誕生65周年記念 ミッフィー展〜水丸さんのおっしゃっていたこと

2022.01.14 Friday
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ミッフィーとみんなの65Years
オランダの絵本作家ディック・ブルーナさんの手によって生まれたミッフィー(うさこちゃん)は、2020年に誕生から65年を迎えました。ブルーナさんが大切にしてきたミッフィーの物語は、いつだって私たちに寄り添い、心あたたまる時間を過ごさせてくれます。

誕生65周年をお祝いする「ミッフィー展」では、“with”をテーマに、ミッフィーとまわりのみんなが紡ぐ物語を、貴重な直筆原画やスケッチ、創作メモなどから紹介します。
ミッフィーと、作者のディック・ブルーナさんのことをもっと深く知って、好きになれる展覧会です。

みどころ《本展のテーマは”With”》
ミッフィーをとりまく家族や友達が一緒に紡いでいく物語を、
貴重な直筆原画やスケッチ、創作メモなどの資料を通して紹介します。
日本初登場を含む、300点以上の作品を一挙に公開します。

                


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ようやくミッフィーの展示に行けました。ミッフィーの展示といえば、都内在住時の2006年に横浜そごうでの50周年のに行き損ねて以来、松屋(ゴーゴーミッフィー展(55周年・2010年))など「デパートであっという間に終わってしまい、いつも行き損ねる展示」というイメージでした。しかし実は60周年も松坂屋@名古屋でやってたと今回知るわけですが。
とりあえず行けてよかったです。

ディック・ブルーナさん(1927-2017)といえば思い出すのは、2006年当時に通っていた築地の学校・パレットクラブの講師でもあった亡き安西水丸さん(1942-2014)。水丸さんは口を開けば「ブルーナさん」を繰り返すほど、ブルーナさんを神とあがめておられるようでした。

グラフィックデザイナーでもあったブルーナさんの少ない色数での「シンプルな構成やデザイン力」のすごさについて、熱く熱く語っておられた水丸さん。水丸さんの影響でブルーナさんの本を読んで、サラッと描いているように見えるミッフィーを生み出すために、ブルーナさんが何度も動物園に通ったことを知りました。

それでも、ミッフィーの原画に食指を動かされなかったんだから、頑固なわたし。今回、原画や実際に絵を描くブルーナさんの映像を見て、水丸さんのおしゃっていたことが、頭の中で繋がったのでした。
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後年のミッフィーは、ブルーナさんが透明なシートに描いた線に色を当てて配色を決めるという方法が採られていましたが、初期は全てが手描き。

青い背景の上に、ミッフィーの白が塗られています。目やボタンなどの部分がへこんでいるのがハッキリとわかるほど厚く塗りこまれていて、丁寧な仕事ぶりに脱帽。この厚みのある境目は、筆で塗ってこうなるもの?カッターで切り取っているかのようなクリアな境目を、思わず目を凝らして見つめてしまいました。
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ミッフィーの絵本の中でも、おばけとじょおうさまは、かなりツボ。このデザインのピンバッジがあったら絶対買ったのに。
どんなものも、よりシンプルに伝わるためには?と試行錯誤を繰り返していたことが、たくさんのボツイラストや修正を繰り返した草稿(オランダ語なので読解できないけど)から感じ取れました。

ブルーナカラーと呼ばれる「赤、青、白、緑、黄色」に絞ったシンプルな構成。視覚面だけでなく、ブルーナさんは言葉にもこだわり、短く韻を踏んだ言葉で子どもにより伝わるように、何度も草稿を書き直したのだそうです。
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そんなブルーナさんの精神は、翻訳を手掛けた日本の作家たちにも受け継がれます。シンプルな言葉は日本の詩の基本と言える七五調で、短くわかりやすい表現になるよう工夫されました。

ブルーナさん自身も「日本は文化にシンプルな精神が息づいている」と日本を評価し、愛してくれていたとのこと。確かに、和の芸術やわびさびはシンプルの極みかも。
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今回初期のグラフィックデザインのポスターなども見られて興味深かったです。マティスのシンプルな構成が好きだったというブルーナさん、サビニャックの影響なども感じ取れましたが、やはり影響を受けた画家に名を挙げているそうです。

最後に、水丸さんの言葉が頭に響き渡った瞬間のこと。動画でブルーナさんが、絵筆をふるえるように動かしながら、ゆっくりゆっくりと線を描く様子。ミッフィーの線は、決して一本調子ではないのです。線は細かく揺らいでおり、その「揺らぎ」こそが、イラストレーションに魅力を与えています。

