藤本能道の色絵

040917fujimoto_noudou.jpg9/17(金)、最後の締めは、この展覧会。サブタイトルがすごいです。『昭和天皇にささげた幻の食器』ですから。

藤本能道さんというのは、ご存知の方もいらっしゃるかな?わたしは、失礼ながらはじめて知りましたが、人間国宝の陶芸家・絵付師で、重要無形文化財「色絵磁器」保持者の認定を、1986年に受けた方です。1976年に、茨城県植樹祭の折の昭和天皇・皇后両陛下のためにディナーセットを作りました。それを藤本氏に依頼したのが、この美術館の創設者であり、以前から、藤本氏の作品展を開催するなどで、交流のあった、菊池智氏でありました。

このディナーセットは、和食器でありながら、西洋のディナーのためのフルセット15人分、飾り皿、スープ皿からフィンガーボウルに敷く皿まで作られています。とても忍耐力の必要な仕事だった、ということですが、手描きで、同じモノをいくつも作ると言うのは、相当きつい仕事なのだと思います。(自分でも絵付けをしているので、多少は気持ちがわかります)また、まったく同じではなく、少しずつ構図や色などを変えてあるのもまた、工夫が必要で、大変だったのだろうと推測できます。

で、どうしてこれが、幻の食器かと言えば、このとき、茨城の菊池氏の自宅で両陛下に供して以来、一度も使用される事も、誰の目にも触れる事なく、大切に保存されてきたからなのだそうです。

最初、この展覧会を絵付けの先生から薦められたとき、図録を見ただけだと、それほど素敵には思えませんでした。煌びやかな洋食器に比べると、とっても地味に見えたんです。(藤本先生(1992年死去)、失礼をお許しください)でもね、やっぱり実物は素晴らしいです。美しいと言うのではなく、味わいがあるのですね。力があります。魂がこもってると言うのかな・・・最終的には、こういうものが描けたらいいな、と思わせるものでした。それには、ただ模写してるだけじゃダメだとも思いました。自分で描きたいものを、自分の線で描かなくては。そしてもっともっと、自分自身の腕も、中身も磨かないと。まだまだ今のわたしは、人間が練れていなくて、無理そうです。

菊池寛実記念 智美術館


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