【映画】『リバティーン』


ひさびさのデップさま映画。それと、マルコヴィッチが見たくて。
彼が脚本の最初の3行を読んだだけで、出演を決めたという本作品。なんというか、賛否両論ありそうな映画です。

中世の暗黒時代の映画〜みたいな感じで見ていたんですが、17世紀王政復古の時代は近世なんですね。

ここでイギリス近世史の再確認。

清教徒革命=ピューリタン革命
どうも、清教徒と言うと、中国の何かみたいに見えて仕方がないんですが(私だけ??)、清教徒と言うのは、その名の通り、清くて清潔、潔白をモットーとするプロテスタントの一派なのですね。
その人たちが王制を倒したところから(チャールズ一世の処刑)チャールズ2世が王政復古をするところまでが清教徒革命。

清教徒と言うのは、清廉潔白で質実剛健を好む、華美で享楽的なものとは無縁な人たちでした。そういう人たちの支配した禁欲的な時代から、王政復古すると、一転して反動的な時代がやってきました。

享楽的でデカダンスな空気の支配する時代の到来です。

この映画の主人公、ロチェスター伯爵は、実在した人物で、まさに、その時代を象徴するような人でした。享楽的で快楽におぼれ、道徳を否定し、どんな刺激にも決して満足しない、人生に常に虚無感を抱える男。
王政復古を果たしたチャールズ2世に、作家としての才能を愛されますが、その期待にこたえようとせず、どんどん身を持ち崩していきます。

最後は梅毒で死に至るんですが、その描写は壮絶です。(今はまず見ることのない梅毒の末期の症状が見られるという点もこの映画を興味深くしています。)

どうして、こんなに才能と魅力にあふれているのに、こうなって行っちゃうの〜〜??と思わずにはいられません。
たぶん、今のこの啓蒙社会での自由な我々には想像のつかない、この時代独特の空気があったのでしょう。

それを想像することなしには、この主人公を理解することは到底難しいと思うのですが、それにしても、この破天荒で支離滅裂な主人公を、ジョニーデップがなんと魅力的に演じていることでしょう。

最初と最後に、彼のモノローグが登場します。
「これを見たら、きみは私を嫌うに違いない」
ではじまり

最後に
「これでもきみはまだ私が好きか?」
と何度も問いかけて終わります。


最後に問いかける彼の、一瞬ほんの少しだけ泣きそうな、なんとも言えない表情が、たまらなく胸を締め付けます。これが素のロチェスター卿??そんな思いにとらわれながら、映画のエンドロールを見ました。

また、この映画の主軸となる愛人との関係の中で
「きみを妻にしたかった」
というロチェスター卿に向かって、その愛人の女優・エリザベス・バリーの言う
「不確かな愛より、女優としての名声を選んだ」
という言葉には思わず「ひどい!!」と
声をあげてしまいましたし

どんなに冷たくされても、彼を愛し続けた妻が最後に、醜く崩れた彼に頬ずりするシーンも印象的です。
ロチェスター卿を主人公とした舞台が当時は大流行し、エリザベスは、ロチェスター夫人役で主演するんですが、愛人が自分の役で舞台に立つって・・・・


今の時代も、生きにくい時代と言われていますが、価値観が変化していく中で、どんな時代にも、その波にうまく乗れる人と乗れずに破滅していく人というのが、常にいるのだと思います。

この映画は、そこをうまく描いていると思います。



ところで、この映画を見てから英国の近世史を調べてみて、エリザベス1世の父・ヘンリー8世の結婚・離婚歴とか、とんでもない話で、興味深かったです。次は、ケイト・ブランシェットの『エリザベス』そして、ナタリー・ポートマンの『ブーリン家の姉妹』を見たいものです。



イングランド君主一覧


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【映画】『パルプ・フィクション』


これは先週見た映画だったのですが、先週はたくさん見過ぎて(5本)書くのを忘れていました。

タランティーノ監督の出世作。映画好きなら見るべしということで見てみました。

私はどうも、映画なり本なりに「見るべき理由や、意味」
を見出そうとしてしまい、映画としての作りの面白さや娯楽作品としての完成度を
軽視しがちであるのですが、そういった意味で、ガツンとやられた感のある一作。

ユマ・サーマンの美しさ、妖艶さに魅せられ
ブルース・ウィルスの刀さばきにしびれ

最後がこうつながるか!!という驚きと、コレも時系列が入れ替わったりしてるんですが、トラボルタのその後を暗示する部分が最後に出てきたりして、おもしろかったです。

私にとって、好きな映画とは違うかもしれないけど、こういう映画もありなんだ、と言う意味で、見ておくべき映画の一つだと思います。


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庭園美術館

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目黒(白金台)にある庭園美術館は大好きな場所の一つ。
ロトチェンコ+ステパーノワ ロシア構成主義のまなざしを見た日。

