シグマー・ポルケ展(Sigmar Polke ) 〜不思議の国のアリス

051022shigmar_polke.jpg10/21(金)上野の「上野の森美術館」にシグマー・ポルケ展を見に行った。それまでまるで知らない画家だったのだけど、いきなりファンになってしまった。さすが現代ドイツを代表するアーティストだけある。素敵だ、ポルケ。もともと私は「不思議&鏡の国のアリス」のファン、あるいはマニア、なので、アリスと名がつけば、何でも興味津々で見に行ってしまうのだけど、これは期待を裏切らなかった。
   
この人の絵をパッと見た瞬間にまず感じたのはその、独特の光。玉虫色っぽいような、鈍い何とも言えない光を持った絵なのだ。それもそのはず、彼は最初ガラス工芸家からスタートし、画家になってからも、絵画の上で、天然の鉱物を使用し、独特の効果を狙ったり、化学変化を起こさせるような手法をとっているのだ。絵画=静的なものではなく、変化して行くものとして、湿気を含むと色が、変化するような素材を使用して壁画を描くなど、面白い試みに挑戦し続けている。


また、ポップアートに影響を受けていると思われる、網点ドットによる絵画もおもしろい。単純に見えるが恐ろしく時間のかかるこの技法。私は大好きなので、楽しめた。

ポスターにも使われているこの絵がまさに「不思議の国のアリス」画面左側に描かれているのは、アリスが芋虫に話しかけて、「キノコの片方を食べると大きくなり、もう片方を食べると小さくなると教えてもらう場面である。布の上に、白で描かれているアリスの絵は、有名なテニエルの挿絵そのままで、アリス・ファンとしては思わずにやりとしてしまう。黒×白の水玉生地の上に描かれたアリスはどことなく心もとなく、はっきりしない。

この絵のテーマはズバリ「変化するからだ」「変身」なのだそうで。アリス自身も、大きくなったり小さくなったりするし、芋虫からさなぎ、やがて蝶へと姿を変える芋虫は変化するものの象徴だし。また、芋虫がくゆらすパイプは、麻薬を象徴し、わざわざ赤く塗られたキノコはそれが毒を持つことを表してる。周りに貼られている布の柄は、サッカーの試合なのだけど、グリーンに赤と黄色のユニフォームの色合いがまるで、お花畑を連想させて、アリスが迷い込んだ森の中のイメージにぴったりなのである。そこには、周りの選手とは比べ物にならないほど大きなバレーボールの選手が、大きくなったり小さくなったりするアリスに対比するように描かれている。一見単純に見える絵にも、きちんと深い意味が隠されているのだ。ただ、彼の意図する意味を本当に読み取っているのかは、疑問だと書かれていた。まぁ絵画ってそう言うものなのかもしれないとは思うけど。

お散歩するにも気持ちのよい季節。会期もあと少し。ぜひ脚を運んでみて下さい。

シグマー・ポルケ展より引用
日本初の個展にはなにかしらドイツ特有のものを見せたい。ひとつは絵画の伝統、もうひとつはお伽噺のようなロマンティックな物語、そして時代とともに移り変わる両者の姿を。      〜ジグマー・ポルケ

この秋、上野の森美術館では、世界で最も注目される画家の一人、ジグマー・ポルケ(1941年、旧東ドイツ生まれ)の展覧会を開催します。ポルケは1960年代から活躍をはじめ、写真やアメリカン・ポップアートを制作に取り入れながら、網点ドットによる絵画、カンヴァスの代わりにプリント布地や透明な支持体に描いた絵画など、つぎつぎと実験的な手法を開拓して現代絵画の世界をリードしてきました。

同じドイツ人アーティスト、ゲアハルト・リヒターやアンセルム・キーファーらとともに世界的に高く評価され、1986年の「ヴェネツィア・ビエンナーレ」で金獅子賞を受賞。2002年には「高松宮殿下記念世界文化賞」を受賞しています。

今回のポルケ展は、今年・来年と行われる「日本におけるドイツ年」に合わせて
開催されるもので、日本ではじめての本格的な個展となります。

初期の代表作「不思議の国のアリス」からこの展覧会のために現在制作中の新作まで、ポルケ自身が選ぶ約30点の大作が上野にやってきます。種々の素材とテクニックを自由に駆使しながら、日常生活から童話、歴史、戦争にいたるさまざまなモチーフを画中に取り込み、豊かなイメージを紡ぎ出す “絵画の錬金術師” ジグマー・ポルケの世界をご堪能ください。


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