草間彌生展・永遠の現在

竹橋の近代美術館で明日19日まで行われています。草間彌生の初期から最近までを振り返って見るのに、ちょうどいい展覧会です。今までとくに草間が好きでなかったわたしも、非常に楽しめたので、「食わず嫌い」の方も、一見の価値ありだと思います。この春に、MORI美術館で行われた「クサマトリックス」が話題となった草間彌生。初期の頃から、一貫して水玉や網目を多用した表現様式を変わらず続けていますが、個人コレクターのコレクションを集めた展覧会『アートがあれば』でも、多くのコレクターが草間の作品を所蔵していたように、非常に人気の高いアーティストです。

水玉や網目やなにやら不気味な増殖する物体の集合体である作品たちは、非常にグロテスクで、わかりにくく感じますが、それらは草間の生い立ちや、幼児期の体験などと密接して出てきたものであり、そのルーツを探って見ると、非常に作品たちが興味深く、面白く見えてくるから不思議です。

草間彌生は、幼い頃から幻覚や幻聴を見たり聴いたりしたそうで、それが「水玉に埋め尽くされる」という「自己消滅」の恐怖に繋がっています。また、長野県松本市にある草間家では、男性が非常に横暴で、女性はいつも男性に踏みにじられ、泣いて暮らしていると言う様子を、いつも見て育った彌生は、男性を嫌悪し、その嫌悪の象徴として、男性器をモチーフに作品作りをするようになります。

一連の銀色のオブジェのシリーズなどは、すべて男性器(男根=ファルス)をモチーフとして作られ、これらを作ることで、草間は男性への嫌悪感を、克服しようと懸命に戦っていたともいえるのです。とはいえ、命の凍結されたような男根の中で、一本だけそそり立つモノに、薬缶をぶら下げた「The Man」はなかなか強烈で、思わず「あげまん」と言う映画を思い出してしまいました・・・

その他、展示内容の概要を。

セクション・1「カボチャ」
明るく楽しい雰囲気で始まって、導入部としては最適かも。黒と黄色のドットで表現されたカボチャは、草間の代表作であると言えるでしょう。このドットを描くのは、相当忍耐力が必要だろうなぁ、と思いつつ見ていました。

セクション・2「信濃の灯」(2000年)
鏡の間の中央に、電飾を施した小部屋があり、窓から覗くことができるようになっています。タイトルの印象の古風さとは、まったくイメージの違った作品。四方に自分が見えるわけですが、これから何が始まるのか、意味もなく不安に襲われます。テーマパークなどにこれがあっても、きっと怖くないのでしょうが。電飾の中にも鏡があり、そこに写る自分の姿が、なんだか自分とは別物のように見えてきます。

セクション・3「1970年代のコラージュを中心に」
自画像とタイトルはついていても、グロテスクな植物のような物体の中に、蛾と卵の孵化する様子がコラージュされていて、草間の中に男性を嫌悪すればするほどに浮かび上がる、自分の女性と言う性に対する苦悩のようなものを読み取ったのは、深読みしすぎ??また、戦争をタマゴで表現し、網で宇宙や夜明けを表現したものなど、視覚的には美しいものも多い。その他、マカロニを貼り付けてできたドレスなども展示されていました。

セクション・4「水玉脅迫」(1996年〜)
春のクサマトリックスの中心的展示となった巨大な水玉のバルーン作品である。東京では黄色と黒だったけど、他の会場では、また違ったものになるのかもしれないそうだ。

セクション・5「モノクロームの世界」
1958年、ニューヨークに移り住んだ頃に始めた「無限の網」近くで見ると、確かに立体的ではあるのだけど、これに関しては、うーん、なんとも感想を持ちえませんでした。「The Man」はココに展示されていて、これだけは目立ってました・・・

セクション・6「水上の蛍」「I'm Here,but Nothing」(2000年)
「I'm〜」はあらゆるものが蛍光の水玉に覆われた暗い部屋なのだけど、その中に並んで、奥の部屋にある「水上の蛍」を見る順番を待つのです。ここはかなり長蛇の列となっていました。「水上の蛍」は、真っ暗な部屋の中ほどまで、通路があって、その上に立ち、一面の美しい電飾の光に囲まれると言うもの。美しく幻想的。これらはすべて草間の「自己消滅」というテーマが表現されたもので、美しいのに、漠然とした不安感が募ってくる。「水上の蛍」は、できれば、本当にひとりきりで見たかった。

セクション・7「銀色のオブジェ」
本来ならば、生命の象徴である男性器(男根)を、無機質な銀色で彩色することで、「死」と言うイメージを表していると言える。様々な美術館に所蔵されている同じテーマ作品を、一同に見られたのは、かなりうれしかった。また、すすけた黒で表された「冥界への墓標」と言う作品が気に入りました。

セクション・8「宇宙の心」(2002/2004年)
巨大なミラーボールがぐるぐると回っている。こういうのは、ちょっとよくわからない(^^ゞポリポリ

セクション・9「紙の上の小宇宙 -1950年代の水彩画を中心に」
実はこれが一番よかった。自分の水彩画を描くせいか、水彩画の難しさもよくわかっているからこそ、言えると思うのだが、やはり草間には強烈な個性と表現力があると思う。1948年の「玉ねぎ」に始まり、オレンジと黒の色彩が印象的な「雑草」「眼」のなんともいえないグリーンはすごく素敵で、また、モノクロの「花」の形に、なんとも言えず惹かれるものがあった。

セクション・10「天国への梯子」(2000年)
単なるチューブでくるまれた、色の変化していく梯子なのに、なんだかとても美しく見えるのは、この会場で、草間マジックに、わたしもかかってしまったのだろうか・・・思わず昇って「天国」へ行ってみたくなります。

セクション・11「壮麗な開花 -1980年代以降」
真っ赤な作品が多かった。赤に白の水玉で、夏の花を表現した「夏・1」「夏・2」赤く染めた軍手を並べた「赤い地平線」赤い触角のようなものが地面から、生えているような「再生の瞬間」など。赤い花の残骸のようなものの描かれた「残芽?」(自分でメモした文字が読めない(^^ゞポリポリ)が、なんだか印象的でした。

個人の展覧会の図録は買わない主義なのですが、これはかなり欲しくなりました。というか、草間の作品、わたしも欲しいかも・・・

リンク 公式サイト
弐代目・青い日記帳「草間彌生?永遠の現在」展
アルカリブログ「草間彌生?永遠の現在」展(東京都国立近代美術館)
現代アート道楽の日々。「草間彌生:永遠の現在」
ひだまりに言い置く「東京近代美術館と草間彌生展」
村崎式子日記「草間彌生 ?永遠の現在」


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