その昔は、貴族のお屋敷だったアールデコの建物を
そのまま美術館として利用。
堂々たる風格の門のモチーフからカフェを覗く。


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【映画】『ベティ・ブルー』


この映画を観る前からあった予備知識は「愛するがゆえに狂気に走ってしまう少女の話」ということでした。

なので、どういうわけか「報われない愛の物語」だと思っていたのです。ベティが愛するほど、ゾルグは愛してくれないのだと、勝手に思っていました。
けれど、これは違うんですね。

ネタばれになりますが、この物語は、愛されても愛されても、別のものを求めてしまうベティと言う女の子の悲劇、と言う感じです。

たくさんのレビューに「なんで、破滅的なベティに、ゾルグは我慢できるのか」というようなものがありましたが、私はむしろ「なぜこんなに愛されているのに、ベティは破滅するのか」と思ってしまうのです。

この映画を見て、目が離せなくなるのは、多くの女性はベティの中に、自分自身を見るからなのでしょう。誰もがみんな、こうした部分を持ってるけど、どうにか理性で抑えてる。
まっすぐなベティだから、惹かれるのでしょう。ゾルグの愛だってまっすぐ。ベティのために彼は何度も犯罪を犯します。

ラストが、ある映画とよく似ていたのに驚きました。それが解放であり、愛なのですね。


ところで、何かで読んだのですが、原題の37.2℃というのは、女性が一番妊娠しやすい体温だとか。

もう少し早く出版社からの電話が早くて、もしも子供ができていたら、ベティは狂わなかったのかな。いや、やっぱりいずれ狂ってしまっていたのでしょう。
この映画が公開されたころ、18歳のときに、見ておきたかったなぁって思いました。


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【映画】『フォロウィング』


『メメント』の監督・クリストファー・ノーランのデビュー作。1時間ちょっとの短い映画なのですが、短さも感じず、よくまとまって、おもしろかったです。

キャストの俳優さんたちもすべて無名だとは思えぬよさで、(特に主役の俳優さん、なかなかいいです)私としては、メメントよりこっちのほうが好きです。

時間軸をバラバラにした話と言うと、伊坂光太郎の「ラッシュライフ」を思い出しますが、時間を逆回しにした「メメント」は、主人公が記憶障害で、同じ感覚を味わえると言うアイデアが斬新ですが、この話みたいに、順番がイマイチわからないほうが、つくりとしては難しいのではないかと思うのです。


それにしても、最後のどんでん返しが、本当にすごい。そういうことだったかぁ〜〜と、思わず膝を叩いてしまいました。やられた。


この映画を見たおかげで、新しい知識も増えました。
『フィルム・ノワール』


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【映画】『きみに読む物語』


とにかく泣ける映画と言うことで、一度見たかった映画。大泣きしてしまいました。
二日間で5本の映画を見たんですが、その中で、いわゆる「名作」とか「大作」と呼ばれるものは、コレだけなのだと思います。そういう意味で安心して見られる映画です。


この先は、ネタばれになるので、これからこの映画をご覧になる方は
見ないでくださいね。




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【映画】『マイ・ブルーベリー・ナイツ』


『ガタカ』という映画を取り上げたとき、ジュード・ロウファンの方から、いくつかコメントをいただきましたが、この映画、ジュードのイケメンぶりに、胸キュンです☆そんなイケメンなジュードの一途な感じにときめきますが、不器用なキスも、前の男を忘れるのに一年もかかるのも、我々の持つアジアンな恋愛事情に近い感じです。

欧米の恋愛映画って、告白した直後にいきなり、ベッドイン(死語?)してしまったりして、日本人の感覚だと、え?いきなり?!って、やっぱり思ってしまう。最近は、日本の映画やドラマも、かなり欧米に近くなってきて、だから、我々の母親世代などは、韓流映画が一番、しっくりくるのかもしれませんね。

まぁでもこの映画は、実は主人公の恋愛はおまけのようなもので、主人公が旅する中で出会う、幾人かの人間像が見ごたえがあるのだと思うのです。

アル中の警察官とその妻とか、ギャンブラーと父親の関係とか。さすがのキャスト、さすがの名演。警察官の悲哀と、妻の苦悩、ギャンブラーの孤独感。

特にナタリー・ポートマンの美しさは溜息モノ。そこまでは、ノラ・ジョーンズ、そこそこかわいいと思ってたけど、ナタリーが出てきた途端、野暮ったい女の子になっちゃいました。でもそれが彼女の魅力でもあるのでいいのですが。
ノラについても、賛否両論のようですが、私ははまり役だと思いました。おいしそうにブルーベリーパイを食べる彼女はとってもチャーミング。んでも、ハリウッドの超大作には、彼女は向かないかもしれないなぁ、とも思います。


