに行く途中。黒人嫌い。
            かつてバトンルージュの戦いで多くの黒人を虐殺した。
        ジェームズ・パークス・・・O.B.ジャクソン:ウォーレンらが乗る馬車の御者。
            金を払えば人種差別はしない。
        チャニング・テイタム・・・ジョディ・ドミングレ:謎の男。
音楽      エンニオ・モリコーネ
撮影      ロバート・リチャードソン
編集      フレッド・ラスキン
製作会社    Double Feature Films、FilmColony
配給      アメリカ合衆国 ワインスタイン・カンパニー
        日本 ギャガ
公開      アメリカ合衆国 2015年12月25日
        日本 2016年2月27日
上映時間    167分
製作国     アメリカ合衆国
言語      英語
製作費     $44,000,000
興行収入    世界 $154,358,648
        アメリカ合衆国 カナダ $54,020,527
        日本 2億4000万円
               
                  


210202miss-s_.jpg71dxWik5opL._AC_SY679_.jpg1200.jpg2021.02.02 Tuesday
「女神の見えざる手」(2016)を見た。久々の社会派サスペンス。とにかくラストが見事!昨日はすごく疲れてて、眠くて最初見るのを辞めようかと思ったのだけど、ぐいぐい引き込まれて見てしまった。ロビイストという職業、日本の感覚だとわかりづらいけど、主人公の信念を貫く姿がとにかくカッコイイ。

(ここからネタバレあり)

最高にしびれるラスト。相手は女だからって容赦なく攻撃してきて、主人公はどんどん立場が悪くなっていってるし、本人もどんどん薬漬けになって憔悴して、マジでヤバい、これは負ける!って思いながらハラハラ見てるんだけど。。。まさかのどんでん返しでスカッとする!カタルシスだわ。アメリカ版女性版半沢直樹!みたいな様相。むしろ真っ赤なルージュの白井大臣か鉄の女か。

唯一のロマンス?が、男娼?の男性との関係。そりゃこんなゴージャス美人が定期的に男を買ってたら「何者?」って気になっちゃうよね。彼・フォードは彼女への関心を隠さない。そんなある日パーティー会場でバッタリ。そこで彼が声をかけて彼女が逃げたことで、調べられて彼は聴聞会で証言する羽目になる。

フォードは彼女は自分の顧客になったことはない、とうその証言をする。その理由は単に銃規制に賛成しているのかもしれないけれど、彼女の正体を知り、彼女の苦悩が垣間見えたことで、フォードはもしかすると彼女を愛しかけているのかもしれない。

彼女を見捨てて敵に回ったと思われていた部下も実は密偵だったし、最初は敵対していた顧問弁護士も最後には打ち解けて味方になった。冷たい女に見えて、ちゃんと人と向き合い、愛されているのも素敵。

エンディングもめちゃ気になった。連邦矯正施設での刑期を終えて外に出た彼女を待っていた人は。。。エンディング、相手の顔が写るかと待ってたけど、そこでジ・エンド。想像してくださいってことね。誰だろう?

CEOのロドルフォ?密偵として活躍してくれた片腕のジェーン?
ロビイ活動に利用した部下のエズメ?それとも男娼のフォード?(まさか?)

観終わってから主役のジェシカ・チャステインが「インターステラー」のマコノヒーさんの娘マーフ役だったことを知る。学者でほぼすっぴんのマーフと真っ赤な唇でセクシーな今回とでは全く別人!脚本も面白かったけど、ジェシカのこの迫真の演技あっての映画。良作。

          
女神の見えざる手 Miss Sloane
天才的な戦略でロビー活動を仕掛けるエリザベス・スローン。真っ赤なルージュで一流ブランドとハイヒールに身を包み、大手ロビー会社で花形ロビイストとして辣腕をふるう彼女が、銃の所持を支持する仕事を断り、銃規制派の小さな会社に移籍する。アイデアと大胆な決断力で、難しいと思われた仕事に勝利の兆しが見えてきた矢先、彼女の赤裸々なプライベートが露呈し、重ねて予想外の事件が事態を悪化させていく。勝利の女神は誰に、どんな風に微笑むのだろうか…?
監督     ジョン・マッデン
脚本     ジョナサン・ペレラ
製作     ベン・ブラウニング、クリス・サイキエル、アリエル・ゼトゥン
製作総指揮  クロード・レジェ、ジョナサン・ヴァンガー、パトリック・チュウ、アーロン・ライダー
出演者    ジェシカ・チャステイン・・・エリザベス・スローン:敏腕ロビイスト
       マーク・ストロング・・・ロドルフォ・シュミット:ピーターソン=ワイアット社のCEO
       ググ・バサ=ロー・・・エズメ・マヌチャリアン:チームの一員で銃被害者
       アリソン・ピル・・・ジェーン・モロイ:元の会社に密偵として残した片腕
       マイケル・スタールバーグ・・・パット・コナーズ:テレビ対談する元同僚
       サム・ウォーターストン・・・ジョージ・デュポン:元上司で聴聞会を開いた首謀者
       ジョン・リスゴー・・・ロナルド・M・スパーリング上院議員 :聴聞会の議長
       ジェイク・レイシー・・・フォード:エリザベスが利用するエスコートサービスの男性
音楽     マックス・リヒター
撮影     セバスチャン・ブレンコフ
編集     アレクサンダー・バーナー
製作会社   フィルムネイション・エンターテインメント、アーチェリー・フィルムズ、フランス2・シネマ、Canal+、Ciné+、フランス・テレビジョン
配給     アメリカ合衆国 フランス ヨーロッパ・コープ
       日本 キノフィルムズ
公開     アメリカ合衆国 2016年11月25日(限定公開)
       アメリカ合衆国 2016年12月9日(拡大公開)
       フランス 2017年3月8日
       日本 2017年10月20日
上映時間   132分
製作国    アメリカ合衆国・フランス
言語     英語
製作費    $18,000,000
興行収入   世界 $9,101,546
       日本 1億円
                


