気づくと、展覧会って、あっという間に会期修了間近なんですよね。これも、来週には終了と言う事で、慌てて水曜日、雨の中出かけて参りました。感想は、わたし的には、満足、と言う感じでした。
よい展覧会ってどんなのだろう?と、ふと思ったんですが、人によって、それはもちろん基準は違うんでしょうが、わたしとしては、「よい作品がそろっているもの」はもちろんのこと、「その作品(作者)について、新しい視点を投げかけてくれるもの」というのが、とても重要で「おお〜!!そうだったのかぁ〜〜!!」みたいな、「目から鱗」状態になるのを楽しみに、せっせと美術館巡りをしているわけです。
で、今回のアールデコ展にとってのそれは、「アールデコとジャポニズム」でございます。アールヌーヴォーとジャポニズムに関しては、今までさんざん言い尽くされて来ていますが、アールデコについては、あまり言われて来なかったそうで、でも、最初の方の作品で、特にジャポニズムという記述のない作品に関しても、「これ、漆塗りの工芸品みたい」などと思ったりしましたので、「ジャポニズム」の文字を見たときは「ふふん、やっぱり」と、密かにほくそ笑んだりしたのでした。アールヌーヴォーのジャポニズムが、日本人の四季折々に関する感性やワビサビを写し取ったものだとしたら、アールデコのそれは、素材から入っているそうで、この時期の欧米の芸術家の作品には漆が使われています。またそれが、すっきりとモダンでシャープなアールデコとよく合うのですよ。
それ以外にも、アールデコはエジプトやアフリカ、中南米のマヤ文明などの影響も強く受けているそうです。また、キュビズムとの関連性も指摘されています。(そう言われて見ると、レジェの絵画がアールデコに見えてくるから不思議!(笑))そんな解説を、大変興味深く見る事が出来て、この展覧会、とてもいい展示の仕方だなぁ、と思いました。
アールデコは、家具が素敵ですね。すごく豪華なものを使っているのに、重すぎないで、センスがいい。私は、小物に関しては、割とデコラディブなものが好きなので、宝飾品などはアールヌーヴォーもかなり好きなんですが、ことインテリアに関しては、シンプルが好きなので、アールデコ、すごく惹かれます。(そういえば、デコラティブ、が、アールデコのデコなんでしたね(^^:)アールヌーヴォーって、大衆的なものを目指したとは言っても、結果的には、一部のブルジョワしか持つことができなかったのですが、アールデコは、大衆的に広まる事に成功しているので、我々が子供の頃の日本って、まだまだアールデコの影響受けていましたよね。だから、家具は、どことなく昭和の高度成長期の頃のイメージがあったりします。
その他、カルティエの超豪華な宝石から、復元されたホテルのエントランス、ドレス、本の装丁、ポスター、ポール・コランの描いた黒人女性ダンサー、ジョセフィン・ベーカーなど(これは彼女のビデオがなかなか強烈でした)盛りだくさんで楽しめます。アールデコは、あらゆる領域に浸透していました。美術だけではなく、家具・調度から、映画・写真・ファッション・装身具・装丁・日用雑貨に至るさまざまな形に時代の趣味は展開された、そうです。シンプルであるが故に、贅をこらす事も、大衆的なものとして量産する事も可能だったのでしょう。
アールデコと言えば、昔どこの家にもあったピエールカルダンのコップとかモガの女性の絵とか、そんなイメージしかなかった人も、きっとこの展覧会に行く事で、多彩なアールデコを知る事が出来ると思います。素晴らしかったです。