博物図譜展 〜博物の肖像画〜

040519hakubutuga.jpgわたしは、ライフワークとして、植物画(ボタニカルアート)を描いている。ボタニカルアートが、植物の肖像画だとしたら、博物画は、この名の通り、博物の肖像画であるといえる。植物画も、博物画の一種である。

武蔵野市立吉祥寺美術館は、吉祥寺伊勢丹の中にある美術館で、美術館と言えるかどうかわからないほど、小さな美術館だと言うことだったけど、なかなか、立派な美術館だった。

今回の企画展以外に、二つの記念室での展示も見られ、なかなか見ごたえがある。これで¥100って、安すぎ・・・(笑)記念室のほうは、4/1〜7/27までは、浜口陽三記念室で、『続・原版にみる浜口陽三の技術』、萩原英雄記念室で『続・萩原英雄60年代の傑作』が見られる。萩原さんのは、抽象的な版画で、わたしには難しすぎたのですが、浜口さんのは、すごい。銅版画メゾティントという技法を使ったアートなのですが、要するに、多色刷りの版画なのだけど、重なって、絵になっていくのが、すごく繊細な技術で、ほおぉぉぉぉぉ〜って感じだった。

さて、本企画展に話を戻すと、わたしも、自分のHPの植物画に関するページに書いてるけど、博物画というのは、真実を写すもの・・・写真技術のなかった時代に、そのものを正確に伝えるために描かれたのが始まりで、それは当然、写真の登場によって、存在意義は失われたように思われるけど、それらの絵は、ただ自然の事物を正確に写したものというだけにとどまらず、芸術作品のような、美しさや輝きを放つものが多いということで、その存在意義の大きさを再認識させられる機会が多くなってきている。

日本の植物学の父と呼ばれる、牧野富太郎博士の神技のような『ムナジモ』の植物図譜、博物画御三家と呼ばれる関根雲停、服部雪斎、中島仰山などの博物画。特に、雪斎の植物の絵は素晴らしかった。仰山の動物の絵も、もちろんすごいし、平木政次の絵の細密さも素晴らしい。これらの絵は、それぞれ高知県立牧野植物園、国立科学博物館、玉川大学教育博物館の所蔵である。余談ではあるが、先日上野の美術館について書いたときに触れたんだけど、上野には、国立科学博物館と、東京国立博物館があって、ちょっとややこしい。これは、このふたつは、途中でふたつに分かれた博物館であり、特に関東大震災で資料をすべて失った科学博物館は、国立博物館に資料を譲り受けて再出発していると言う経緯がある。それで、この二つの間には、今までに何度も資料の行き来があったそうである。

ところで、日本では、植物画=ボタニカルアートという言葉は、随分浸透しているけれど、欧米では、植物図=ボタニカル・イラストレーションと言う言葉と、このボタニカルアートを明確に区別しているそうなのだ。つまり、植物図(ボタニカル・イラストレーション)は、学術的に正確さを極めたもの、植物画(ボタニカルアート)は、そこに芸術的な要素が含まれ、目で見て楽しめるもの。そういった違いがあるそうである。


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