「道を渡るのはそう難しいことじゃない。道の反対側にいる人によるのだ」
エリザベスの思う、哲学的な言葉の数々が、まるで宝物のようで、抱きしめたくなるような、いとおしい映画だと思うのです。

私はいい映画だと思いました。映像が美しいし、おしゃれだし、深い。けれど、起承転結のはっきりしたものを好むような人には、向かない映画かもしれません。


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【映画】『メメント』


さてさてやっぱり、この手の映画は夫のおススメ。面白かったです。

時系列に見れば、なんということのない話ですが、物語を逆回しで見せることで、謎が明らかになって行くと言う斬新なアイデアの光る作品。

主人公は、妻を強姦&殺された時の衝撃で、10分前の記憶が消えてしまう障害を抱えるようになります。なので、この映画はまず、結末から入って、10分分逆回しにして、それから、さらに10分前に戻り、主人公がすでに忘れている10分前の出来事を、観客も一緒に体験することができ、だんだんと謎が明らかになって行くと言う仕掛け。

普通の人にとっては謎でも何でもないのですが、主人公は記憶が消えているので、過去の出来事は主人公にとっては、すべて謎で、手掛かりは自分の残したメモと、体中の入れ墨だけ。

途中にはモノクロの部分が挿入されていて、主人公はサミーと言う記憶障害の男について電話で淡々と語ります。
これは、結末よりも過去の話で、時系列順に言えば、最後からどんどん時間をさかのぼって行くカラーシーンと、一番古い過去から時系列に沿って進むモノクロシーンが、ラストシーンで、結びつくようになっているわけです。

これはまぁ、映画の技法について話していますが、ストーリーについては、ネタばれになるので言及しません。

難しい映画です。私もまだ一回しか見ていませんが、もう一回くらい見ないと、理解できないかもしれないです。いろんな人が語っていますが、主人公は障害があるけれど、どんな人も、多かれ少なかれ、自分で造り変えた記憶を正しい記憶と信じて生きているものなのでしょう。
そんな記憶のあいまいさや、不確かさが、この映画でのテーマなのかな、と思います。

たとえば、この映画を私は面白いと思いましたが、このブログに「面白くなかった」と書いたとしたら、長い年月ののちには、「ああ、自分はこの映画は面白くなかったんだ」と思うでしょう。それが「本当のこと」となるわけです。


主人公と、主要人物のテディとナタリーが全員うまくて、見ているときも、見終わってからも、いったい誰が正しくて、何が真実か、やっぱりわかりません。
一応、こういうことなんだな、と自分なりの解釈はしましたが、それが正しいかどうかは謎。


「それでいい」映画なんでしょうね。


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【映画】『CUBE』


ちょっと久しぶりの映画。この手のは、オットのおススメ。

おもしろかった!!ドキドキして、どうなるかわからなくて、最後まで気を抜けなかった。
人生もこのキューブのようなものだよなぁ、なんて、ありきたりなことを思った。

忘れているけれど、我々のこの世界だって、一寸先は闇かもしれないのだ。
だけど、そんなことは忘れていないと、怖くて、身がすくんで、動けなくなる。


キューブもそう。
未来に希望を見出せないものは生き残れない。
あるいは・・・


この先はネタばれになるので自粛。


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【展覧会】ロトチェンコ+ステパーノワ ロシア構成主義のまなざし

100623_1760203.jpgいろいろなところで、とっても評判がよかったので、最終日ぎりぎりに見てきました。

おもしろかったです。ロシア革命後の、フランスが印象派だった時代に、こんなステキデザインを作り出すロシア人カップルがいたとはっ。
ロトチェンコは、絵画よりデザインの人だと思った。最初のほうの油彩とか、コンパスを使ったアートより、ポスターやロゴデザインのほうが、数倍魅力的だし、写真もよかった。

ステパーノワは、ロトチェンコがコンパスでガリガリ書いてたときに、手書きの暖かみのあるものを描いていて、こっちのほうに惹かれるものがあった。
やっぱりアナログが好きだなぁ。

ポスターも、キチンと原画が展示されていて、あたりまえだけど、キチンとレタリングも手書きだし、色も手で塗られていて、なんだか、今なんかパソコン使えば一瞬で出来ちゃうようなものだけど、当時はだれにでもできるものじゃなかった。
いい時代のいい仕事だなぁ、なんてぼんやり思った。

あとね、なぜかロシアの言葉にひかれる。ロシア語なんて覚えたって、何の役にも立たなそうだけど、あの文字とか独特の雰囲気とか。
たまらなく好きなのだ。

100623_1760202.jpg
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