イリヤ・カバコフ『世界図鑑』絵本と原画展

040329kabacov1.jpg040329kabacov2.jpg3月29日土曜日。
イリヤ・カバコフ『世界図鑑』絵本と原画展と満開の桜を見に、世田谷美術館×砧公園に行ってきました。

いやもう、すばらしい一日でした。

カバコフの絵はどれも楽しくて、わくわくしながら見られました。ロシアの絵本の背景には、いろいろな制約があったのでしょうが、そんな中、自分らしさを失わずに表現し続けたところが、なんといっても素晴らしい。

今はカバコフは現代絵画やインスタレーションの分野で活躍。先日のワインラベル展にもカバコフの作品が使われていました。これらの絵本の世界は、いわば閉ざされた彼の闇の部分。それを見る事ができたのは、本当に貴重な事だったんだと思います。

図録、¥2500とは到底思えないほどの分厚さ。
なんでなんで?そんなにたくさんの絵って展示されていたっけ?と言いつつ帰宅して眺めていると、この展示、前期と後期で、かなり(もしかしたら全部?)の数の絵が入れ替わっていたようで、それが全部おさめられているから、ものすごい数になったのでした。

前期の作品の原画は見られず残念でしたが、図録でこうして楽しめてよかったな、と思いました。
時間が無く常設展示が見られなかったのが残念。次の横尾忠則のときにでも、見ることにしようっと。
なお、展示の最後に、カバコフの現代美術家の仕事として「ぬり絵」という付属のコーナーがあります。一見、たわいなく、かわいらしい花や動物のイラストの下に見え隠れしているのは、「くそくらえ!」に相当する作家の体制批判のことばです。
あくまでも表面上のかわいらしさを取り繕いながら、その本性に激しい批判をすべりこませるのは、抑圧された旧ソ連を生き抜いてきたカバコフの真意であり、またそのぬり絵に自然にひかれてしまう私たちへの皮肉でもあります。どうぞご理解をいただきますようお願いします。
ぬり絵、その場でぬれるようになっていました。
一人一枚までで、全部で6種類くらい完成品が展示されてましたが、会期修了間近ということで、残ってたのは4種類くらい。二人で一枚ずつもらって帰ってきました。
ぬったものはまたいずれ載せます。

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会期:2008年2月9日(土)-4月6日(日) 
〈前:2/9日-3/9 後:3/12-4月6日、3/11日(火)は臨時休室〉

世田谷美術館 企画展
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/past.html
現在、世界でも非常に高い評価を受けているウクライナ生まれの現代美術家イリヤ・カバコフ(1933-)は、旧ソビエト時代には、イラストレイターとして、数多くのこどものための本の仕事をしていました。

冷戦終結前に西側へ移った後も、この絵本の仕事はエミリア&イリヤ・カバコフ夫妻の手元に保管され、長らく公開されることはありませんでした。

本展は、世界で初めてこの絵本原画約800点、原書約100点を二期に分けて、紹介します。社会主義体制下の子供たちの生き生きとした日常生活と夢が、展示室いっぱいに広がります。痛切な社会批判とアイロニーにみちた現代美術家カバコフの知られざる世界の扉が開かれることになるでしょう。

神奈川県立近代美術館 葉山(2007年9月15日(土)〜11月11日(日))
http://www.moma.pref.kanagawa.jp/museum/exhibitions/2007/kabakov/event01.html
今年のヴェネツィア・ビエンナーレを始め、ニューヨークを拠点として国際的に活躍しているイリヤ・カバコフ(1933-)は、旧ソ連のドニエプロペトロフスク市で生まれました。
現在は大規模な「トータルインスタレーション」※で知られる現代作家ですが、旧ソ連時代には「非公認」芸術家として活動する一方で、1950年代から共産主義体制の中で絵本画家として生活していました。

今回の展覧会は、絵本の挿絵画家としてのカバコフの創作を約100冊の絵本と、その原画約1000点によって、世界で初めて本格的に紹介するものです。絵本の多くは子ども向けで、カバコフが美しく、かわいらしく描き出した動物や乗り物、人々の暮らしなどは、本の内容から離れても、絵そのものとして十分に楽しむことができます。

展覧会は、絵本の内容によって分けられた1.生活、2.科学と産業、3.イデオロギー教育、4.物語、5.詩という5つの大きなセクションと、『オーシャと友達』というロシアに住むユダヤ人を扱った書籍を特集したコーナー、そして、絵本に関連したドローイングのコーナーから構成されます。

5つの大きなセクションについては、会期の前半、後半で大半の作品が入れ替わります。

※注: 見る人が天井、壁、床、オブジェ、光、色といったあらゆる要素が結合したインスタレーションの中を進んでいくにつれ、それぞれの空間が劇的な展開を見せるもの


保護者の方へ--作家カバコフについて

現在、ニューヨークに住み、ヴェネツィア・ビエンナーレといった国際的な現代美術の大規模展覧会を舞台に活動し、世界的な注目を集める美術家イリヤ・カバコフ。

1933年、現ウクライナ共和国ドニエプロペトロフスク市のユダヤ人家庭に生まれ、貧しい生活を送りながら、美術大学を卒業し、同時に児童書の挿絵画家となります。

当時、強力な共産主義体制のもとにあったソビエト社会では、芸術家として自由な表現などは許されず、生きて行くための仕事として、カバコフは挿絵を描く一方、仲間の芸術家たちといわば「非公認」の創作活動を行っていました。

80年代、徐々にソ連の体制が変化していく中、西ヨーロッパでの展示を行ったカバコフの作品は、欧米の現代美術界で一躍注目を集めました。そして89年ソ連崩壊の直前に亡命、現代に至っています。

その作品は、たとえば、ソビエトの共同アパートの生活を等身大に再現する「トータル・インスタレーション」と呼ばれる巨大展示物の形を取るものです。
深くソビエト社会の市民生活に根ざし、そこはかとないユーモアを漂わせながら、彼の主張は矛盾に満ちた体制への痛烈な皮肉と厳しい批判に満ちたものでした。

挿絵画家と現代美術家という二つの顔をもっていたカバコフ。挿絵の仕事を本格的に展示するのは、世界でも本展が初めてです。
本人にとってはあくまでも生活のための仕事であり、編集者の気に入ることが、最優先だったとのことですが、そのひとつひとつに、カバコフの描くことへの深い愛着と類いまれな才能を見ずにはおれません。

なお、展示の最後に、カバコフの現代美術家の仕事として「ぬり絵」という付属のコーナーがあります。一見、たわいなく、かわいらしい花や動物のイラストの下に見え隠れしているのは、「くそくらえ!」に相当する作家の体制批判のことばです。
あくまでも表面上のかわいらしさを取り繕いながら、その本性に激しい批判をすべりこませるのは、抑圧された旧ソ連を生き抜いてきたカバコフの真意であり、またそのぬり絵に自然にひかれてしまう私たちへの皮肉でもあります。どうぞご理解をいただきますようお願いします。


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