相田みつを美術館・第26回企画展『いのちのバトン2』〜教科書に見る相田みつを〜

7/27(火)、有楽町の国際フォーラム内の相田みつを美術館に行きました。感動で、涙腺が緩みっぱなしでした。正直、若い頃、いえ、最近まで、彼のことをそれほど偉大だとも、好きだとも思っていなかったのですが、今回、もう本当に感動して、ここは、大好きな、お気に入りの場所になりました。
傲慢に生きていたのかもしれません。何でも、与えられるものを、当然として、不満ばかり抱えていたような気がします。でも、今自分がこうして何不自由なく暮らせるのは、当たり前のことじゃない。
心に染みた、みつをの言葉。「いいことは、おかげさま。悪いことは、身から出たさび」
本当にそうなのです。人は謙虚でいなくてはいけないことを、改めて思い知らされます。きっと、悩みや苦しみのないときと、本当に苦しんで壁にぶつかっているときでは、ここでの感じ方は、全然違うものなのかもしれないなぁ、と思いました。
相田みつをは、今では教科書にも載ってるのですね。特にタイトルとなった『いのちのバトン』この詩で、まず泣いてしまったわたし(^^ゞポリポリ この詩を、子供の頃から胸に持って育った子供は、自分の命や人の命を大切に考える人に育ってくれると、信じたいです。
マネ、モネ、ルノワールから20世紀へ- 巨匠たちのまなざし

7/15(木)締めは、ブリヂストン美術館の「巨匠たちのまなざし」。19世紀末から20世紀にかけての作品を一挙に見ることが出来ます。また、19世紀末から発展した印象派の画家たちが、その後、何を考え、どう自分の絵画を方向付けて行ったかがわかります。ちょうど、19世紀の絵画を、名古屋ボストン美術館で見てきた後だったので、タイミングとしては、とてもよかったかも。
そしてここ、ブリヂストン美術館は、とても好きな美術館。常設展もとてもいい作品がいっぱいで、個人のコレクションだと言うことを考えると、とても素晴らしいし、それを一般に公開してくださったのは、とても大きな意義があると感じます。
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最初が19世紀ということですが、「西洋伝統絵画」として、17世紀のレンブラントから展示が始まっています。そしてコロー、ミレーと続き、いよいよ印象派。実は、最近西洋美術の勉強を始めるまで、印象派はあまり好きではなく、興味も余りありませんでした。むしろ、ポスト印象派のゴッホやセザンヌが好きだったんです。
特に、ルノワールの人物画は、どうも甘ったるい感じがして、あまり好きではありませんでした。勉強するにつれて、本当に庭を愛して、睡蓮を愛したモネは、だんだん好きになりましたし、ドガは、以前にこの美術館の『水彩の力、素描の力』という展覧会で、ラフなデッサンと軽く塗られただけのものでありながら、まるで踊り子の息遣いまで伝わってきそうな作品に、感動して以来、好きになりました。
印象派を代表する画家といえば、モネとルノワールです。彼らは仲がよく、一緒に連れ立って絵を描き、しばしば同じモノを描いた作品が見られます。ほとんどの作品は、それぞれの個性が明確に出ていて、すぐに区別がつくのですが、中には、晩年、本人たちですら、どちらが自分の作品かわからなかったというほど、似通った作品を描いたこともあるそうです。
が、そんなふたりの、印象派以降の動きは、まるで違っています。古典的なものに、改めて美を見出し、ともすれば、軽薄に成りがちな印象派的な画法をやめ、もっと、骨太な、古典的な作風に立ち返ったルノワールに対して、モネは、最後まで印象派風の画風を捨てなかったそうです。このことがモネをして「もっとも、印象派らしい画家」であるといわしめているのでしょう。
その後も、さまざまな作品を堪能できます。セザンヌ、ゴーガン、ゴッホ、ロダン、マティス、ルオー、ピカソ、モディリアーニ、キリコ、クレーなど、西洋美術史に登場する主要な画家の作品は、すべて網羅しているといっても過言ではありません。もちろん、日本人のものもたくさんコレクションされています。フジタの油彩画もとってもよかったし、浅井忠なども好きな画家です。絵画を普段ほとんど見ない人も、絵画に詳しい人も、どちらも楽しめる美術展だと思います。
で、ここは、平日も8時まで開いているのも嬉しいところ。わたしはすっかり、ギリギリまで見ていて、迷惑だったでしょうに、「じっくり見てくださってうれしいですよ」と言っていただけて、ホッとしました。しかし、この日は4つの展覧会をはしごして、疲れきったらしく、翌週は、暑さも手伝って、どこへも出かけられませんでした(^^ゞポリポリ
「弐代目・青い日記帳 」さんの「巨匠たちのまなざし」展
「SAISON de LYCEE(セゾン・ド・リセ)」さんの「巨匠のまなざし展(ブリヂストン美術館)」
ピカソと同時代の作家 版画展

