イラストレーターの適性として、必要なものに
「コミュニケーション能力」が挙げられると思う。
イラストレーターなんて、絵さえ上手ければ、誰でもなれるんでしょ
と思う人は多いかもしれない。
けれど、絵が(そこそこ(笑))上手いのは当然として
フリーで仕事をするには、高い営業力も必要だし
必要最低限のビジネススキルも持っていないと厳しい。
自宅で効率的に仕事をこなすには、高い自己管理能力も必要だと思う。
営業力やビジネススキルは、どちらかというと仕事を得るまでの話で
実際に仕事を始めた時に試されるのが、コミュニケーション能力、なのである。
オットのアトピーが一番悪化していた時に派遣で働いていた会社は
とてもシンドイ職場だった。
派遣会社に登録に行ったのが12月の半ば過ぎで、その当日に仕事が決まって
やったー!と喜んでいたのだけど、やはりそうそううまい話があるわけはない。
私の前にいた女の子が、急に辞めることになったとは聞いていたが
よくよく聞けば、上司とウマが合わず、毎日バトルが続いた挙句
3月末の契約を破棄して、12月末で辞めることになったのだそうだ。
仕事は、上司とマンツーマンで行うもので、実務をしつつ上司から
直接指示を受けることになり、引継ぎもなかったので
彼女のことは、別の同僚から聞いただけだったけど、それはもう毎日毎日
切れまくって大変だったそうで。
私は3月末の予定が、一か月延長になるほど、その上司とはうまくやれていて
「いい人が来てくれてよかった」
と言われて、悦に入っていたのだが、そんな扱いも最初のうちだけだった。
その上司のことは、私の前任者以外の女性もみんな嫌っていて、その理由が、何を言ってるかわからないというもの。
専門用語ばかりやたら並べて難しいことは説明するのに、肝心な実務に必要な部分ははしょってしまうという
理数系男子にありがちなパターンだったのだ。
私も、いや、聞きたいのはそう言うことじゃなくて、とは思ったけれど、持ち前の好奇心旺盛な性格のせいか
上司の専門的な話も嫌いでは無く、ところどころ、へぇ、そうなんですね、と合いの手は入れつつ
相手が何を言いたいのかを何とか聞きだし、理解しようとして、実際にどうにかなったのだ。
私自身、決して人間関係が得意なわけではないので、何で自分にできることが他の人にはできないんだろう?と
逆に不思議ですらあった。
でもふと思ったのだ。
そうか、もしかしたら、イラストの仕事をするうちに、コミュニケーション能力が身についたのかもしれない。
ここでいうコミュニケーション能力とは、正確に言うと、人と仲良くする能力とはちょっと違う。
相手が何を言わんとしているのかを、読み取る能力、なのである。
これがないと、正直イラストレーターとして仕事をするのは厳しい。
イラストの仕事と言うのは、好きなものを好きなように描いてお金がもらえる訳では無い。
クライアントの「こういうものを、こういうイメージで描いて」という抽象的な言葉を視覚化して表現することなのである。
ある言葉を聞いて浮かぶイメージは、ある程度までは、共通の認識としてはあるかもしれないが
細かいディテールにまで及ぶと、やはりそこには個人差がある。
簡単なものでも
「リンゴを描いて下さい」
と言われたら、大抵の人は赤いリンゴを描くだろうけれど
「犬を描いて下さい」
と言われたら、柴犬を描く人もレトリバーを描く人も、ダックスフントを描く人もいるかもしれない。
それ以上に
「美味しそうなリンゴ」「アートな感じのするリンゴ」「人懐っこい犬」「さびれた街をとぼとぼ歩く孤独でお腹を空かせた犬」
などとバリエーションが広がれば、描く人によって出来上がりはさまざまになる。
けれど、正解は一つなのだ。
イラストレーターが好きに描いてよい職業では無い以上、クライアントがOKを出すのが正解なんである。
たとえ、全国共通で、リンゴは赤、となっていても、クライアントが「黒」と言えば黒ななのだ。
そのクライアントの「正解」を上手く導きだし、クライアントの期待を超えるものを描くには
クライアントの意図を正確に読み取ることがまず必要なのだ。
それと、イラストレーターは、打たれ強さも必要だ。
大人になって普通に生きていると、あまりダメ出しされることってないんではなかろうか。
よほど仕事で失敗した時以外に、人から叱られたり、否定されることって少ないのではないか。
けれど、イラストの仕事は、まず一回でラフが通ることは少ない。
大抵ダメ出しされ、否定されるところから仕事が始まるんである。
前出の上司は頭がイイだけに、こちらに要求するレベルも高く
「陽菜さんは、ミスはほとんどないからいいんだけど」
と言いつつ、一回うっかりしてしまったミスについてネチネチ言われたりしたのだが
否定されるのにはなれているので、冷静に受け止められたのではないか、と思う。
しかし、幸か不幸か、その嫌われ者の上司と妙に仲良くなってしまったおかげか、いつの間にか社内で
二人で孤立するようになって行ったのだった。いやホントしんどかった。
結局女性陣とは「仲良く」できていないので、そういう意味での対人スキルはまだまだだったな、と思ったり。
そういえば、翌年もこの会社からは仕事の打診が来たのですが、丁重にお断りしました。
上司Kさん、ごめんね。
この会社のことを考えると、冬が永遠に終わらないように感じたこととか、春が本当にうれしかったことを思いだす。
ちょうどこの会社で3か月目に入った、忙しさのピークの中で、戸田恵子さんの本のイラストの依頼があり
とても光栄なお仕事で、よいお仕事をさせていただいたのではあるが、スケジュール的にはずれにずれ込んで
ちゃんと納期に間に合うのかとキリキリ胃が痛み、ついには不整脈が出たりと、ホントイロイロ大変だった。
この写真では笑顔ですけど、実は不整脈を抱えていたのでした。
でもおかげで、版元の編集Uさんとも、編プロの編集Dさんとも、今でも連絡を取り合う仲!ありがたやー。
#フリーランス #仕事の流儀 #イラストレーターの仕事
うれしいことに、本を買って下さったというのでご一緒にパチリ。
颯爽とした美女でございます。
まったく生活感なくカッコよくお仕事されているKさん
二児の母と知った時は驚いた!!
小学生の息子さんが拙著をすごく気に入って下さったそうで
息子の名前を書いてください♪と最初頼まれて
結局、ご本人も旦那様もお嬢さんの名前も全部描いてました。
旦那さまもお読みくださったそうで、何だか照れまするー。
Kさん、ありがとうございました♡
2015年10月発売の実話エッセイ。アトピーって痒いだけの病気じゃないんです。
#「アトピーの夫と暮らしています」の感想
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