「写真の都」物語 ―名古屋写真運動史:1911-1972―、そしてスナップへ

210319_IMG_4764.jpg210319_nagoya-city-museum_index.jpg2021.03.19 Friday
名古屋市美で開催中の「『写真の都』物語 ―名古屋写真運動史:1911-1972―」を見て来た。エントランスで盛り上がる名建築。

すごく面白かった。時代ごとに求められる写真表現は違う。100年の間に「絵画的な表現」「シュルレアリスム」などの芸術的写真から、記録として残す「リアリズム」へ。

初期の写真はミレーなどの印象派の絵画そのもの。シュルレアリスムは写真なのにダリの影響をまんま受けている。後日三重県立美術館で見たダリ展で、ダリに影響受けてる日本人画家がたくさん紹介されてたけど「『写真の都』物語」展によれは、ダリの影響って絵画にとどまらず、写真家もモロ受けてたんだね。恐るべし、ダリ。

今日の私たちが見れば「絵画でいいじゃん」と思うし、フォトショで一発でできてしまう表現。けれど技術的に「ちゃんと映す」ことだけで難しかった時代。さらにそこに意図を持って撮ることはそれだけで価値があった。

でも時代とともにその写真の意味や価値に疑問視がもたれ、戦後はジャーナリズムや記録写真が求められるようになる。何一つ飾ることはなく、事実を切り取る写真が、やはり好きだ。作り込むより、「その瞬間」を撮れたキセキを見たい。この後に見たスナップ展示は興味深かった。

                


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概要
近代名古屋の写真表現は、1920年代に日本のピクトリアリズム(絵画主義的写真)をけん引した〈愛友写真倶楽部〉に始まります。伊良湖岬や日本アルプス等、海と山に近く、撮影地に恵まれた当地の写真家たちは、風景写真の新たな境地を開拓しました。

当初、“旦那衆”の道楽として興った写真の趣味は、やがて広くアマチュアに拡がり、1930年代半ばには名古屋独自のアマチュア向け月刊写真雑誌が創刊され、同誌を背景として「前衛写真」と呼ばれた名古屋発信の表現が全国を席巻しました。戦後、シュルレアリスム( 超現実主義) 表現が復活すると、敗戦後の社会生活を凝視するリアリズム運動と“ 鎬を削り” ました。その後、写真家・東松照明の登場と彼によって〈中部学生写真連盟〉が組織されると、若い感性が独自の表現を模索しますが、その一部はやがて学生運動へと収斂されて行きました。

このように連綿と続く名古屋の写真表現に於いてさらに特筆すべきは、彼等の活動が個々の作品の発表に止まるばかりでなく、機関誌や会報、写真集を出版し、自分たちの表現志向や意志を伝えようとしたことです。各時代に出版された多種多様な資料群は、名古屋が全国でも屈指の「写真都市」であり続けたことを証明するものとも言えましょう。

本展覧会は、名古屋の写真表現の展開を連続する “ 運動体”として捉え、時代のなかで、思潮を反映しながら展開したその軌跡を、作品と資料によって辿ります。
展覧会名「写真の都」物語 ―名古屋写真運動史:1911-1972―

展示構成
Ⅰ. 写真芸術のはじめ-日高長太郎と〈愛友写真倶楽部〉
Ⅱ. モダン都市の位相-「新興写真」の台頭と実験
Ⅲ . シュルレアリスムか、アブストラクトか-「前衛写真」の興隆と分裂
Ⅳ. “ 客観と主観の交錯”-戦後のリアリズムと主観主義写真の対抗
Ⅴ. 東松照明登場
Ⅵ. 〈中部学生写真連盟〉-集団と個人、写真を巡る青春の摸索

会期  :2021年2月6日(土)~3月28日(日)
開館時間:午前9時30分~午後5時(入場は午後4時30分まで)
夜間開館:毎週金曜日は午後8時まで(入場は午後7時30分まで)
休館日 :毎週月曜日
主催  :名古屋市美術館、毎日新聞社、メ~テレ、読売新聞社
後援  :名古屋市立小中学校PTA協議会
助成  :公益財団法人ポーラ美術振興財団、公益財団法人三菱UFJ信託地域文化財団
                


210319_IMG_4615.jpg210319_IMG_4618.jpg2021.03.19 Friday
写真家のオット・宮田雄平は、仕事では人も物も建物も撮る。彼がライフワークとしているのが「ストリートスナップ(街撮り)」というジャンル。

街を歩いて「気になったモノ」「面白いモノ」を切り取っていくことが街撮りの醍醐味だが、昨年は受難の一年だった。

何しろ街へ出られない。人も歩いていない。

宮田が数年前から続けている「ストリートスナップのワークショップ」のクラスも、存続すら危ぶまれた。参加メンバーの熱い想いのお陰で、無事開催された。

いつものように街へ出られない。撮りたいのに撮れない。

そんな中、みんなの写真はどう変わったのか?

