もう、こっそりとUPしたいのですが、そういうわけにもいかず(^^;またもや会期終了後になってしまいました。上野の西洋美術館で5/29(日)まで開催されていた「ラ・トゥール展」です。何とか間に合わせたかったんですが、怒涛のひよこ日記書いてる間に会期は終ってしまいましたね〜〜〜
謎の画家の幻の作品の初の展覧会にもかかわらず、会場はすいていました。実は二度行ったんですが(チケットを二枚もらったので)二度ともストレスを感じずに見られてよかったです。絵画もよかったです。真作が少ないのは仕方ないですね。なにしろ、現存する真作は、わずか40点あまりなのですから。
中世の時代には、偉大な画家の工房での弟子による模作がごく普通に行われていたそうです。そう言った作品は、多作な画家の場合は、ただの模作にしか過ぎませんが、ラ・トゥールのように寡作な画家の場合は、画家の作風や工房の様子を伝える上での貴重な資料となるそうで、今回の展覧会も、半数近くの15点は「失われた原作に基づく模作」となっています。それでも、19点は真作。何しろ40点あまりしかない中の19点ですので、この展覧会に脚を運ぶだけて、彼の半数の作品を見る事が出来たと言う事になります。
この展覧会の会場に用意されていた「作品解説」の用紙にあるように、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール(1593-1652)という画家の名は、我が国ではあまり知られていません。上にも書きましたが、作品は、本当に現存するものが少なく、それも常に真作か否か、論争の的となっているそうです。17世紀フランスのロレーヌ公国に生まれ、フランス王家の宮廷画家になるなど、生前は非常に著名で人気のある画家であったにもかかわらず、死後急速に忘れられ、20世紀(1915年)になってようやく再評価されたそうなのです。
彼の生きた時代のロレーヌ公国は、独立国ではありましたが、常に王家(イタリアのメディチ、オーストリアのハプスブルク、フランス王家)と姻戚関係にあったことと、その地理的に要所となる事、また、対抗宗教改革の東の砦であった事から、常に戦乱に巻き込まれていました。1930年代以降は、フランス王国と神聖ローマ帝国が、ロレーヌを舞台に数十年に及ぶ戦争を続けました。そんな激動の時代を、最後まで画家として生き抜いたのがラトゥールでした。
わたし、一番上のチラシを見たときには、特に何も感じませんでした。でもね、ちょうど都美に「ミュシャ展」を見に行ったときに、西美の前にデデーン!と飾られていた看板が、この絵だったのでした。
『ダイヤのエースを持ついかさま師』
この絵には、想い出があるのです。もうかれこれ、14年近く前の事。江戸川区のジェイブ美術館と言ういわゆる「トリックアート」の美術館に行ったんです。本物のアート作品を使っただまし絵ばかりの美術館なので、うまく立体的に見える位置で記念撮影するんですが、暗いので、フラッシュを焚くと、光が入っちゃたりして、なかなかうまく撮れないんです。でも、このときに、会心のできばえだったのが、これだったんです。
ハンサムないかさま師氏(?)の持つカードを、受け取るわたし(なんですよ)。トサカ頭にソバージュ。時代を感じますね(わっはっは)真ん中の写真(一部拡大)を見ると、ね?確かに受け取っているでしょ??この絵は平面なんですよ。
そこにも全体の絵はありました(右)。真ん中の女の人の目線が怪しくて、すごく気になる絵だったんです。誰の絵なのか、ずっと心の片隅で気になっていたので、知る事が出来て、本当に嬉しかったです。(ジェイブ美術館にも絵の名前は書いてあったのでしょうが、メモるのを忘れました(^^;)
この絵の真意は、左三人がグルになって、右端の裕福な青年を騙そうとしている、のだそう。青年はいかさま師ではなかったのね(^^;その怪しげな目線や各人の性格、衣装の描写なども、真作はもちろん、素晴らしく描かれていました。ちなみに、ダイヤのエースがあるのは、パリのルーブル美術館ですが、他に、クラブのエースを持った絵も残されていて、それらはダラス、フォートワース、キンベル美術館で所蔵されています。
ラ・トゥールは「夜の画家」と呼ばれているように、夜の部屋の中で、光源がろうそくの光一本、という構成の物が圧倒的に多いです。昼の光の中での絵も見たはずなのに、こうして時間をおくと、夜の絵しか浮かんできません。
わたしが一番印象に残ったのは、画家の最晩年の作とされる『荒野の洗礼者ヨハネ』です。他の作品が、ろうそくの火と言う光源が必ずあったのに、この絵は光源の全くない絵なのです。それが画家のたどり着いた最後の境地だったのでしょう。ヨハネの手から餌を食べるヒツジが愛らしくて。解説にもありましたが、ラ・トゥールの描く動物は無垢な愛らしさにあふれている、と。もしかしたら、この絵を挙げるのは、変わった選択かも?
ラ・トゥール展
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