展覧会の名前に、「フランス現代絵画」と入っていますが、ザオ・ウーキー(趙無極)は、中国人です。渡仏して、詩人・アンリ・ミショーに認められて、パリで確固たる地位を築いていきます。
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この小さなチラシではわかりにくいかもしれませんが、抽象絵画です。それも、ただ筆跡が残ってるだけの、まったく具象的部分のない絵です。わたしはもともと、こういった抽象画は苦手なのです。まるで、チューブからそのまま絵の具を出して塗りたくったような、筆ではなく、パレットナイフで描き殴ったような絵は、意味不明で、わけもなく不安になるのです。
でも、わたしは、彼の絵にとても惹かれました。不安どころか、不思議な安定した気持ちになるのです。なぜなのでしょう?ずっと考え続けていますが、本当のところはわかりません。もしかしたら、色なのかもしれません。色の組み合わせ、色の表現、ぼかし方や散らし方に、とても惹かれるものがあります。でも、彼のモノクロの絵も、やっぱり同じように好きなのです。まるでセザンヌの絵画を、理屈ぬきで好きなように、わたしはザオ・ウーキーの絵が好きなのでしょう。
解説より
パリを舞台に活動を続け、近年その声価を高めている抽象画家ザオ・ウーキー(ZAO Wou-ki、趙無極)は、1921年、北京で、宋王朝にまで遡ることができる名家に生まれました。1948年、27歳で渡仏し、1950年代半ばには抽象絵画に取り組むようになり、当時、フランスで大きな潮流となっていた「アンフォルメル(「不定形」の意)」の画家たちとの交流から大きな影響を受けます。そして鮮烈な色彩の巨大な油彩作品を数多く手がけると同時に、モノクロームの水墨画や版画にも取り組むなど、多彩な制作活動を展開してゆきます。1964年にフランスに帰化したザオ・ウーキーは、洋の東西の違いを越えて、絵画の本質を極めようと努めた画家であるといえるでしょう。この展覧会は、作家本人をはじめ、フランス、アメリカ、台湾、日本の美術館、個人コレクターの多大なご協力を得て、初期から近作にいたる代表作、約70点を一堂に集め、半世紀以上に渡るザオの活動を振り返ります。