ちょっと前後しましたが、丸善でのWildlife Art展のすぐ横で開催されていた版画展も見ました。これは、画廊が出向して、展示即売会を行っていたものなのですが、さすがピカソ!版画と言えども、手が出ません(笑)
ココに残しておきたいのは、わたしはフジタ(藤田嗣治)がすごーく気に入ったということ!彼の版画は、本当に素敵です。とにかくおしゃれ。早い時期にパリに移り住んで認められた彼は、欧米人にはオリエンタリズムを、日本人にはパリのエスプリを感じさせるそうです。
そういえば、オノヨーコ展のときに、東京都現代美術館の常設展で見た駒井哲郎の銅版画もすごくよかった。色彩が豊かで、やっぱり何となく小粋なセンスを感じます。どの作品も好きだったので、感性の向きが似てるのでしょうね。そう言う出会いはうれしいものです。
造形作品で見る 岡本忠成アニメーションの世界

Wildlife Art展と同じ7/15(木)、東京都国立近代美術館フィルムセンターで、『造形作品で見る 岡本忠成アニメーションの世界』を見て来ました。いやはや、東京には、いろんな美術館があるものです。ここフィルムセンターは、日本の映画の創生期から、すべてを知ることが出来ます。外国人が、明治期の日本の風俗を撮った貴重なフィルムが、寄贈されているのを見られたり、無声映画の頃の貴重なフィルムも見られます。かなり映像が荒いので、じっくり見てると、疲れてきますが・・・(^^ゞポリポリ 常設展示は、その当時からのフィルムやカメラ、映画に関する写真などが展示され、NHKの人形劇や手塚治虫の初期のアニメーションなども見られます。
岡本忠成さんのアニメーションは、手作りの人形を使われたものが多いことが大きな特徴で、彼は、人形アニメーションの社会的認知に大きく貢献しました。使われた人形が展示されている横で、使われたアニメーションの一部を見ることが出来ます。そこに置かれてる人形が、画面の中では、生き生きと動き出す・・・それが楽しくて、じーっくりと、全部見てしまいました・・・(^^ゞポリポリ
1991年の『注文の多い料理店』は、彼の死後、彼の意思を継いで作成されたものですが、ユーモラスでありながら、暗いトーンは絶妙で、そういえば、当時この映像を見た記憶があります。そのときには、この方のことを、少しも知らずに見ていましたが。
第1作『ふしぎなくすり』(1965)から、『おじいちゃんが海賊だった頃』(1968)、『南無一病息災』(1973)、『あれはだれ?』(1976)、『おこんじょうるり』(1982)、そして遺作となった『注文の多い料理店』(1991)まで、一作ごとに、それまでとは、異なる表現様式に挑むと言う映画ポリシーは、他に類を見ないものだそうです。そして、きっと、懐かしいと感じる作品がいくつも見つかることと思います。
会期:4/6(火)〜6/27(日)、7/6(火)〜8/29(日)
また、別料金¥500で、前篇を見ることもできます。
上映スケジュールはこちら
「日本アニメーション映画史」
国立近代美術館フィルムセンター
ドラクロワからムンクまで 〜19世紀ヨーロッパ絵画の視点

もう一ヶ月近くたってしまいましたが、7/7に名古屋のボストン美術館に、『ドラクロワからムンクまで 〜19世紀ヨーロッパ絵画の視点』を見に行きました。名古屋ボストン美術館は、米国ボストン美術館と提携して運営されている美術館です。今回も、本国のボストン美術館のコレクションから、展示されています。4月から開催されているこの展示会も、9/12(日)まで、あと約一ヶ月を残すところとなりました。
全体的には、少ーし物足りないような気がしてしまいました。点数?それとも、企画?ちょっと、パンチが弱いような、そんな印象を受けました。個々には、いい作品がたくさんあったのですが。MOMAやイメージをめぐる冒険の際にも書きましたが、最近の展覧会の傾向として、『〜派』と呼ばれる美術の流れでくくるのではなく、その絵画が本質的に訴えようとしているものを捉え、時代や流派を超えて、表現されているものを、ひとつにまとめようとする展覧会が多く見られます。
19世紀という限られた時間ではありますが、本展覧会も、そのひとつであるといえると思います。第一章・古への憧れ 第二章・東方への憧れ 第三章・現実を見つめる 第四章・近代生活を見つめる、の四つのパートに分かれて展示されている絵は、時間を超えて、強い想いを訴えてきます。以下は、4つのパートごとの感想です。いつもながら長いです。
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Wildlife Art 動物・植物画展

