『ミュシャ展』〜華麗なるアール・ヌーヴォーの誕生

050323mucha.jpg3/27(日)まで上野の東京都美術館で行われていたミュシャ展を見てきました。素晴らしかったです。(3/23(水))

アール・ヌーヴォーの華やかな作風で知られるアルフォンス・ミュシャ。(ミュシャはフランス語風読み。彼の故郷チェコではムハ)そんな彼はきっと、その描く絵のように、美しく華やかな生涯を送ったのであろうと思っていました。しかし、アール・ヌーヴォーが過去のものとなり、もともと装飾芸術家ではなく、画家を目指していたという彼自身が本当に描きたかった、故郷チェコに捧げた大作《スラヴ叙事詩》などを見ることができて、人間・ミュシャを知るよい機会となりました。


  

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また、彼は長くパリに住み、パリ風の女性を描きながら、パリの女性を嫌っていて、のちに帰国した本国でスラブ風の女性を描くときに、生き生きと描いていたのも印象的でした。彼の描く美しい女性たちの特徴と言えば、流れるような美しい髪と、風に揺れる身にまとった薄い衣装などの描写。それは彼の卓越したデッサン力のなせるもの。絵画にはまずデッサン力ありき、ということを思い知らされた展覧会でもありました。

彼の素描は本当に素晴らしいですし、その正確さ、美しさは印刷物からでも、十分に見て取ることができます。先に見に行った友人から「みんな食い入るように見入っていたよ」と聞いて、ポスターなのに?と思ったりしたんですが、実際に見に行って納得。たとえ印刷された物でも彼の描くラインの美しさはほれぼれします。今まではがきや本などのサイズでしか見たことがなかっただけに、あのサイズで、彼のタッチを見ることができたのは、貴重なことだったと思います。

伝説の女優サラ・ベルナールとの運命的な出逢いと、その庇護を受けての装飾芸術家としての素晴らしい仕事の数々。絵画の技術力の確かさとともに、アール・ヌーヴォーの時代の芸術家に共通して言えるのは、商業デザイナーとしての類いまれなセンスを持ち合わせていたことでしょう。(服飾デザイナーから出発したラリックやガレなどもそうですが)

美しい商業用ポスター以外にも、彼の心の葛藤を映し出していると言える水彩画や、晩年の油彩など、実に多岐にわたる見応えある展覧会でした。それだけに、混雑していたのが辛かった。3フロアに渡っていたのですが、最初の部屋だけで1時間以上かかってしまいました。話題の展覧会は、会期の最初の方に行かなくては、とつくづく思いました。

『ミュシャ展』公式サイト
正式名称・ミュシャ財団所蔵『ミュシャ展』プラハからパリへ〜華麗なるアール・ヌーヴォーの誕生


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