3月1日(月)から28日(日)まで、名古屋・伏見にあるMITTS COFFEE STANDで開催中の「Team The Street Snap Photo exhibition」に、その答えがあった。

EvIpEp6VcAkIoDS.jpg180303mitts-map_web.jpgこの展示、3月前半と後半でガラッと内容が入れ替わり、今はすでに後半戦・・・ようやく行けた。そして驚いた。

「今までで、一番『撮ってる』のがわかる!」

瞬時に、様々なことが私の中で符合した。今まで繰り返しいろんな人から言われたことが、頭の中で繋がったのだ。

絵にしても写真にしても、たくさん描いたり撮ったりしている人は、作品を見ればわかるという。それがどういうことか、イマイチよくわかっていなかったのだ。

それが今回「なるほど、こういうことか!」と実感できた。たくさん撮った中から、取捨選択したのが垣間見えるというか、写真の持つ強さが違うのだ。

そもそも彼らは、こんなコロナ禍の中で、安くはない受講料を払って街撮りをしようと思う時点で、スナップ愛が強い精鋭たちなわけで。

そして「撮れないもどかしさ」が、さらに彼らの中の「撮りたい想い」を増幅させたのか?「もどかしさ」がいい形に昇華し、みんなの想いが爆発して、ぐいぐい心に突き刺さってくる。

気づくと私の頭の中には、ヒロミGoの名曲のフレーズがぐるぐる回っていた。会えない時間が育てるのは、恋人への愛だけではなく、写真への情熱も同じなのだね。よろしく哀愁。

いいもの見せてもらえた。みなさま、お疲れ様!素晴らしかった!


                



2020年9月発売の新刊です。
どうぞよろしくお願い致します♡



                  


◇見に行きたい展覧会メモ◇ →展覧会記録■

◆東京◆
佐藤可士和展
2021年2月3日(水)~5月10日(月)10:00~18:00 国立新美術館 企画展示室1E
https://www.nact.jp/exhibition_special/2020/kashiwasato2020/
https://kashiwasato2020.com/

トランスレーションズ展 -『わかりあえなさ』をわかりあおう
2020年10月16日(金) - 2021年3月7日(日) 11:00~17:30 21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2
http://www.2121designsight.jp/program/translations/

20世紀のポスター[図像と文字の風景]――ビジュアルコミュニケーションは可能か?
2021年1月30日(土)-4月11日(日) 10:00~18:00 東京都庭園美術館(本館+新館)
https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/210130-0411_ConstructivePostersOfThe20th.html


◆名古屋◆
ショック・オブ・ダリ ― サルバドール・ダリと日本の前衛
2021年1月9日(土)―3月28日(日) 9:30~17:00 三重県立美術館
https://www.bunka.pref.mie.lg.jp/art-museum/000244842.htm

GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は? GENKYO YOKOO TADANORI
2021年1月15日(金)~4月11日(日) 10:00〜18:00 愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)
https://www-art.aac.pref.aichi.jp/exhibition/000273.html
https://genkyo-tadanoriyokoo.exhibit.jp/

バンクシー展 天才か反逆者か
2021年2月3日(水)〜5月31日(月)10:00~20:00 旧名古屋ボストン美術館(金山南ビル)
https://banksyexhibition.jp/

「写真の都」物語 ―名古屋写真運動史:1911-1972―
2021年2月6日(土)~3月28日(日) 9:30~17:00 名古屋市美術館
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/photography

トライアローグ
2021年4月23日(金)~ 6月27日(日)※予定 10:00~18:00 愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)

岩合光昭写真展 どうぶつ家族/ねこ科
2021年4月3日(土)~5月16日(日)(予定)10:00~17:00 岡崎市美術博物館
https://www.city.okazaki.lg.jp/museum/exhibition/openexhibition/p026571.html


◆大阪◆
時間~TIME BOWIE×KYOTO×SUKITA 鋤田正義写真展
2021年4月3日(土)~5月5日(水・祝)※会期中無休 10:00~19:30 
美術館「えき」KYOTO
https://kyoto.wjr-isetan.co.jp/museum/exhibition_2104.html

ミケル・バルセロ展
2021年3月20日(土・祝)-5月30日(日)10:00~17:00 国立国際美術館
https://www.nmao.go.jp/exhibition/2021/post_miquel.html



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