「お金」と「情報」

『「お金」と「情報」』(「ワイングラスのむこう側」林伸次)
僕はお店って「物を買う場所」でもありますが、実は「新しい情報を得る場所」でもあると思っています。別にそういったライバル店の人じゃなくても、「今はこういう商品が売れてるんだな」とか「北欧にはこんな雑貨があって、こんなに高くても買う人がいるんだ」とか「この商品の配置とライティング参考になるな」といった「情報」も手に入れているはずなんです。そして僕はそういった情報に対しても、「対価」を払う方がいいのではと思うんです。

            - 中略 -

インターネットのコンテンツも全てが無料だといつかスカスカになります。「払える大人がお金を払う」が、今の僕たち大人に求められていることだと思います。(※)

何年か前に、大阪の自治体が、クリエイターに無償でキャラクターの制作を募集して、物議を醸しだしたことがあった。それより少し新しい記憶では、アンパンマンのやなせたかしさんが、過去にたくさんの自治体のキャラクターを無償で制作したことに対して、漫画家の吉田戦車さんが自治体へ物申したことが話題になった。

その際に、FBでこれらの件を取り上げたりしたのだけど、ついたコメントの中に「情報と言うのはまったく商品価値を見なされていない」という発言がとても多かったのを記憶している。友人のYさんは、誰もが認める第一線で活躍するフリーのエディター&ライフスタイルジャーナリストだ。私が年の差婚でFRaUに載った時も、取材してくれたのは彼女である。クリエイターから財界人、文化人から芸能人まで幅広い人脈を持つ彼女のもとには、いろんな問い合わせが来るそうで。「○○に詳しい方を教えて(紹介して)ください」と言われて、名前と連絡先を教えると、それきり、お礼のメールすらないこともあるという。それも、まったく知らない相手からの問い合わせだったりもする。何だそれ?って感じだよね。相手は、教えてもらうだけだから、それくらいいいだろう、教えてくれて当然って思うんだろうか。

でもさ、例えば、婚活している女性が、お医者さんや弁護士などの高収入な男性と結婚したいって思ったとして、でも簡単にそう言った人とは知り合えないから、すごく高い会費払ってセレブ専用の婚活パーティーに参加したりする。それは医者や弁護士と言う人脈を生かしたビジネスで、実際どんなに高くても需要はある訳で。だから、主催する側も、それなりの対価を払って、そう言った方たちを会員に獲得すべく色んな戦略を行っている訳で。

前出のYさんにしても、その方たちと知り合うために、その方たちとの関係を維持するために、お金や時間をかけて努力をしてきている訳で。それをどうして、見ず知らずの人に無償で分け与えなければならないのか。しかも、Yさんはまったくの初対面から関係を築き上げたというのに、全く知らないその人は「Yさんのご紹介でご連絡しました」なんて、ちゃっかりYさんの今までの努力の恩恵まで受けようとしている。先方だって「Yさんの紹介なら無下にも出来ないし」ってなるもんね。あー厚かましい。

私もたまにイラストレーターの卵と自称する、よく知らない人から「編集者紹介して欲しい」とか言われますが、正直、上記とは違う理由で紹介できない。だって編集者って暇じゃないのね。一回仕事したくらいのイラストレーター(私のこと)の紹介で、自分のところで使えるかどうかわからないイラストレーターの卵に会ってる時間なんて無いのだ。そんなこと、恐れ多くて口にも出せない。もし紹介できることがあるとすれば、仕事を依頼されたときに、たまたま自分にどうしても描けないタッチだったり、たまたまどうしても他の仕事が忙しくて受けられない時だったらありえるかも。でもそう言う時は多分、よく知らない自称イラストレーターの卵なんかじゃなくて、ちゃんとバリバリ仕事してる、よく知ってる人にするよね。だって自分の信用問題にかかわるもん。

やっぱりね、情報にもきちんと対価を払わないとね。弁護士や税理士の知識だけじゃなく、雑貨屋の店主の知識にもね。払える大人がきちんと払う。それって大事なことだと思うのだ。


※注)この記事(「ワイングラスのむこう側」)は課金制なので、特に後半部分は本当はここに引用しちゃいけないのかもしれないけれど、どうしても心に響いた言葉だったので、一行だけ引用させて頂くことにする。(引用の前半はおそらくこのまま課金せずとも、読めるのではないかと思う)この結論に結びついた内容もとても素晴らしいので、ぜひ会員登録してお読みください。


  •   このエントリーをはてなブックマークに追加  

<< hideさんがもし生きていたら。。。 戻る ホントにフォント。アポロが月に行った年。 >>