色彩と幻想の画家「エミール・ノルデ」展

041022garden_museum.jpgバラの美しい季節の庭園美術館を訪ねて、ドイツ表現主義を代表する画家・エミール・ノルデの幻想世界に遊んできました。わが国では、23年ぶりの個展となるそうです。

ドイツ表現主義とは、フランスのマティスを代表とするフォービズム(野獣派)とも共通する、鮮烈な色彩・大胆な構図などを特徴とするものです。まさに、ノルデは、色彩にこだわり、色彩の魅力を存分に引き出すことを、自らに課していた画家だと言えるそうです。

今回の展覧会は、水彩画を中心に展示されていました。ノルデは、第二次大戦中に、ナチスから「頽廃芸術家」の烙印を押され、監禁状態の下、一切の創作活動を禁じられていた彼の、心の支えであったのは、故郷の美しい風土と、ほんの小さな紙片に水彩で幻想的な絵を描き綴ることでした。それが「描かれざる絵」と言う名の魅力的な水彩画として知られています。


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ノルデは、最初ドレスデンの若い画家の集団「ブリュッケ」に参加します。しかし、ノルデの絵画の激しい色彩や構図、タッチなどは、「ブリュッケ」と共通するものの、「ブリュッケ」の画家たちが基本的に都会的な要素を描こうとしていたのに対して、ノルデは、もっと内面的な人間の本質を描こうとして、やがて「ブリュッケ」とは袂を分かちます。

そして彼は、聖書の物語や伝説をモチーフにしたり、南洋各地の原住民の生活を、生き生きと描きます。でも、最終的に彼は、故郷であるドイツの北の辺境、デンマークとの国境に近い低湿地帯の風土にこだわり、この独特の風景や、夏に咲き乱れる花を、繰り返し描くようになります。

水彩と言う画法の持つ長所を生かした、大胆で激しく、幻想的な絵は、とても強烈で、好き嫌いはともかく、引き込まれるものがあります。さらさらと、大胆なタッチでかかれたように感じられるのに、その絵には躍動感があり、ありえない色彩で、輪郭線もないにじんでぼやけた絵なのに、まるで、その場に居合わせるようなリアリティを感じます。それは、いろんなところで書かれていますが、ノルデの正確なデッサン力のなせるものなのでしょう。このチラシの絵はタイトルが「黄色と緑による女の肖像」と言うように、ありえない色彩で描かれていますが、作り物のようには見えないのが不思議なのです。それが、ノルデの魅力と言えるのでしょうね。もちろん、透明感のある花の絵に、水彩はぴったりで、ノルデにしか描けない、鮮烈で、幻想的な世界が広がっています。

水彩画以外にも、木版画、銅版画、リトグラフなどが展示されていました。木版画は、色彩豊かな水彩画と違い、黒の強いシックな雰囲気の作品で、これもまた素敵でした。121点の作品は見ごたえがあり、ノルデの世界を満喫するには十分であると言えると思います。

いつもながら、旧朝香宮邸である展示室は素敵でした。が、そこここに「作品保護のために照明を暗くしています」と言う表示が目に付いたように、室内は暗く、実際の絵画の色は、わかりにくかったかもしれません。水彩画は油彩画に比べると、劣化しやすいので、仕方がないとは言えますが。全体的には、とても楽しめる展覧会でした。

リンクhttp://www.kaigisho.ne.jp/literacy/midic/data/k20/k2021.htmより
ドイツ表現主義 German Expressionism

ゴッホ(Vincent van Gogh/1853〜1890)、ゴーギャン(Paul Gauguin/1848〜1903)、ムンク(Edvard Munch/1963〜1944)などに影響を受け、フォービズムとも関連を持ち、デフォルメした形態、素早い筆使い、再度の高い強烈な色彩、心理的要素や精神的なモノを強調し、1905年にドレスデンで結成した「橋(die Bruecke)」の創設メンバーのキルヒナー(Ernst Ludwig Kirchner/1880〜1938)、ヘッケル(Erich Heckel/1883〜1970)、ブライル、シュミット=ロットルフ(Karl Schmidt-Rottluff/1884〜1976)によって、第1次世界大戦前後にドイツを中心に起こった美術、文学、映画、演劇、建築など広範囲にわたった反アカデミズム芸術運動の名称。1910年にオスカー・ココシカ(Osker Kokoschka/1886〜1980)がベルリンで雑誌「Storm」を出版し、ミュンヘンでは1912年に年鑑雑誌「青騎士(Blaue Ritter)」を創刊したカンディンスキー(Wassily Kandinsky/1866〜1944)とアウグスト・マルク(Franz Marc/1880〜1916)を中心に展覧会が開催され、パウル・クレー(Paul Klee/1879〜1940)やアウグスト・マッケ(August Macke/1887〜1914)、アレクセイ・ヤウレンスキー(Alexej Jawlensky/1864〜1941)、ガブリエ・ミュンター(Gabriele Muenter/1877〜1962)、アルフレッド・クービン(Alfred Kubin/1877〜1959)などが参加した。1914年に勃発した第1次世界大戦によって活動は一時中断されたが、その後マックス・ベックマン(Max Beckmann/1884〜1950)、オットー・ディックス(Otto Dix/1891〜1969)などに受け継がれ、活発な活動を展開したが、ナチズムによって弾圧され、終息した。(資料提供:講談社フェーマススクールズ)The Art Newspaper.comは2004年9月2日に、輸出ライセンスを拒絶され、フランスからの芸術輸出品のシステムに永続する影響を及ぼし、10年以上争われてきた「Jardin、Auvers」が、パリのCour de Cassation(フランス最高裁判所)でゴッホ(Vincent van Gogh/1853 1890)の本物の作品であるという判決を受けました。これで、所有者は海外に販売ができるようになったと報告した。詳細情報はhttp://www.theartnewspaper.com/news/article.asp?idart=11745で知ることができる。


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