落ち込んだ時に、よく思い出す言葉がある。
それは、私が東京のお母さんと呼んでいるAさんの言葉。母と偶然同じ年で、親子ほど年は違うのにウマが合って、私がまだ20代のころから、ずっと仲良くしてくださっていた。婚姻届を出す時には、遠方に住む私たちの両親の代わりに、夫の会社の上司と並んで、名前を書いていただいたほど。
そんなAさんがある日、こうおっしゃった。「人には、まあるい世界と言うものがあってね、そのまあるい世界の中に収まる人としか、うまくやって行けないものなのよ。もしも、どうしてもうまくやれない相手がいたとしても、落ち込む必要なんて
ないのよ。自分のまあるい世界に入らない相手だったってだけ。人はそんなにたくさんの人と、つながることなんてできないのよ」
私に対してだけでなく、どんな人にも親切で、誰とでも仲良くやってらっしゃるように見えたAさんから、まさかそんなことを言われるとは思わなくて、ちょっと驚いてしまった。
「Aさんにも、まあるい世界があるんですか?」「あたりまえじゃない。うんと小さなまあるい世界よ。でもいいのよ。小さくても。そのまあるい世界を大事に大事にしていけばね」
そういうAさんの顔を見ていたら、そっか、Aさんのまあるい世界にはちゃんと私も入ってるんだな、と思って、心の奥がほんのり温かくなった。
そのAさんとは、名古屋に引っ越す前に、夫と三人で食事して以来会っていない。次に東京で展示をするときには、忘れないように連絡しなくては。私の小さな小さなまあるい世界を、大切にしなくては、と思うのだった。反省。