日本橋丸善にて、7/9(金)〜17(土)まで開催されていた、『Wildlife Art 動物・植物画展』に7/15(木)に行って来ました。もう終わってる展覧会です。いつもながら、UPの遅いわたし(^^ゞポリポリ
わたしはライフワークとして、ボタニカルアート(植物画)を描いています。そんなわけで、何よりも身近で、親しみやすいアートが、この博物画・細密画の世界です。この企画は、毎年この時期に行われているらしく、昨年も見に来たのですが、今年は、昨年に比べると、動物画の出展が少なかったように思います。花も素敵ですが、動物画を見る機会は、普段少ないだけに、かわいい姿が見られず、ちょっと残念でした。
また、同じくわたしのライフワークである、磁器絵付けでの出展作品が見られたのも、とても印象的でした。絵なのだから、紙に鉛筆と筆、と決めなくてもいいわけですね。こちらには毎年、木をバーナーで焦がして動物の絵を作り上げる作品も展示されています。どれも素晴らしい作品ばかりで、うっとり時間を過ごせます。毎年企画されているようなので、興味のある方は、丸善のHPをチェックされてはいかがでしょうか。(わたしも、今後、行く予定の展覧会を、どこかに載せるようにしたいものです。)一度行って、記帳して来ると、案内のはがきが届くようになります。
くらしの植物苑



佐倉にある「くらしの植物苑」では、生活に密着した植物の紹介をしているようです。
外国風に言えば、ハーブ園になるのかもしれないです。
写真は全部6/15のものです(古いよ!)あはは・・・ごめんなさい
へチマ・・・産毛のようなのが、美しかったです。
スモークツリー・・・我が家はなかなか咲かないので、花が見られてうれしかったです。
ザクロ・・・唯一花が咲いていました。オレンジの花が鮮やかで美しかったです。




苑内はこんな感じ。ハウスや畑なんかもあります。せっせとお手入れされていましたよ〜



木漏れ日にすける花びら
柔らかな陽が葉に落とすシルエット
遠くかすむ白に 静かに主張する白
幼い小さな命が刻む 陰の濃い色
- 6/15 佐倉・くらしの植物苑にて -
#gardening
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ひととき、極楽浄土へ



先日、名古屋城の白いハスを載せましたが、わたしが必死に写真を撮っていると、見知らぬ女性が「鶴舞公園のハスは、もっとたくさん咲いていたし、ピンクだからかわいかったよ」と教えてくださいました。鶴舞公園は、我が家からはちと遠い。しかも、花を撮るには、朝でなくては!ということで、後日、早起きして、いそいそと出かけたわたしでした。まるで恋人に会うように・・・・それもとびきり美しい人に。
無事鶴舞公園に到着。ハスの池がわからなくて、園内の花壇の手入れをしていたおじさんに尋ねると、なるほど、遠目からもハスのピンクの花が見えます。わぁ、なんてきれい!!感激しつつ、撮り続けるわたし。油断しました。朝だからとたかをくくって、飲み物を用意してこなかったのです。仲良くなったおじさんと、話すうちに、だんだんと目が回ってきました。ハスの花咲く、極楽浄土のような景色の中、あやうく、自分も極楽へ行ってしまうところでした(笑)
まだ露の残る花。おいしそうなレンコン(笑)ハスが咲く瞬間には、ポンッと音がするそうで、いつか一度聞いてみたいものです。
YES オノ・ヨーコ展