水丸さんは、イラレでパキッと描かれた線に否定的な方で、受講生の作品を講評する際に「自分だけの線を生み出しなさい」と繰り返しおっしゃっていたことを、よく覚えています。それはこういうことだったんだな、と今さらながら納得したのでした。

それにしても、巨匠は下書きなしで一発描きなのだなと。さいとうたかをさんのゴルゴ以来の衝撃です。それ程描き慣れていても、あんなに丁寧に描くことにも驚きました。


ブルーナさんの影響は、多くの後進に受け継がれています。昨年夏に見たわかやまけんさん(1930-2015)「こぐまちゃんとしろくまちゃん」の線の揺らぎや、色づかいなどには当然ブルーナさんの影響がまったくないわけではないでしょう。


画像は、展覧会公式サイト展覧会公式Twitterからお借りしました。


                


名前スタンプは、ひなも本名もなくてあきらめ、ピンバッジは好みのデザインじゃないなど、迷った結果、安定の「一筆箋&マステ」に決まり。かわゆし。。。あまりのかわいさに、帰宅後検索しまくってお高い限定品ミッフィーをうっかり買いあさりそうになった。恐るべし、ブルーナさん。
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展覧会詳細
展覧会名:誕生65周年記念 ミッフィー展
会期:2021年12月11日(土)→ 2022年1月16日(日) 
※1月1日(土・祝)は休館日 開館時間 10時〜19時30分 
※12月31日(金)、最終日1月16日(日)は18時閉館(いずれも入館は閉館30分前まで)
会場:松坂屋美術館(松坂屋名古屋店 南館7階)
〒460-8430 名古屋市中区栄三丁目16番1号
TEL 052−251-1111(大代表)
会場アクセス:地下鉄名城線矢場町駅 地下通路直結(5・6番出口)
地下鉄栄駅16番出口より南へ徒歩5分
主催:松坂屋美術館、朝日新聞社、メ〜テレ 企画協力 ディック・ブルーナ・ジャパン、Mercis bv
協賛:フェリシモ、野崎印刷紙業
協力:福音館書店 講談社
入館料[税込]:一般 1,000円(800円)/高・大生 700円(500円)/小・中生 400円(300円)
未就学児は無料
※( )内は前売・優待料金 
※障害者手帳、小児慢性疾患手帳、被爆者健康手帳、特定疾患医療受給者証をお持ちの方は、
ご本人とお付添の方1名様まで無料でご入館いただけます。
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2020年9月発売の新刊です。
どうぞよろしくお願い致します♡



                  


◇見に行きたい展覧会メモ◇ →展覧会記録■

◆東京◆
サントリー美術館 開館60周年記念展 千四百年御聖忌記念特別展 「聖徳太子 日出づる処の天子」
2021年11月17日(水)〜2022年1月10日(月・祝) 10:00〜18:00(金・土は〜20:00) サントリー美術館

ザ・フィンランドデザイン展―自然が宿るライフスタイル
2021/12/7(火)〜2022/1/30(日) ※1/1(土・祝)のみ休館 10:00−18:00(入館は17:30まで) 
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで) ※2021年12月31日(金)は18時閉館 
Bunkamura ザ・ミュージアム

ミロ展―日本を夢見て
2022/2/11(金・祝)〜4/17(日) ※2/15(火)、3/22(火)は休館
10:00−18:00(入館は17:30まで) 毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
Bunkamura ザ・ミュージアム

奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム
2022年1月15日(土)〜2022年4月10日(日) 10:00〜18:00 東京都庭園美術館

日本の海洋調査への挑戦とあゆみ −JAMSTEC創立50周年記念− ※予約制
2021年6月29日(火)〜2022年3月21日(月・祝) 9:00〜17:00 国立科学博物館

メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年
2022年2月9日(水)〜 2022年5月30日(月)毎週火曜日休館 ※5月3日(火・祝)は開館
10:00〜18:00 ※毎週金・土曜日は20:00まで ※入場は閉館の30分前まで
国立新美術館 企画展示室1E

メンズ リング イヴ・ガストゥ コレクション
2022年1月14日 (金) - 2022年3月13日 (日) 10:00 - 19:00 無休 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3

2121年 Futures In-Sight
2021年12月21日(火)- 2022年5月8日(日)10:00-19:00(入場は18:30まで) 火曜日休館(12月21日、5月3日は開館)
21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2


◆名古屋◆
誕生65周年記念 ミッフィー展
2021年12月11日(土)〜2022年1月16日(日) 10:00〜19:30 松坂屋美術館
ミッフィー展公式サイト ディック・ブルーナ公式サイト


◆大阪◆
上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー
2021年11月16日(火)〜2022年1月16日(日) 9:30〜17:00 京都国立近代美術館



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