没後40周年 レオナール・フジタ展

081122fujita1.jpgフジタと言えば2006年春に近代美術館での回顧展が話題となり
当時通っていたパレットクラブで講師の先生が
「フジタは本当に天才で、狭い部屋で絵を描くのに、
紙を広げられないので
紙を巻いて、まず上半分に絵を描き、
それを巻いて、今度は下半分を広げて
さらに続きを描いたものを広げたら、
寸分のデッサンの狂いもなかったそうだ」
と言う逸話を話して下さいました。

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特徴あるメガネとヘアスタイルから
その奇人ぶりは有名で
毎晩パリの街でどんちゃん騒ぎをしてからも、
帰宅して遅くまで、ただ机に向かって絵を描いていたと言うフジタ。

天才は絵の天才ではなく努力の天才なのだと言う言葉を思い出させてくれます。

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今回の展示、まず最初に初期の絵を見て
「えっ、肌が白くない!」
と言うのに驚かされます。まだ若き日のフジタの描いた絵は
モジリアーニなどの影響を受けた首の長い赤褐色の肌をした人物像で
モジリアーニとは実際に親交があり、彼の描いたフジタの肖像も
展示されていました。
081122fujita5.jpg家族 1917年 個人蔵

そしてフジタの真骨頂・乳白色の裸婦像へと展示は進みます。
素晴らしいです!
等身大くらいの裸婦の肌の色はもちろんですが、それを縁取る線の
細くて繊細なこと。自画像によれば筆で描いていたわけで
どんなに細い面相筆でも、ここまで均一に細い線を長く長く
よどみなく描けるものなのだろうか・・・・とぐるぐると輪郭を
一周してみても、ドコが継ぎ目かもわからない・・・感嘆するしかないです。
081122fujita6.jpg仰臥裸婦 1931年 福岡市美術館蔵

第1章・初期、そしてスタイルの確立へ
繊細な筆致と「すばらしき乳白色」によって描かれた裸婦で
当時のパリ画壇の話題をさらい、一躍、「エコール・ド・パリ」の
寵児として、その名を全ヨーロッパに轟かせた藤田嗣治。
世界のフジタとなった時代の作品を中心に、「大作群」へとつながる
独特な人物表現にスポットをあてて紹介します。

そんなこんなで会場を進んで行くと、今回の目玉であり超大作の
『ライオンのいる構図』などの大画面の作品群がわたしたちを待っています。
そこでぜひVTRもご覧ください。
この作品たちはずっとキャンバスを巻かれたまま保管され、絵の具の
ほとんどは剥脱してそれはもうひどいもので、それをフランス人の
第一級修復チームによって見事に蘇ったものだったのです。

もうあまりのすごさに度肝を抜かれますよ・・・・

群像のあとはフジタといえばネコ、と言うくらいトレードマークの
ネコたちの絵や、馬などの絵が展示。
この馬の絵は未完で、そのためにフジタの絵の完成形では
伺い知ることのできない製作過程におけるヒミツを垣間みることが
できるのだそうです。

フジタの住んだエソンヌ県では今度フジタの個人美術館を作るとのこと。
そこに展示される予定のこの二点は、日本での公開はコレが最後。
戦争がを巡る様々な事情で日本を捨て、フランスに帰化したフジタ。
そのフジタがこれほどまでにフランス人から愛されているのは
日本人としてとても嬉しいことです。

081122fujita7.jpg左/ライオンのいる構図 1928年 フランス・エソンヌ県議会蔵
右/犬のいる構図 1928年 フランス・エソンヌ県議会蔵
081122fujita8.jpg左/争闘I 1928年 フランス・エソンヌ県議会蔵
右/争闘II 1928年 フランス・エソンヌ県議会蔵

