【絵本】『くまとやまねこ』『ニワトリが道にとびだしたら』『ちいさなくれよん』『くるまあらいます』
『くまとやまねこ』湯本 香樹実・作/酒井 駒子・絵
2年ほど前の、2008年9月末。紀伊国屋書店新宿本店で開催されていた酒井駒子さんの原画展に行ってきました。このお話はまだ未読でしたが、内容を知らなくても、絵を見ているだけで何度も涙ぐむほど素晴らしいものでした。
タイトルに鳥は出てきませんが、表紙のクマの肩にちょこんととまっているように、鳥は重要な登場人物。だけど、タイトルは「くまとことり」じゃなくて、「くまとやまねこ」。そんなところに、湯本さんがこの物語に託された思いを感じるのです。
一見ちょっと暗く見えてしまう表紙の絵。この絵本の味わいそのままの紙(再生紙なんだそうです!!)に黒と白のアクリル絵の具(?)だけで描かれています。ざっくりと塗りつぶした黒の上に白で、驚くほど繊細にその世界が広がっています。
酒井さんと言えば、現代の絵本作家・イラストレーターの中でもとにかく大大好きな方。好きな理由は、酒井さんも幼い頃から鳥をよく飼っていて、ご自身でも鳥をモチーフにした絵をよく描かれるせいかもしれません。
内容的には、大人向けの絵本と呼ぶべきかもしれません。けれど、原画展には、駒子さんへのメッセージを残せるスケッチブックがあって、そこには小学生からのメッセージも残されていました。
本当にこのお話の深い意味を知るには早くても、よいものは、大人にも子供にも通じるんですよね。
『ニワトリが道にとびだしたら』デビッド・マコーレイ・作・絵/小野 耕世・訳
ニワトリがただ道にとびだした・・・それだけで、町中がどんどん事件に巻き込まれて行きます。なんとか騒動は治まり、大団円かと思いきや、最後が何とも皮肉でおもしろい。
子どもが読んでも楽しいでしょうが、大人が読んでも、とても楽しい絵本です。青・赤・白と3色に押さえた表紙のデザインも、とてもおしゃれ。
作者は『アンジェロ』と同じデビッド・マコーレイ。
『ちいさなくれよん』篠塚 かをり・作/ 安井 淡・絵
一年ほど前に、クレヨンが主人公のお話を書いたことがあります。書いてから、クレヨンが主人公のお話が、予想外に多いことに改めて知った次第ww
このお話もそうです。
このお話は、内容も背景も感動的です。金の星社のサイトによると
「1979年に初版が刊行され、第5刷まで重版されましたが、その後絶版になっていました。ところが、1999年6月にテレビ番組で視聴者の方の思い出の絵本として紹介されたところ、放送直後から復刊リクエストの電話やFAXが殺到しました。
反響の大きさに驚きつつ、すぐに復刊を決め、テレビで復刊のお知らせをしてもらったところ、またまた大反響。20年の歳月を経てよみがえった『ちいさなくれよん』はまたたく間にベストセラーになりました。
物を大切にする心、何か世の中の役にたつために生きること、思いやり、献身的な愛、命の尊さ・・・。絵本にこめられた思いを多くの子どもたちに伝えつづけています。」
という経緯があるんだそうです。復刊のリクエストのおかげで、今も読むことができるんですね。
ホンの小さな存在である、短くなったクレヨンにも、こんなに役に立てることがある。どんなちっぽけな存在でも、ちゃんと役に立てるんだよ、と、そういうメッセージを私は感じたのでしたが、モノを大事にしよう、というメッセージも含まれている・・・かなり奥深い絵本です。
『くるまあらいます』サンドラ&スーザン スティーン(作)/G.ブライアン カラス(絵)
ガソリンスタンドの洗車機に入ってる車の中から、窓の外を見たら、どんな感じだろう??誰もが一度は感じたことのあるこの問いに、イラストとコラージュでファンタジックに答えた絵本。
テキストの大きさや配置などにも独特のセンスが感じられて、素敵です。