背負い水/荻野アンナ


昔書評で見て、読んでみたいと思いつつ、読まずに来てしまった本を、たまたま古書で見つけて、と言うよくあるパターン。芥川賞作品。

1991年。そんな昔の事じゃないような気もするけど、やっぱりもう昔なんだろうなぁ。
ちょうどバブルが弾けて、世の中のすべてがゴロゴロと、坂をころがり落ちて行こうとしていた頃。

当時この本を読んでいたら、面白いと思えたかどうか、ちょっとそれは疑問かもしれなかった。

割と淡々と物語はすすんで行く。短編集で、4つの作品のうち3つまでは30代くらいの女性が主人公で、最後の一個だけが男性が主人公。最後のがいちばん好きだったのは、唯一ハッピーエンドだからか。でもハッピーエンドじゃ芥川賞は取れない。

「背負い水」も嫌いな話じゃない。自分にとっての背負い水ってあとどれくらいなんだろうって思う。
主人公には共感できた。
大事な人との待ち合わせほど遅れてしまうとか。つい駄洒落で誤摩化してしまうところとか。

※「背負い水」
日本の地方の言い回しで、人間は皆、一生飲む分量の水を背負って生まれてくる。これを背負い水と言う。この水がある間は寿命がある。飲み尽くしてしまうとあとがない。

寿命だけでなく、相手との関係性においても、背負い水があるのだとしたら、わたしは脱水症状を起こしかねないかもしれない。飲み尽くしてしまう事を恐れて、全く飲めなくなってしまうかもしれない。
あるいは、その水を捨てて、別の水を背負うしかない。悲しいけれど、それが現実なのだ。   


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