第2章・大画面と群像表現、「大作」への挑戦
80年ぶりに日本に里帰りする「構図」の連作2点
そしてこの「構図」と対をなす「争闘」の連作2点(日本初公開)が
修復を経て完全な形で一堂に会し、日本で初めて同時公開となります。
これらの「大作」を中心に据え、主題と密接な関わりを持つ作品と
ともに、フジタの群像表現の謎に迫ります。

そして次にフジタのアトリエ。
フジタは家にいる間、本当にずっと何かしら作っていた人だったようで
アトリエのあちこちに彼の手の施された様々な調度品が残されています。
のちに改宗してから本格的に取り組んだ宗教画における教会の模型や
食器の絵付け、家具に飾り付けた金属製の飾りなど。
そのどれもがフジタらしくて、本当に素敵。

フジタも生涯で4人もの妻を持ち、その妻をモデルに描いて来ました。
そのペースは短く、7〜8年経つともう次の女性、と言う感じでしたが
最後の奥さんとは長く長く添い遂げ、このアトリエもその奥さんと
過ごした最晩年のフジタの生活を色濃く残しています。

コレは想像にしか過ぎませんが、夜な夜な外で遊んで深夜に帰っては
家にいるときは絵を描いてばかりだった(と想像される)フジタ。
そんなフジタを理解し、見守ることのできた女性はやはり初期に結婚した
欧米女性ではなく、最後にフジタの選んだ日本女性だったのかな、なんて
思うのでした。

また、わたしはフジタの後期の子供の絵が不気味で好きなんですが
その辺りの絵も今回何点か展示されていました。
フジタの描く子供の絵にはモデルはなくて、自分自身の中で
かわいいと思う子供なのだそう。

第3章・今も当時のまま残る、アトリエ・フジタを再現
最晩年を過ごしたエソンヌ県の小村ヴィリエ=ル=バクルの
“ラ・メゾン=アトリエ・フジタ”には、現在でもさまざまな作品
資料が豊富に残されています。手作りによる多彩な家具や食器
小物、人形、アトリエや教会の模型、写真などは、フジタの
実生活を生き生きと伝えるものとして、今も大切に当時のままの
状態で保存されています。今回、エソンヌ県の協力により
これらの資料をまとまったかたちで日本で初公開し、あわせて
アトリエの一部も再現します。

最後にフジタの最晩年に精魂傾けたと思われる
ランスの「平和の聖母礼拝堂」。
こちらは壁画、ステンドグラスだけでなく
風見鶏や門柱のデザインに至るまでフジタが手がけた
フジタファンなら一度は生で見てみたい建物。

たくさんのデッサンと原画、デザイン画や複製された
ステンドグラスなどを展示。
コレもまたとっても濃かったです。

描くと言うことはココまで過酷なことなのか。
ココまで描いて初めて「描く=生きる」と言えるのではなかろうか。

自分自身も描く側の人間であることから、思わず己と画家を
比較してしまいます。それすら厚かましいですが
それでも少しでも近づけるように頑張って行きたいものです。

まだ会期は十分残っているので、是非見に行って下さいませ☆

第4章・フジタ、魂の昇華「平和の聖母礼拝堂」
建物内部を覆うフレスコ画、ステンドグラスはもとより
細部にいたるまで自ら装飾を手掛けた、ランスの「平和の聖母礼拝堂」。
この礼拝堂のためにフジタは、壁画のフレスコ画と同じサイズの綿密な
デッサンを残していました。これら原寸大の迫力あるデッサンとともに
建築家との詳細な手紙のやりとりや貴重なエスキースなど、礼拝堂建設に
関する豊富な資料を公開。さらに、本展のために再制作されたステンド
グラスも特別展示。ハイビジョン映像展示とともに今まで明らかに
されなかった礼拝堂の全貌に迫ります。


081122fujita4.jpg昨年、同じ上野の森で同じ11月後半の連休に見た
シャガール展のときにも飲んだカプチーノ。
去年もそうだけどこの日も思ったより温かい日で、のんびり腰掛けて
お外でお茶の時間を楽しめたのでした。


