Paradise on earth 〜この世の楽園〜

030730tassha_tudor1.jpgアメリカの人気絵本作家・ターシャ・テューダー。日本語に訳された著書は少なく、あまり知られてはいませんが、その素朴で豊かな田舎での暮らしぶりに、憧れるファンは数多い・・・この画像の本は、自宅にあるものです。もともとわたしは、「この世の楽園」と呼ばれている、ターシャのガーデンのファンで、彼女のような庭が作りたいと、常々憧れていました。

昨日、図書館に行って見つけたのが、ターシャの娘・ぺサニーの書いた「小径の向こうの家」と言う本でした。すっかり引き込まれて、図書館の中で読みきってしまいました。この本を読んで「ターシャという人は、本当の意味でのスーパーウーマンだ」と思いました。なにしろ、ほんの数十年前に、ボストンでの社交的な暮らしよりも、電気もガスも水道もない田舎暮らしを望んで、バーモントに移り住んだのです。

動物を飼い、野菜を育て、美しい庭を造り、部屋を常に美しくセンスよく飾り、井戸水で洗濯をし、手の込んだ食事を作り、家族全員の分の洋服をすべて仕立て(時には機織までして!)、クリスマスやバレンタインなどのイベントは、誰よりも楽しく盛り上げ、子供たちには愛情深い母親であり続け、なおかつ著名な画家でもあったのですから・・・

彼女はあるいは、影武者がいたのでは?分身の術が使えたのでは??と疑いたくなるような働きぶりです。それも、彼女は決してそれを苦にしたりはしていません。また、彼女の意向に沿おうと努力したにもかかわらず、どうしても田舎暮らしが性に合わなかった夫と離婚してさえも、彼女は自分の生き方を貫きます。それは彼女が尋常でないほどの、強い意志と強い信念を持った人だという事を表しています。

彼女は言います。「満足するというのは、そういう精神状態にあるということです。幸せとは心の持ちかたのことだと思います」「人生はやりたいことを全部やれるほど長くはありません。生きているだけでもなんて素敵な事でしょう」「もし年に一度しか星を見られないとしたら、見たときにどう思うか、想像してみてください。こんなすばらしいものがあるかと思うでしょう」こんな風に生きて行きたいものです。

彼女には、他にもたくさんの著書があります。どうぞその素晴らしい楽園の中に、身を浸してみてはいかがでしょう?


#gardening


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恋愛中毒/山本文緒

とりあえず風邪なので、ゆっくり眠って本を読んでいた
先日からぽつぽつ読んでいた山本文緒の「恋愛中毒」
途中からぐいぐい引き込まれて、一気に読みきってしまった
読み終わったあとも、しばらく放心状態になっている

ストーカーと言う犯罪が犯罪として扱われるようになってまだ久しい
人を愛しすぎたゆえ、あるいはゆがんだ愛情ゆえの犯罪

けれどそれは何も特殊なことなんかではないのだ
誰でも自分がそうした罪を犯す危険を常に従えている
一皮向けば人間はみな同じ
弱くもろい部分を誰もが持ってると思う

一見異常な女性を描いてるかのようなこの作品が、
世間の女性たちからこんなに共感されたのも、そのせいなのだろう

人を愛するって、決して美しいばかりじゃない
愛する気持ちの裏には、いつもほんの少しの憎しみに似た気持ちが隠されてる

人はそこから生まれる罪悪感から、他人に優しくなれるのかもしれない


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冷静と情熱のあいだ

名古屋に帰省中。
今日午前中母と買い物して、友達との待ち合わせとの
あき時間に、お茶を飲みながら読み終えてしまった
とてもせつない物語だった

夜は友達と6人で会った
一番仲のいいグループで、いつも団体で旅行したりした
仲間なのだけど、もうすっかりご無沙汰しちゃってて
一番会ってない子は3年ぶりだった
第一声「久しぶりだね!!」と歓声が上がって
「なんか都会の人って感じ」と言われた
いやでも、今私が住んでるところって、名古屋よりも
遥かに田舎なんだけど・・・(爆)

「ぴぴちゃんは、変わらないね」
それは昨日会った友達にも言われた
私は童顔なので、そろそろ一気に老け込むはずの年齢なのだけど
父親がやっぱり若い頃から童顔な上、年をとっても
やっぱり若く見えるという恵まれた人だったのだ
ウチの両親の新婚当時、6歳年下の妻よりも若く見られた父は
亡くなる前に入院してた病院で、伯父(父の兄・8歳年上)と
親子に間違えられてた(爆)(もちろん父は息子だと思われた)
伯父はさすがにかなりショックだったようだ

若く見られるのはありがたいけど、私は決して美人ではない
そこそこだった若い頃のまま、キープしてるという感じである
私に変わらないね、と言う少し落ち着いてきた友人達は
みんな若い頃は本当に可愛らしかった
そう考えると、収支決算はトントン、というところだろうか
世の中ってうまくできてるものなのかもしれない
      
        ********

「冷静と情熱のあいだ」(ネタバレ注意)
人を愛するということは、残酷な事だと思った
特に私は、主人公の二人よりも脇役に感情移入してしまったので、なおさらそれを強く感じた
マーヴを愛せないとわかっていながら、あおいが忘れられないとわかっていながら、何年もこの二人に振り回されてきたマーヴと芽実が、その後どうしてるかのほうが、正直なところ、この二人のその後よりも気になってしまう
 愛せない相手に対しては、人は本当に残酷なものだ
もちろん、人の気持ちなどは揺らぐものだ
 この二人にしても、時には今の相手に愛情に近い感情を感じつつも、でも8年という年月の果てに、やはりお互いしかないと思うように至ったのだとは思う
 揺れ動くあおいの感情の描写は見事で、彼女なりの苦悩も汲み取る事が出来た
ましてや、自分が彼女の立場であれば、もう終わってしまった恋をひきずって、ずっとひとりでいるのはきっとすごく難しい事だと思う
 人はそんなに強いものではないから
 それでも、順正と芽実の別れ、あおいとマーヴの別れのときには、せつなくて涙が出てきた
きちんと完結した恋なら、終わりがきても、それなりに昇華させることはできる
 でも、片方だけの想いはどこへも行き場がない
 この二人がドゥオモで再会を果たしたあと、普通ならここでハッピーエンドで、それだけだったら私はこの小説をこんなに好きにはなれなかったと思う
 ここで、横たわる月日の流れという現実の前に負けそうになったことで、改めてこの愛の奇跡がよけいにくっきりと浮き彫りにされたような気がする
 8年という月日は、離れて過ごすにはあまりに長い
 その時間を埋めることができたときに、このふたりの奇跡は本当にはじまるのだと思う


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