『冒険王・横尾忠則 初公開!60年代未公開作品から最新絵画まで』
を見に行ってきました。
周りではこの展覧会に関して、
まったく盛り上がりを見せていないのですけれど
ものすごく楽しい展覧会で、
世田谷美術館のアクセスの悪さにもかかわらず、
前回の『カバコフ』に比べると、結構なお客さんでした。
とはいえ、上野などの美術館に比べれば、
全然快適に見られましたけどね。
周りも若いカップルなどが多くて、みんな楽しそうに見ていました。
横尾さんの作品を見ていて、何となくダリを思い出しました。
シュールな作品世界を圧倒的な画力が説得力のあるものにしている、
と言うのが両者の共通点であるように思います。
そういう横尾さんは、以前にもこの世田谷美術館で見たルソーを敬愛していて
彼に対するオマージュとして、かなりの数の作品を描いています。
本展の第一章がまさにそれ。
ルソーと言えば「素朴派」と呼ばれ、正規教育を受けていないためか
デッサンに狂いの目立つ絵が多い事で知られています。
特に彼の自画像は、河岸に立つルソーが、周りに描かれた人物や船に比べ
大きすぎる事が指摘されてきましたが、正しい比率で描かれた絵、として
豆粒大にルソーを描き、さらに絵の上部には、元の絵でルソーが持っていた
パレットや筆をそのままの大きさで描いていて、思わず笑ってしまいます。
愛があるから描ける絵です。
その次には延々とY字路の絵が続き、この絵たちは怖いんですが引き込まれます。
そして、江戸川乱歩の小説で育った世代にはたまらない『冒険王』の世界。
ポスターの絵にも出てくる3人組が活躍します。
わたしとホセ・ソニオは生まれた年代は違うのですが、子供の頃に乱歩を読みあさったのは同じ。
乱歩を通過したかしないかで、のちのちの感性に、大きな差が出るように、近頃つくづく感じられるのです。
図書館で借りまくって読んでいて本当によかった。
その後アングラのイラストレーションの時代の絵が続き、細かい線画にため息。
(この頃には、閉館時間も迫って来ていて、焦りつつの鑑賞。うーん、もったいない。)
最後に同じY字路でも、思いっきり明るい温泉の絵画のオンパレードで、幕を閉じる展覧会。
一見同じような絵が何度も出てくるのですが、ちょっとずつ違ったり、何か新しい発見があったりして
見るものを飽きさせない、見る人まで冒険世界に引き込んでしまう、素晴らしい展覧会でした。
ホセ・ソニオ氏の方がワタシより感銘を受けたようで、いつもはワタシが並んで買う図録を
「今日はボクが買います」とためらいもなく並んでいました。相当楽しかった模様。
こんなにおすすめの展覧会なのに、会期終了後でごめんなさい。
ちなみに、その後ダーウィン展と屋上庭園には行きましたが、引っ越し準備に忙しく、当分はおあずけになりそうです。
世田谷美術館
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/
「ターザン映画」や「少年探偵団」、「アングラ演劇」や
『平凡パンチ』を愛するすべての世代に贈る、横尾忠則の冒険絵巻!
「冒険王」。アート界を走り続ける横尾忠則(1936年〜)に、
これ以上ふさわしい称号はないだろう。
1960〜70年代の鮮烈なグラフィック・デザイン、1980年代の“画家宣言”、
昨今は“隠居宣言”のかたわら小説家デビューと、話題多きこの作家については
今まで無数の展覧会が開かれてきた。だが意外にも、彼の「冒険」に
正面から切り込んだものはない。
<冒険王・横尾忠則>は、初公開の60年代グラフィック原画から、
冒険的物語がテーマの最新作まで、およそ700点が全館に展開する
“血沸き肉躍る”一大絵巻なのである。
展覧会の構成も、冒険物語仕立てだ。事件を予感させる<Y字路>シリーズの
近作に始まり、江戸川乱歩の「少年探偵団」、ジュール・ヴェルヌの
『海底二万里』、「ターザン映画」などから生まれた作品が次々に登場する。
都会の屋敷の地下室、洞窟、海底、密林は「僕の中ではすべてつながっている」
と作家は言う。めくるめく「冒険」イメージの連鎖を楽しめる展開だ。と同時に、
芸術の根源が宿る場としての“子ども”の世界も、ここで感得できるだろう。
横尾忠則の「冒険」を語るのであれば、イメージを創造する“方法論上の冒険”は
外せない。その意味での最大の見どころは、1960〜70年代の貴重な
グラフィック原画だ。作家から預かった1300点におよぶ資料の調査を行い、
約500点を精選。その大半が初公開である。『平凡パンチ』や『話の特集』を
飾った数々のイラスト、寺山修司や唐十郎、土方巽のアングラ演劇・舞踏の
ポスター、それらの原画や印刷指定紙からは、若き横尾忠則の大胆不敵でいて
驚くほど緻密な仕事ぶりを堪能できる。
横尾忠則の注目作・代表作を一望する「夢」・「コラージュ」などのコーナーを
経て、作家が「人口庭園」ともよぶ最新作、極彩色の<Y字路温泉>が最後を飾る。
毒々しく懐かしい、なのに全く未知の、眩暈がするようなシリーズだ。
アート界の「冒険王」、横尾忠則はどこまで行くのか?
そのゆくえを、本展でじっくり占っていただきたい。
いつも反省するのですが、世田谷美術館に到着するのが午後3時とか遅いんです。
この日も都電巡りを散々したあと(こっちはこっちで大事)だったので、結局横尾さんの企画展を見るだけで精一杯。
いつも今日こそは!と思う常設展を実損ねるのでした。バスキアが見たいのに。