小説「グラスホッパー」と「マリアビートル」(伊坂幸太郎)

今までに読んだ伊坂さんの作品で一番怖かったのが「魔王」なら
一番恐ろしくて苦手に感じたのが「グラスホッパー」だ。
ある種「超常的な力」について書かれたのが「魔王」だけれど
人間の闇の世界こそが恐ろしいと徹底的に描かれているのが「グラスホッパー」。

「グラスホッパー」については、ここにも感想を書いているけれど
とにかく伏線が見事で、最後に「そうなるか!」とどんでん返しのドミノ返しに圧倒させられると言う感じ。

特にスズメバチにはびっくり。そのスズメバチには続編でも驚かされる。

登場する人物のほとんどが殺し屋や闇世界の人間なんだけど
なぜか心惹かれるのが「鯨」。「鯨」は「自殺屋」と呼ばれる不思議な殺し屋。
直接手を下さないが、彼のターゲットにされた相手はその目を見ると死にたくなるというもの。
どれだけの絶望を知ればそんな目になるのだろう。

逆に怖く不思議だったのが「槿(あさがお)」。彼は「押し屋」と呼ばれる殺し屋で、その名の通り
交差点や駅のホームでターゲットを押して、車や電車で轢死させるのが仕事。

グラスホッパー GRASSHOPPER
2004年に角川書店から出版され、著者伊坂が「今まで書いた小説のなかで一番達成感があった」と語っている。
サスペンス、コメディ、オフビートなど分類不能の要素を含み、ストーリーは鈴木・鯨・蝉の3人の登場人物が
代わる代わる語り手を務めている。第132回直木三十五賞候補作となった。

2008年に井田ヒロトによる作画で漫画化され、『コミックチャージ』(角川書店)で連載された。
2015年に映画が公開された。
【あらすじ】
「復讐を横取りされた。嘘?」
元教師の鈴木は、妻を殺した男・寺原長男が車に轢かれる瞬間を目撃する。
どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。
鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。
一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。
それぞれの思惑のもとに――。
「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。
著者     伊坂幸太郎
発行日    2004年7月30日
発行元    角川書店
国      日本
言語     日本語
形態     上製本
ページ数   322
公式サイト  https://promo.kadokawa.co.jp/mariabeetle/
コード    ISBN 978-4-04-873547-6(単行本)
       ISBN 978-4-04-384901-7(文庫)


                  


これまた面白かった。
久しぶりになかなか魅力的な登場人物が登場した、と感じた。

章ごとに語り部が違う。彼らの名前のシャチハタが印象的だ。

元殺し屋の「木村」
元殺し屋の「天道虫」「果物」(蜜柑と檸檬のふたり)
それから中学生の「王子」

それ以外に、木村の両親や木村の父の部下や果物に仕事を依頼した闇社会の大物や
さらには「グラスホッパー」の主人公の鈴木や押し屋「槿」殺し屋コンビ「スズメバチ」も登場する。

殺し屋は全員運に見放されたような展開で、悪魔のような王子に翻弄され続けるが
最後に幾重にも重ねられたどんでん返しが待っている。

伊坂小説の凄いところは、推理をして一気にタネや伏線を解き明かすというより
まず一つの伏線が明かされてそういうことか、と思っていると、そこへさらにひとつ、さらに。。。と
どんどんいろいろな事実が明かされて行く。

一見無意味な独り言や無関係に見えたことが、ぴたりと綺麗なピースに収まった時のあの爽快感。。。。気持ちええ。

それにしても、木村のとーちゃん、かっこええ。でもこういうとき、わが身に置き換えて考えずにはいられない。
私はこのとーちゃんにどう見えるのだろう。そう器用に生きている方ではないけれど「クサイ」とは言われないだろうか。

伊坂さんの小説は、読みやすい切り口にだまされるけれど、実っは結構グロイ。
あっけないほどバタバタ意図が死ぬ。結構いいやつでも容赦ない。
それでも、一番報われてほしい人は報われるようになっている。この物語で言えば木村と天道虫だろう。
神さんは見てる、そんな気にさせられる。珠玉の言葉たちに息をのむ。
ハードボイルドなのに、元気をもらえるのだ。

マリアビートル MARIABEETLE
『グラスホッパー』の続編として描かれ、同作の登場人物も登場する。第7回大学読書人大賞受賞作。
【あらすじ】
酒浸りの元殺し屋「木村」は、幼い息子に重傷を負わせた悪魔のような中学生「王子」に
復讐するため、東京発盛岡行きの東北新幹線〈はやて〉に乗り込む。
取り返した人質と身代金を盛岡まで護送する二人組の殺し屋「蜜柑」と「檸檬」は
車中で人質を何者かに殺され、また身代金の入ったトランクも紛失してしまう。
そして、その身代金強奪を指示された、ことごとくツキのない殺し屋「七尾」は
奪った身代金を手に上野駅で新幹線を降りるはずだったのだが……。
著者     伊坂幸太郎
発行日    2010年9月22日
発行元    角川書店
国      日本
言語     日本語
形態     上製本
ページ数   465
前作     グラスホッパー
コード    ISBN 978-4-04-874105-7
文庫:2013年9月発行、角川文庫、LSBN978-4-04-100977-2-C0193
登場人物である七尾の前日譚「ついていないから笑う」(初出:ダ・ヴィンチ 2010年3月号)が併録。


                  


2015年10月発売の実話エッセイ。アトピーって痒いだけの病気じゃないんです。

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◇見に行きたい展覧会メモ◇ →展覧会記録■

◆東京◆
ミナ ペルホネン/皆川明 つづく
2019年11月16日(土)〜2020年02月16日(日)東京都現代美術館


◆名古屋◆
不思議の国のアリス展
2020年4月18日(土)−6月14日(日)名古屋市内の美術館(未定)
http://www.alice2019-20.jp/

◆大阪◆
萩尾望都 ポーの一族展
2019年12月4日(水)〜12月16日(月) 阪急うめだ本店
https://www.asahi.com/event/poeten/




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