東京都現代美術館にて、6/27まで開催されていた、『オノ・ヨーコ展』を見て来ました。世界的なビッグバンド・ビートルズのメンバー、ジョン・レノンの夫人として、「世界で最も有名な日本人女性」「最も有名な未亡人」とされるオノ・ヨーコですが、そのアーティストとしての顔は、あまりに知られていませんし、海外に比べ、日本での認知度、評価はとても低いものです。
知ってるようで、彼女の事は意外に知らないものでした。
・父親は銀行家で、学習院大学に入学したセレブな家庭のお嬢様であること。
・最初の結婚相手は、日本人作曲家の一柳慧、2度目の結婚相手は、映画監督のトニー・コックス。
・ジョン・レノンは3度目の結婚相手。
・オノ・ヨーコは、小野洋子と書く。
彼女の芸術は、ただ絵を見て、きれいと感じるというような、従来の芸術とは、まったく一線を画すものです。作り手が一方的に作品を作って、見せるのではなく、見る側の参加があって、初めて彼女の作品は完成するのです。「インストラクションと呼ばれる指示文や言葉とオブジェを組み合わせた、インスタレーションなどが多い。」と書かれると、何のことやら?と思うだろうけれど、たとえば「キャンバスに穴を開けて、そこから水を少しずつ床にたらして、その跡を見る」というような指示があったら、それを想像してみます。その想像が、その指示を見た者の頭に中に像として結びついたときに、この作品は完成する、ということなのです。あるいは、この指示通りのオブジェが展示されていたりします。自分の想像通りだったり、まるで違うものだったりするのも、とても面白い。
テレフォン・ピースという作品は、会場に電話が設置されていて「オノさんからかかってきますので、取ってお話してください」と書いてあった。思わず、近くにいた係の人に「本当にかかってくるんですか?」と尋ねると「はい、今日も一時間半ほど前に、かかってきました。随分大勢の方がお話されましたよ」・・・惜しい!!ああ、でも、オノ・ヨーコと電話で、話すことなんて何もないしなぁ・・・・・でもやっぱりね、ちょっと惜しかったです・・・えへへ。
気になった作品
・「アメイズ」・・・靴を脱いで、中の迷路を進む。外からは、ガラス張りで、よく見えるのに、中に入るとわけがわからなくなる。
・「カッティング・イベント」・・・観客がヨーコの服をはさみで次々に切り裂いていくパフォーマンス
・「プレイ・イット・バイ・トラスト(信頼して駒を進めよ)」・・・全部が 白のチェスの駒。プレイしていくうちに、敵と見方の区別がつかなくなる。実際にプレイするジョンとヨーコの映像も見られました。
・「フライ」・・・女性の裸体の上を、蠅が飛び回る様子を淡々と記録した映画。
・「クリーニング・ピース」・・・手前の石の山から、一つの石を、喜びの山か、 悲しみの山に積む。最後にどちらが大きくなるか・・・わたしは、喜びの山に積みました。悩みや苦しみはあっても、生きてるって喜びのほうが多いと思うから・・・



左/東京都現代美術館の外観とエントランスホール。
中/モダンアートの美術館らしい、美術館自体が、大きなアート作品のよう。庭にもオブジェが。
右/コレもエントランスホールなのですが、実は作品だったと、撮った後で知りました。「イクス・イット」死からも生命は芽生える・・・
オノ・ヨーコ展詳細
東京都現代美術館
フェルメール『画家のアトリエ』〜栄光のオランダ・フランドル絵画展

長いタイトルですね(笑)覚え切れません・・・なんと言っても、今が旬のフェルメールです。「真珠の耳飾りの少女」の映画とタイアップして開かれているこの展覧会。しかし、勘違いしてはいけません。この展覧会に、「真珠の耳飾りの少女」は展示されていないのです。え?勘違いじゃなくて、展示されてないほうがおかしい?そう、そういうクレームが、美術館には殺到してるのだとか。そこには、フェルメールという画家の特性が、関係してきます。
画家には、すごく多作な人と、実に寡作な人がいて、たとえば、印象派の代表的な画家であるモネは、非常に多作な人で、有名な「睡蓮」だけでも、200もの作品を残しているとか。何しろ、印象派は、実際にその場で、印象のままに絵を描くわけで
一枚にそんなに時間をかけていられないのです。そんなわけで、モネは、午前中だけで、7〜8枚の絵を仕上げたと言われています。
それに比べ、このフェルメールは、現存する絵が、30枚と言う少なさ。なので、一枚の絵の価値が、非常に貴重なわけです。とりわけ、今回展示されている「画家のアトリエ」という作品は、フェルメールがことのほか愛し、死ぬまで手元に置いていた絵なのです。フェルメールは、それ以外にも、その生涯が謎に包まれていて
世界中に多くのファンを持つ画家です。たった一枚しか展示されないとわかっていても、その一枚のために、世界中の美術展を渡り歩く愛好家が、数多く存在するのだそうです。
そんな風に、人を惹きつけてやまない、フェルメールの魅力とは、どこにあるのでしょう。フェルメールは、その時代としては、少し先駆的な絵を描く人だったようです。もちろん、17世紀当時の古典的な画法はきちんと踏まえつつ、光を取り入れた構成にその特徴があります。彼の絵は、18世紀には、評価が下がり、忘れ去られようとしていたのですが、19世紀になって、再評価が進みます。彼の絵を評価したのは、同じく「光」を重要視する印象派の画家たちでした。そういった意味で、印象派と彼との間には、重要な関係があるのです。
この展覧会には、そのほかに、レンブラント、ルーベンスといった大画家の日本では初公開の作品も多く見られます。油彩でありながら、透明感のある、どこまでも繊細な表現に、ただただ陶酔できる展覧会らしい展覧会だといえると思います。
(その前に、『オノ・ヨーコ展』を見たので、よけいにそう感じたのかも)
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