            


レオナール・フジタ展・スペシャルサイト
http://leonardfoujita.jp/
藤田嗣治、幻の群像大作、日本初公開
1992年、フランス・オルリー空港近くの倉庫で発見された縦横3メートルの
大作4点。それらは一部が1929年に日本で公開されたものの、その後所在が
不明になっていた、藤田嗣治(1886-1968)の「幻の作品」でした。
この4点はアトリエの建物とともにエソンヌ県の所蔵となり、フランス第一級の
修復チームによる本格的な修復作業が、6年の歳月を経てついに終了しました。

そして2008年夏、これらすべての大作が日本で一堂に会し、いよいよ初公開と
なります。また、今回は、この4点のほかにも、パリ日本館壁画と関連する
貴重な大作1点が、世界初公開作品として加わります。

日本人でありながらも、フランス人レオナール・フジタとしてその生涯を終えた
数奇な異邦人、藤田嗣治。本展では、独自のスタイルを確立し、大画面の構成に
挑んだエソンヌの大作群を中心に、「すばらしき乳白色」と世界が絶賛した
裸婦群を展示。また、アトリエ・フジタに残された豊富な生活資料や作品も
日本で初公開されます。

さらに、キリスト教改宗後、「レオナール・フジタ」として生涯を賭けて挑んだ
ランスの「平和の聖母礼拝堂」とそのフレスコ壁画の習作群も世界初公開。
幻の群像大作への挑戦とエソンヌをめぐる生活、そして晩年の宗教画への
昇華─本展は、5会場の出品総数 油彩約50点、水彩・ドローイング約100点
アトリエ関連作品約100点において、この類いまれなる世紀の天才画家の実像を
明らかにし、いまだかつてない圧倒的なスケールで、藤田嗣治の実像に迫ります。

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巡回スケジュール
本展は札幌をスタートとして2009年6月まで全国5会場を巡回いたします。
北海道立近代美術館
2008年7月12日(土)〜9月4日(木)

宇都宮美術館
2008年9月14日(日)〜11月9日(日)
(宇都宮美術館 TEL:028-643-0100)

上野の森美術館
2008年11月15日(土)〜2009年1月18日(日)
(上野の森美術館 TEL:03-3833-4191)

福岡市美術館
2009年2月22日(日)〜4月19日(日)
(福岡市美術館 TEL:092-714-6051)

せんだいメディアテーク
2009年4月26日(日)〜6月7日(日)
(河北新報社事業局 TEL:022-211-1332)


上野の森美術館「レオナール・フジタ展 没後40年 藤田嗣治 幻の連作一挙初公開」公式サイト
http://www.fujita-ueno.jp/
■展示概要■
【 タイトル 】 没後40年 レオナール・フジタ展
【 会  期 】 2008年11月15日(土)〜2009年1月18日(日)
※第2、第4金曜日 午後6時からギャラリートークあり
【 開館時間 】 午前10時〜午後6時(金曜日は午後8時まで、入館は閉館の30分前まで、会期中無休)
【 会  場 】 上野の森美術館(東京都台東区上野公園1-2)  MAP
【 主  催 】 産経新聞社、フジテレビジョン、日本美術協会・上野の森美術館
【 協  賛 】 トヨタ自動車、大日本印刷、ヤマトロジスティクス、損害保険ジャパン、大王製紙、東洋インキ製造
【 協  力 】 DNPアートコミュニケーションズ、日本航空、JR東日本
【 出力協力 】 エプソン
【 後  援 】 外務省、文化庁、フランス大使館、ニッポン放送、サンケイリビング新聞社、
サンケイスポーツ、夕刊フジ、フジサンケイ ビジネスアイ、iza!、SANKEI EXPRESS
【 企画協力 】
フランス・エソンヌ県、キュレイターズ
【 問い合わせ先 】 上野の森美術館 03-3833-4191


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