2021.02.03 Wednesday
今年は映画を100本見るぞ!と目標を立てていて、1月は13本見たので今のところ順調ではあるのだが、なんだか仕事がバタバタ入って来てうれしい悲鳴なうえに、なんと来月後半には引っ越しすることに決まった。。。もう映画どころじゃないなぁ。忙しいけどめちゃくちゃワクワクしてる。noteも書かねば!


                



2020年9月発売の新刊です。
どうぞよろしくお願い致します♡



                  


◇見に行きたい展覧会メモ◇ →展覧会記録■

◆東京◆
河鍋暁斎の底力
11月28日(土) - 2021年2月7日(日) 10:00 - 18:00 東京ステーションギャラリー
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202011_kawanabe.html

佐藤可士和展
2021年2月3日(水)〜5月10日(月)10:00〜18:00 国立新美術館 企画展示室1E
https://www.nact.jp/exhibition_special/2020/kashiwasato2020/
https://kashiwasato2020.com/

石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか (※会期が変更になりました。)
2020年11月14日(土)− 2021年2月14日(日)10:00−18:00 東京都現代美術館 企画展示室 1F/地下2F
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/eiko-ishioka/

トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう
2020年10月16日(金) - 2021年3月7日(日) 11:00〜17:30 21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2
http://www.2121designsight.jp/program/translations/

20世紀のポスター[図像と文字の風景]――ビジュアルコミュニケーションは可能か?
2021年1月30日(土)−4月11日(日) 10:00〜18:00 東京都庭園美術館(本館+新館)
https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/210130-0411_ConstructivePostersOfThe20th.html


◆名古屋◆
ショック・オブ・ダリ ― サルバドール・ダリと日本の前衛
2021年1月9日(土)―3月28日(日) 9:30〜17:00 三重県立美術館
https://www.bunka.pref.mie.lg.jp/art-museum/000244842.htm

GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は? GENKYO YOKOO TADANORI
2021年1月15日(金)〜4月11日(日) 10:00〜18:00 愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)
https://www-art.aac.pref.aichi.jp/exhibition/000273.html
https://genkyo-tadanoriyokoo.exhibit.jp/

バンクシー展 天才か反逆者か
2021年2月3日(水)〜5月31日(月)10:00〜20:00 旧名古屋ボストン美術館(金山南ビル)
https://banksyexhibition.jp/

「写真の都」物語 ―名古屋写真運動史:1911-1972―
2021年2月6日(土)〜3月28日(日) 9:30〜17:00 名古屋市美術館
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/photography

トライアローグ
2021年4月23日(金)〜 6月27日(日)※予定 10:00〜18:00 愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)

岩合光昭写真展 どうぶつ家族/ねこ科
2021年4月3日(土)〜5月16日(日)(予定)10:00〜17:00 岡崎市美術博物館
https://www.city.okazaki.lg.jp/museum/exhibition/openexhibition/p026571.html


◆大阪◆
時間〜TIME BOWIE×KYOTO×SUKITA 鋤田正義写真展
2021年4月3日(土)〜5月5日(水・祝)※会期中無休 10:00〜19:30 
美術館「えき」KYOTO
https://kyoto.wjr-isetan.co.jp/museum/exhibition_2104.html

ミケル・バルセロ展
2021年3月20日(土・祝)−5月30日(日)10:00〜17:00 国立国際美術館
https://www.nmao.go.jp/exhibition/2021/post_miquel.html

おちょやんの役者魂 – 浪花千栄子出演映画特集
2021年1月19日(火) - 2021年2月5日(金) 10:00−19:30 京都文化博物館 3階 フィルムシアター
https://www.bunpaku.or.jp/exhi_film_post/20210119-20210205/
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